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スイパラで食べすぎたら出禁になった! ブッフェ・バイキング・食べ放題で過食嘔吐をしてもよいのか?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

スイーツパラダイスで出禁

全国に展開する有名なスイーツブッフェ店「スイーツパラダイス」で、ある事案が起きました。

訪れた女性客がXに「スイパラ出禁になったんだけど意味わからない」という文言と共に取ってきたスイーツの写真をポスト。「これくらい普通に食べる」「バイキングなのにたくさん食べたら出禁なんて」ということで、話題となりました。

現在ではポストは削除されていますが、おそらく他の方による次のポストが関係していると思われます。

てか過去ツイぐぐったら思いっきり過食嘔吐じゃん。食べホ出禁になるの怖いって自分で言ってるし担当と一緒だから吐くの我慢したとか色々言ってるって事は普段吐いてんじゃん。そりゃ出禁で間違い無いわ。 トイレ詰まるし食べ物は吐く為にあるんじゃないんだわ。スイパラが可哀想
水原あくあ さん/X

出禁になった方のポストを確認すると、自身が摂食障害を患っており、過食嘔吐すると記されていました。

当記事では、ブッフェ・バイキング・食べ放題と過食嘔吐および大食いについて、述べていきます。

ブッフェ店の利益を毀損

ブッフェは定額で好きなだけ食べられる業態です。コロナ禍では、スタイルが少し変わったりもしましたが、自由に食べられることに変わりありません。

ブッフェは通常の方が食べる範囲内のボリュームで損益を算出して、利益を生み出せるようにしています。事業である限り、利益を上げられなければ潰れてしまうのは自明です。

大食い競技のトレーニングや過食嘔吐をするためにブッフェに訪れる方もいますが、こういった方は本来のターゲットから逸脱しています。想定外の方が大挙すれば利益が圧迫されてしまい、容易に潰れてしまうでしょう。

トイレで嘔吐してはまた食べるという方もいて、悩みの種となっています。摂食障害の方を断っている店もありますが、明確な証拠がなければ入店を断れません。ある客が頻繁にトイレに足を運んでいたとしても、個室の中までついて行けないので、証拠を掴むのは難しいところです。

過食嘔吐の方は食べるボリュームが尋常ではないので、少しでも安価にたくさん食べられることを期待します。それにもかかわらず、リーズナブルに食べられるブッフェに訪れて迷惑をかけ、事業継続を困難にしているのはとても皮肉なことです。

他の客にも迷惑

ブッフェ店の利益を毀損して、迷惑をかけているだけではありません。他の客にも迷惑をかけることがあります。

過食嘔吐では、何度も嘔吐してトイレを匂わせたり詰まらせたりしてしまい、トイレを利用できなくさせたり、タルトをワンホールまるごと持って来たりボウルからイチゴをほぼ全て盛ったりしてしまい、他の客が取れなくさせたりすることもあるのです。

また、マグカップいっぱいに入れた生クリームを食べたり、皿から溢れ出るほどのソースやジャムをかけたりし、無我夢中でそれらを喫食します。普通の客とは明らかに雰囲気が異なっており、周りの客を驚かせることも少なくありません。

以上のように、たくさん食べ過ぎて店の利益を圧迫したり、スタッフの手間をかけさせたりするだけではなく、他の客に迷惑をかけることもあります。

ブッフェのマナー

ブッフェのマナーを紹介しましょう。

1958年8月1日に、日本におけるブッフェスタイルの発祥となった帝国ホテルのバイキングが誕生しました。日本ブッフェ協会は、バイキングにおけるマナーやバイキングのもとになった北欧料理のスモーガスボードをベースにして、ブッフェにおける基本マナーと上級マナーを紹介しています。

ブッフェを正しく楽しく味わうためのマナーを提案/一般社団法人 日本ブッフェ協会

基本マナーは以下の通りです。

・自分の分だけを取る
・全て食べる
・ブッフェ台をきれいに使う
・適度に食べる
・ドリンクを飲み終えてからお替わりする

基本マナーができた上で、上級マナーは下記のようになります。

・少しずつ取る
・色々なものを試してみる
・コースで食べる

「適度に食べる」ことはブッフェの基本マナーです。食事のおける各人の適量はそれぞれ異なるかもしれません。ただ、著しい肥満の方ではなく、むしろ標準よりも細いにもかかわらず、10人前以上を平らげるのはやはり普通ではないでしょう。

ブッフェは過食嘔吐や大食いを促進するために存在しているのではなく、各個人の健康的な食のスタイルを尊重するためにあるのです。

食育に反している

食育は、2005年に成立した食育基本法で「生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるもの」と位置づけられています。

食育の推進/農林水産省

食育って何?/文部科学省

過食嘔吐などによる大食いは、食育に適ったものではありません。

食育基本法の中には「ゆっくりよく噛んで食べる」という指標も用いられています。食事をとる際に、たくさん食べることを意識するのではなく、しっかりと味わって食べることが重要になっているのです。

小さい頃、自宅で食事する際に、誰よりもたくさん食べることを奨励された人は、どれだけいるでしょうか。とにかくたくさん食べることが、知育・徳育・体育の基礎となる食育に合致しているはずがありません。

元をとろうとすること

大食いから敷延して、ブッフェで元をとろうとすることについても、言及します。

あらゆる経済活動において、基本的に客が元をとれることは決してありません。飲食店は慈善事業ではないので、利益を上げられるように料金を設定しているからです。

コーヒーショップに訪れてコーヒー一杯を注文しても、高級フレンチで一番安いコースを選んで全て無料の水道水で通しても、元がとれることはありません。

なぜブッフェになると、元をとろうと卑しくなるのか、元をとらなければならないと焦るのか、不思議です。

元をとろうとするあまり、自分が好きでもなく、ただ単価が高いと思われるものだけを食べ続けるのは楽しいことでしょうか。

仮に元がとれたとしても、そのせいで飲食店が利益を上げられなくなってしまえば潰れてしまいます。それは目的としたことでしょうか。

ブッフェにおける過食嘔吐

ブッフェで過食嘔吐されることは、店にとって大きな問題です。ブッフェは、大食いのトレーニングや過食嘔吐の方のために行われている慈善事業ではありません。

客が店を選べるように、店も客を選べるので、過食嘔吐の方がブッフェで出禁になってしまうのは仕方がないことです。

過食嘔吐の方は、ブッフェでおざなりに心身の不調を解消するのではなく、しっかりと通院して医学的な観点から回復していただきたいと、強く願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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