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日本のピッツァ店がアジア1位の快挙! 予約困難な「おまかせコース」とは?

東龍グルメジャーナリスト
マンダリン オリエンタル 東京の「ピッツァバー on 38th」 (C) 東龍

日本でも広く受け入れられているピッツァ

ピッツァは日本でも広く受け入れられている外国料理です。イタリアが発祥であることも、よく知られていることでしょう。

ピッツァと同じようによく食べられているイタリア料理として、パスタも挙げられます。パスタはリストランテ=高級イタリアンレストランでも、コース料理の中で必ず提供されますが、ピッツァが出されることがありません。

こういったことからも、ピッツァは庶民的で普段から食べるというイメージが強いです。しかし、実は、このピッツァをガストロノミーに昇華させたレストランがあります。

それは、マンダリン オリエンタル 東京の「ピッツァバー on 38th」です。

ピッツァバー on 38th

「ピッツァバー on 38th」は38階にあるイタリア料理「ケシキ」の奥に2014年オープン。先進的なピッツァとカウンター8席というエクスクルーシブな空間で、存在感を示してきました。ホテルのエグゼクティブシェフを務めるダニエレ・カーソン氏が自ら統括しており、ゲストの前に立って腕をふるうこともあります。

「ミシュランガイド東京 2023」では6年連続ビブグルマンとして掲載されており、2022年にはイタリアで有名なワイン専門誌「ガンベロ・ロッソ」が発表した「世界のトップ・イタリアンレストラン」2023年版で、最高点の3スライスを受賞しました。

そして、2023年5月30日には、世界で最も影響力のあるピッツェリア専門ガイド「50 Top Pizza」が発表した「50 Top Pizza Asia Pacific 2023」のランキングで、見事アジア1位に輝いています。

おまかせコース

これだけでも驚くべき快挙ですが、カーソン氏がまた新しい試みを開始しました。

2023年6月1日から、ピッツァで構成された「おまかせコース」(13,200円)の提供を始めたのです。前菜1種、ピッツァドルチェを含むおまかせピッツァ8種、デザート1種という構成で、17時半もしくは20時スタートの2部制。

さらにはカーソン氏によるクリエイティビティ溢れるピッツァにぴったりな「ワインフライト」(4グラス、8,000円)や「プレミアムワインフライト」(4グラス、15,000円)、「モクテルペアリング」(4グラス、6,000円)も用意されています。

コースの品数の多さやペアリングがあること、2部制という営業スタイルを鑑みると、まさにガストロノミーピッツァレストランです。

先進的な試みとあって、早速予約が困難となっています。ピッツァの「おまかせコース」はどういったものなのか、詳しく紹介しましょう。

※前菜やピッツァは、食材の仕入れや季節によって変わる

夏茄子 長野県産生ハム

ロビオラ ディ ロッカヴェラーノチーズのバーニャカウダ

パンタレオエクストラバージンオリーブオイル

夏茄子 (C) 東龍
夏茄子 (C) 東龍

水茄子、青茄子、白茄子と3種類の茄子を用いたサラダ。竹島産の滋味深い山羊のチーズを添えて、トマトやナスタチウムで彩りも豊かです。

長野県産生ハム (C) 東龍
長野県産生ハム (C) 東龍

長野県産の生ハムは、薄くスライスされて、ふんわりとした食感に。テーブルブレッドではなく、シンプルなピッツァが添えられるので、生ハムをのせて食べるといいでしょう。生ハムは、長野県上高井郡にある佐藤明夫氏の佐藤農園・生ハム工房 豚家「TONYA」から提供されました。

次からピッツァが始まります。

マリナーラ

サンマルツァーノ種トマト 青森県産にんにく マジョラム エクストラバージンオリーブオイル

マリナーラ (C) 東龍
マリナーラ (C) 東龍

トマトの甘味と酸味が生きたピッツァです。ニンニクの香ばしさが食欲をそそり、マジョラムがよい香り。

ブファラ

千葉県クルックフィールズの水牛モッツァレラチーズ

サンマルツァーノ種トマト バジル

ブファラ (C) 東龍
ブファラ (C) 東龍

クリーミーな水牛モッツァレラチーズ、香り高いバジルの組み合わせは完璧です。定番の一品であるといってよいでしょう。

ピッツィーノ

千葉県クルックフィールズのマスカルポーネ ブラックオリーブ イタリア産サマートリュフ

ピッツィーノ (C) 東龍
ピッツィーノ (C) 東龍

カーソン氏のスペシャリテ。2層になっていて、間に挟まれたマスカルポーネチーズがとろとろで素晴らしい風合いです。仕上げにサマートリュフがたっぷりと削られており、妖艶な香りが広がります。

イチジクのピザ

イチジク 生ハム

イチジクのピザ (C) 東龍
イチジクのピザ (C) 東龍

沖縄県産のイチジクは、ジューシーで慎ましやかな甘味。しっとりとして塩味のある生ハムがよいコントラストです。

蛸とペペローニ

有機ピーマン 北海道産蛸

スモークモッツァレラチーズ とうもろこし

蛸とペペローニ (C) 東龍
蛸とペペローニ (C) 東龍

みずみずしい水蛸と甘いトウモロコシのコンビネーション。スモークされたモッツァレラチーズの燻香、ちりばめられた菊の花の黄色が白眉です。

国産キノコ

青森県産ニンニク

自家製マッシュルームのピュレオイルパウダー

国産キノコ (C) 東龍
国産キノコ (C) 東龍

舞茸やアンズ茸など国産キノコがたっぷりです。自家製のマッシュルームのソースが濃厚で、ニンニクも主張します。

カルツォーネ

モッツァレラ プロボローネ パルミジャーノ・レッジャーノ

春菊 モルタデッラ リコッタンドゥーヤ

カルツォーネ (C) 東龍
カルツォーネ (C) 東龍

大きなカルツォーネも、目の前で豪快に切り分けられます。もっちりさっくりとしたテクスチャで、3種のチーズによる競演と春菊の鮮やかなアクセントがドラマティック。

ピッツァドルチェ

国産ブドウとチョコレートドモリチョコレート

巨峰、シャインマスカット

バッファローヨーグルト、サワークリーム

ピッツァドルチェ (C) 東龍
ピッツァドルチェ (C) 東龍

甘いピッツァで、サイズは小さめです。2種類のブドウにマスカットのソースで、上品な甘味。ヨーグルトとサワークリームがさわやかです。

アフォガート

プラリネソース ビスコッティ

自家製バニラジェラート エスプレッソ

アフォガート (C) 東龍
アフォガート (C) 東龍

目の前でアフォガードをつくってもらえます。香り高い自家製バニラジェラートの上に、ふわふわの生クリーム、店名ロゴ入りのチョコレートが重ねられています。仕上げに濃厚なエスプレッソがかけられ、チョコレートやジェラートが溶けて、優美ななめらかさに。ビスコッティのサクサク感が小気味いいです。

ワインペアリング

ワインペアリング。本文で紹介されているのは、左から1番目と4番目 (C) 東龍
ワインペアリング。本文で紹介されているのは、左から1番目と4番目 (C) 東龍

「プレミアムワインフライト」ではその名前通り、通常のワインペアリングよりも数ランク上の4グラスが提供されます。

最初は“シャンパーニュの帝王”とも称されるクリュッグの「クリュッグ グランド キュヴェ エディション 170」。芳醇でエレガントながらも、奥深くて複雑な味わいなので、シンプルな料理はもちろんのこと、複雑な力強い料理ともよく合います。

「アンティノリ ピアン デッレ ヴィーニェ 2017」はイタリア・トスカーナ州の赤ワイン。力強く濃厚な果実味なので、しっかりとしたカルツォーネやニンニクの香りと相性抜群です。

生地へのこだわり

生地を成形するエグゼクティブシェフのダニエレ・カーソン氏 (C) 東龍
生地を成形するエグゼクティブシェフのダニエレ・カーソン氏 (C) 東龍

ピッツァ尽くしのコースにプレミアムなワインペアリングと、他ではできない体験ばかりですが、改めてカーソン氏のこだわりを紹介しましょう。

最初は、ピッツァの肝である生地です。オーガニック小麦粉をブレンドし、総重量の80%の割合で水分を含んだ生地に1%のイーストを加え、48時間かけて熟成。これをベースにした2種類の生地を使い分けています。

イタリア語で軽いを意味する生地「レジェーロ」は、イタリア産のオーガニック小麦を5種類ブレンド。口当たり軽やかなピッツァ生地は、マリナーラやブファラなどのトマトベースのピッツァとの相性が抜群です。

「サポリート」はイタリア産のオーガニック全粒粉とタンパク質の含有量が高い小麦粉をブレンドした生地。口の中いっぱいに広がる小麦の香りが特徴です。ピッツィーノやセイ フォルマッジなどチーズを使用したピッツァに最適。

生地に大きなこだわりがあるからこそ、ピッツァが続くコースでも飽きがこないのです。

食材のこだわり

次は食材へのこだわり。カーソン氏と購買部は、北海道から沖縄まで生産者を巡って信頼関係を築き、素晴らしい食材を開拓してきました。野菜やハーブ、フルーツはもちろんのこと、日本では希少な水牛のミルクでつくられたチーズを使用できているのも、この努力が結実したからです。

コースの最後にメニューが配布されますが、裏面には食材の生産者の一覧がずらりと記載されています。食材と生産者へのリスペクトがあってこその演出でしょう。

8席のマジック

8等分に切り分けるエグゼクティブシェフのダニエレ・カーソン氏 (C) 東龍
8等分に切り分けるエグゼクティブシェフのダニエレ・カーソン氏 (C) 東龍

「ピッツァバー on 38th」は8席を擁していますが、この席数が絶妙なマジックです。

ピッツァは通常8ピースにカットされるので、1枚のピッツァをちょうど1人1ピースずつ食べることができます。そのため、食材をロスすることなく、ゲストが8種類ものスペシャルなピッツァを賞翫できるのです。

美食のマンダリン オリエンタル 東京

美食のホテルとも称されるマンダリン オリエンタル 東京。これまでもミシュランガイドで多くの星を獲得してきました。

日本で生まれた「おまかせ」は、海外では「OMAKASE」として通じるようになり、ガストロノミーの世界では一般的となっています。ピッツァでは類をみない「おまかせコース」を、アジアナンバーワンのピッツェリアで是非とも体験してみてください。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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