東尾修氏の「FA宣言残留を球団が認めないのは当然」とのコメントで気になること
殿堂入りの元名投手、東尾修氏が週刊誌の記事で語っているコメントがちょっと気になった。FA権を得た選手の宣言残留への所属球団の対応に関するものだ。抜粋して紹介したいと思う。
東尾氏の考えは、ぼくのそれとはややかい離がある。FA権を得るということは、複数の球団から条件提示を受けることができるということだ。また、残留であれ移籍であれ、所属先を決めるに当たって最も重要な項目の一つが契約条件だ。他球団の条件を聞かずして残留するかしないかを決めろと要求するのはおかしいと思う。契約条件の価値は基本的にはそれ単体で評価されるべきものではなく、他球団との比較において判断されるべきだからだ。
ちなみに、氏がこの記事でもっとも言いたいのは「宣言残留はケシカラン」ということではなく、「宣言残留を認めない方針を球団が公表することは、選手への圧力になるので選手会がやめてくれと要望したのは、おかしい」ということだ。球団の方針の問題でしかないというのだ。これについては、ぼくもその通りだと思う。
本件で最もピントがずれているのは、選手会が問題視すべき対象だ。彼らが訴えるべきは「球団の方針を公言しないでくれ」ということではないはずだ。球団がそれを明らかにせず、一旦選手がFA宣言した後に「やっぱり残留したい」と言い出したら「選手会の要望があったので公にはしていませんでしたが、ウチは宣言残留を認めません」と言い出したらどうするのか?
選手会が訴えるべきは、「FA権を行使するにはまず宣言が必要というプロセスは廃止すべきだ」ということだ。
問題として取り上げるべき項目を履き違えているということは、残念ながら選手会には中長期的に獲得すべき権利に関するビジョンとそれを実現するためのアクションプランがないのではないかと心配になる。