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【緊急企画】FP5人に聞く。住宅ローン、今借りるなら固定か?変動か?(2021年)

豊田眞弓永続家計アドバイザー/FP/大学非常勤講師
負債管理は家計の要。固定か変動か、それは生き方に通ず!?(写真:Imagepocket/イメージマート)

2021年4月現在、住宅ローンを借りるとしたら固定金利か変動金利か、あるいは固定金利期間選択型でしょうか? 住宅ローンや不動産に詳しいFPの意見を聞いてみました。

■金融緩和の潮目が変わった!?

3月18日・19日の日銀の金融政策決定会合では、これまでの金融緩和に少し変更がありました。金利などに影響が現れそうな点にクローズアップすると次の通りです。

・ETFの購入は「原則年6兆円」という目安をなくし、危機時の対策という位置づけを明確化した(上限12兆円は残した)。

・短期金利を▲0.1%、長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は維持。

・ただし、長期金利は±0.2%程度から±0.25%程度とし、金利が変動しやすくする。

・金利上昇局面では、国債を固定金利で無制限で買い入れる措置を連続して行う「連続指し値オペ制度」を導入。

・短期金利や長期金利には、急な円高進行時など必要な局面で機動的に引き下げに動けるよう「貸出促進付利制度」を新設。

長期金利の変動幅が広がったことで、住宅ローンの固定金利や10年固定などの変動幅が広がったと考えられます。一方で、変動金利に影響する短期金利は、現在のところ変更はありません。

■2021年に住宅ローンを借りる(借り換える)なら?

2月、3月と長期金利が上がったことから、固定金利やフラット35の金利が連続で上がりました。そうしたことから、住宅ローンを新規で借りる際や借り換える際に、金利タイプ選びをどうすべきかという相談を受ける機会が増えたように思います。

日銀の金融政策の変更点なども踏まえたうえで、今、FP自身が住宅ローンを借りるなら固定金利か?変動金利か?固定金利期間選択型か?という質問をぶつけてみました。

※緊急企画として、ムリな日程でコメントをお願いしたにも関わらず、ご協力くださった皆様、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

■固定金利派

まずは固定金利派の回答を紹介します。恐縮ながら、豊田も入れていただいております。

菱田雅生氏(CFP、住宅ローンアドバイザー)

●借りるなら?

固定金利

●理由

安全安心だから。変動金利のほうが結果的に有利になる可能性はありますが、20年や30年にわたる長い期間の金利動向は誰にも予想できません。家計運営上も、返済額が固定されていたほうが安心して「やりくり」できるのではないかと思います。

もちろん、変動金利がダメだというわけではありません。有利になる可能性にかけたい人で、日々の金利動向の確認や、日本銀行の金融政策の動向をきちんと見守り続けられる人なら大丈夫かと思います。

豊田眞弓(FPラウンジ、住宅ローンアドバイザー)

●借りるなら?

固定金利

●理由

短期金利のコントロールを緩めるような金融緩和の出口まではまだまだ相当な年月がかかりそうですが、長期金利は変動幅を小出しに上げるなど、徐々にコントロールを外していくのではないかと思っています。実際に金融緩和が進んできた逆の道として、長期金利が正常化してから短期金利の正常化が進められると考えられます。

つまり、変動金利が上がる頃には固定金利はすでに上がってしまっている可能性があると考えられることから、固定金利の金利が低い間に最初から固定金利で借りておくのが、生活者としては心穏やかに暮らすポイントでもあるように思います。

私自身も住み替え妄想中ですが、住宅ローンを借りるなら、固定金利やフラット35の金利が低い間に、固定金利で借りたいです。ただし、借入が小さくて済む場合や15年等短めのローンになる場合は変動金利で借ります。

■変動金利派

今回お聞きした方の中では、変動金利派の方が多いという結果となりました。しかし、コメントを読むと、「ただし」という部分もありますので、見落とさないようにしましょう。

橋本秋人氏(CFP、不動産コンサルタント)

●借りるなら?

変動金利

●理由

固定金利との金利差は魅力です。またコロナ禍もあり、当面政策金利は上昇しないと予測しています。

ただし、変動金利を選んでも良い人と選んではいけない人がいます。「金利上昇により返済額がアップしてもまだ返済に余裕がある」または「いざとなれば繰上げ返済をして返済額を抑えることができる」のどちらかに当てはまる人は変動金利を選択しても良いでしょう。実際に、住宅金融支援機構の調査では、変動金利を選択した人のうち56.5%の人が返済負担率20%以内と返済に余裕があります

反対に、借入額が多く返済負担率が限度ぎりぎり、借入年数が長く繰上げ返済の余裕もない、といった人には変動金利はおすすめできません。そのような人には固定金利期間選択型10年という選択肢があります。現在、固定金利期間選択型10年と変動金利との金利差は0.2%程度です。変動金利との返済の差額は安心料と考え、10年間で収入と預貯金を増やして体力をつけるようにしましょう。

有田美津子氏(CFP、住まいのお金相談室代表)

●借りるなら?

変動金利

●理由

3,000万円を35年で返済した場合、1.2%の全期間固定金利で借りると総利息は約675万円。変動金利で当初5年間0.5%、その後10年ごとに0.5%金利上昇したときの総利息は約606万円。6年目から10年ごとに0.5%金利が上昇しても総返済額は変動金利が70万円ほど少なくなります。将来の金利は予測できませんが、変動金利は残高が多い借り入れ当初に元金を多く返せるメリットがあり、日銀の金融政策や現在の金利差から変動金利が有利と感じます

ただし、金利上昇時に繰り上げ返済の余力がない家計であれば、20年超の固定金利で安心を買います。

深野康彦氏(有限会社ファイナンシャルリサーチ代表)

●借りるなら?

優遇金利が適用される前提で変動金利

●理由

米国の長期金利上昇を背景に日本の長期金利も5年ぶりの水準まで上昇しましたが、変動金利の基準となる短期金利は全く動いていません。現在の変動金利は短期金利連動になっていますが、その短期金利は日本銀行が政策金利を変更しない限り動きません。新型コロナの影響で景気は急速に悪化しましたが、その回復は諸外国に比べて非常に緩慢です。

また、日本銀行が掲げている消費者物価指数の前年比2%の上昇が達成されるまでは、かなりの時間を要すると考えられることから、日本銀行が政策金利を変更するのも同じようにかなりの時間がかかるでしょう。つまり、変動金利型住宅ローンの金利が上昇するのにも相当の時間がかかると思われるのです。しかも、変動金利の建前上の適用金利は2.475%で過去数年変更されていませんが、優遇金利が適用されれば最も低い金利では0.5%前後で借りられるからです。

■自己責任で選択を!

上記のように、まったく同じ回答はありません。「正解」が1つではないといえます。

長期間の住宅ローンを変動金利で借りるのは投資に近い面もあります。固定金利か変動金利か、固定金利期間選択型か……自身の状況なども踏まえて、慎重に検討し、自己責任で選択してくださいね。

【関連コラム】

住宅ローン、借りるなら固定金利か変動金利か?(2020年)

永続家計アドバイザー/FP/大学非常勤講師

<生涯永続できる家計の実現を!> マネー誌・女性誌等のライター・コラムニストを経て、独立系FPへ。講演・研修、コラム執筆や監修、個人相談などを業務としている。ライフワークとして、子どもから高齢者まで幅広く金融経済教育に携わっている。亜細亜大学ほかで非常勤講師、子どもマネー総合研究会理事を務める。趣味は講談、投資、猫に添い寝。

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