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有名YouTuberが飲食店の撮影をドタキャン! その後にとった“ありえない行動”に非難が殺到

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

有名YouTuberによるドタキャン

先月、ドタキャンに関する気になる話題がありました。

お前はビジネス系ユーチューバー名乗るなよ/TikTok

愛知県にある話題の飲食店でのこと。2023年9月に、有名YouTuberからInstagramのダイレクトメッセージで接触があり、その後はLINEでやりとりします。用件は撮影の依頼で、承諾しますが、予約時間の3時間前に急用が入ったからという理由でドタキャン。オーナーはドタキャンについては理解を示し、不問にしました。しかし、翌月の10月25日に同じYouTuberからメールが届きます。その内容は、有料でコラボレーション動画を制作しないかという営業だったのです。

ドタキャンした後に有料の営業メールが送られたということで、オーナーも怒り心頭の様子。視聴者からは賛同も多く、26万以上の「いいね」が付いています。

取材や撮影

食は誰にとっても身近なものなので、飲食店や食品を扱うコンテンツは非常に多いです。テレビや雑誌、動画や記事でも、食に関連したものがたくさん制作されています。

コンテンツは、視聴者や読者に楽しんでもらったり、役立ててもらったりする内容でなければなりません。それには、企画コンセプトにマッチさせたり、クオリティを高めたりすることが大切です。

ただ、取材に協力してもらう側への配慮も極めて重要。迷惑をかけないのは当然のことながら、協力してもらうことでメリットが享受できるようにしなければなりません。なぜならば、メディアそれ自体はあくまでも、単なる箱=フォーマットであり、最も重要なのはコンテンツ=取材対象そのものだからです。

今事案であれば、飲食店に協力してもらわなければ、コンテンツは生まれません。取材してあげているという態度ではなく、コンテンツを提供してもらっているという認識が大切です。

したがって、撮影だからドタキャンしてもいいということではなく、通常の利用と同じかそれ以上にドタキャンは迷惑であると、理解する必要があります。

ドタキャンの被害

では、ドタキャンはどうしていけないのでしょうか。

ノーショー=「No Show」は予約したのに連絡せずに訪れないこと、ドタキャン=「土壇場でキャンセル」は直前にキャンセルすることです。

予約した時間に人数分の席が専有されるので、他の客は予約できず、飲食店は予約機会を失ってしまいます。個室やセミプライベート席、窓際席や広々とした席などであれば、通常の席よりも価値が高いので、より被害が大きいです。

席だけではなく、コースや料理などのプランも予約しているのであれば、飲食店は事前に料理を準備します。したがって、ノーショーやドタキャンが起きると、準備したものが提供できなくなり、損害を被るのです。予約状況によってスタッフの人数も調整するので、人件費でも無駄なコストが生じてしまいます。

ドタキャンであれば、運よく直前に予約が入ったり、ウォークインの客が訪れたりすることもありますが、同じものをオーダーしなければ、やはり用意したものが無駄になるでしょう。ノーショーでは、客が遅刻する可能性も考慮して、15分から30分は様子をみるので、ドタキャンよりも売上機会を逸する確率が高いです。

今事案はドタキャンでした。席を確保していたとオーナーが述べていましたが、3時間前のドタキャンであれば、予約を入れることは難しいでしょう。運良くウォークイン客が入らなければ、その席は無駄となります。撮影ということで、他の客に迷惑がかからないように、広い席やセミプライベート感のある席が確保されていたのであれば、損害はより大きいです。

他の利用者にも迷惑

ノーショーやドタキャンは、飲食店だけではなく、他の利用者にも迷惑をかけます。なぜならば、ノーショーやドタキャンの予約分があるせいで、本来であれば予約可能だったはずの席が予約できなくなるからです。

また、ノーショーやドタキャンが度々起きると、飲食店はノーショーやドタキャンの損失分を見越して、より高い価格に設定せざるを得ません。そうなれば困るのは、他ならぬ利用者です。ノーショーやドタキャンを行う人がいるために、他の人が損害の補填分を支払うことになります。

ノーショーやドタキャンは、飲食店に損害を与えるだけではなく、他の利用者に機会損失と価格転嫁で迷惑をかけているのです。

ドタキャンやノーショーへの対策

ドタキャンやノーショーの対策として挙げられるのは、何日前から料金が発生するといったキャンセルポリシーを設定したり、電話やメールで事前に予約確認したり、クレジットカード情報を控えたり、飲食店予約サービスを導入したりすることが有効です。

ただ、今回は撮影のドタキャンということで、状況が異なるので、当記事では詳しくは触れません。

闇雲な営業メール

今事案はテレビでもたまに起きる、極めて“失礼なドタキャン事案”であるといえます。ただ、その後に営業メールを送ったのは、驚くべき展開でした。

ドタキャンの埋め合わせをするために新しい企画を打診するのであれば、まだ理解できます。しかし、お金を要求するタイアップ企画を打診していたのは、開いた口が塞がりません。

YouTuberは自身が迷惑をかけた飲食店のことですら覚えておらず、よくわかっていない飲食店に営業メールを送っていることになります。もしもそれで釣果があったとしても、その飲食店のよさを理解し、魅力を引き出す動画を制作できるのでしょうか。

登録者数が多いので、再生数は伸びるかもしれません。ただ、飲食店への理解や愛がない企画や内容では、閲覧したユーザーの心に訴えかけられるものを創れるのか、疑問が付されます。

そういった意味では、飲食店のためを思って考案された企画ではなく、飲食業界を食い物にした企画であるといっても、過言ではありません。

影響力のあるYouTuber

件のYouTuberは私でも知っているくらい有名な方であり、チャンネルの登録者数も多いです。大きな影響力があるだけに、社会的な責任も認識するべきでしょう。

それなのに、無責任なドタキャンをして、全く忘れているなど言語道断。むしろ、飲食業界で問題となっているノーショーやドタキャンの弊害を訴えてもらいたいくらいです。

ドタキャンしたことを少しでも悔いているのであれば、ノーショーやドタキャンを軽減するための啓蒙活動に励んでいただくことを期待しています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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