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忘年会や新年会に参加する? 行動制限がない年末年始でも飲食店のドタキャンや無断キャンセルがダメな理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

忘年会と新年会

今年の年末や来年の年始に、忘年会や新年会を開催する予定はありますか。

東京商工リサーチが2022年10月、全国の企業に対して行った調査では、忘年会や新年会を「開催しない」が61.4%となっており、昨年に比べると9%減少しています。

忘・新年会を「開催しない」が61.4%、前年から9.0ポイント減少  ~ 2022年「忘・新年会に関するアンケート」調査 ~/東京商工リサーチ

大手飲食店予約サービスのTableCheckは、定期的に飲食店の動向をデータ化しています。同社が12月4日までの集計データをまとめたところによると、飲食店の客足は順調に回復しており、3週連続で増加。週末の客足は前週比10.2%増、平日は前週比1.5%増と、週末の客足が大幅に増加しています。

コロナ禍における飲食店の来店・予約件数推移/TableCheck

東京商工リサーチの調査から年末年始における飲食店の営業状況を心配していましたが、TableCheckの調査結果で少し安堵できるようになったといえるでしょう。

年末年始の行動制限はなし

2022年12月9日にコロナ分科会は、年末年始に行動制限を求めないと述べました。

コロナ対策分科会 年末年始の感染対策まとめ「行動制限はしない」/日テレNEWS

飲食店への訪問は、国や自治体による制限がなく客足が伸びていますが、2022年10月から新規感染者が増えてきた第8波に対する危機感もあって、先行きに不安を感じる飲食店も少なくありません。

こういった状況で、利用者に是非とも気を付けていただきたいのが、ドタキャン(直前キャンセル)やノーショー(無断キャンセル)です。

コロナ禍の影響による年末年始の変化

コロナ禍によって、年末年始の飲食店利用、忘年会と新年会に対する意識はだいぶ変化しました。

忘年会や新年会は、夜の利用が減少して、昼からの利用が増加。その影響もあって、アルコールの消費量も少なくなりました。忘年会や新年会の回数は減少している上に、少人数化しています。年末年始における飲食店の営業は、復調しつつあるといっても、売上はまだコロナ禍前に及びません。

飲食業界では、コロナ禍の中で離れてしまったスタッフの数が戻らず、オペレーションに余裕がない状況。しかし、12月は一年における最大の書き入れ時であり、積極的に営業したいので悩ましいところです。

営業時間が短くなっている

コロナの影響で、営業時間が短くなったままの飲食店もあります。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、飲食店は営業時間の短縮を要請されました。要請に応じれば協力金が得られますが、規模が大きな飲食店や客単価が高い飲食店には不足している金額でした。

それでも多くの飲食店が時短営業に協力してきましたが、いざ通常営業に戻そうとしても、食材の仕入れやスタッフの不足によって、すぐコロナ禍前に戻すのは難しいところ。

営業時間を長くできない飲食店もあるだけに、その営業機会を奪うドタキャンやノーショーは避けるべきです。

客席が少なくなっている

飲食店は、コロナ対策でテーブル間隔を広げなければならず、席数を少なくせざるを得ませんでした。

「徹底点検 TOKYOサポート」プロジェクト認証基準/東京都防災ホームページ

東京都防災ホームページにある「徹底点検 TOKYOサポート」プロジェクト認証基準では、今でもテーブル間隔の基準が挙げられています。「同一グループが使用するテーブルとその他のグループが使用するテーブルの間は、相互に対人距離が最低1m以上確保できるよう配置する」とあるように、テーブル間隔は1メートル以上にと求めているのです。

通常の飲食店のダイニングエリアでは、ファインダイニングが1坪1席から1.5席、カジュアルダイニングが1坪2席から2.5席程度。テーブル間隔は、前者であれば1メートルを確保できますが、後者であればせいぜい50センチくらいでしょうか。主通路であればもっと幅を広げられますが、東京都が求めるのは全てのテーブル間隔なので、要件を満たせません。

全ての飲食店がファインダイニングのようなテーブル間隔にすることは難しいですが、それでも、このコロナ対策をしっかり守っている飲食店はあります。ただ、スタッフ減少によるオペレーションの影響もあって、現在でも席数が少なくなったままという飲食店は少なくありません。

1席あたりの重要性が増しているので、これまでよりも1席あたりのドタキャンやノーショーの被害が大きくなっています。忘年会や新年会で利用する際には、1席の重みを自覚しなければなりません。

客単価が低くなっている

コロナ禍によって、外でアルコールを飲む機会が減り、そのまま慣習化してしまった人も少なくありません。

アルコールが入ると陽気になり、飛沫がたくさん発生するという理由から、お酒が悪者のように指摘されることがありました。営業時間が短くなったことから、コースではフルコースよりもショートコースを選んだり、アラカルトでは少なめの皿数しかオーダーできなかったりしてしまいがちです。

料理もお酒もオーダーが少なくなってしまえば、当然のことながら客単価は低下してしまいます。飲食店は通常時に比べると薄利多売になっているので、少しでも多くの利益を上げるために、1人でも客を失うわけにはいきません。

ドタキャンやノーショーがあると、飲食店は売上機会を逸失してしまうので、注意する必要があります。

閑散期が目前となっている

日本で新型コロナウイルスの感染が拡大し始めたのは、2020年2月くらいから。そこから事態は急激に悪化していき、4月の緊急事態宣言に至ったのは周知の事実です。

飲食店の書き入れ時は一般的に3月と4月の歓送迎会、忘年会の12月といわれています。反対に閑散期といわれているのが2月と8月。新年会の時期を除いた1月、5月もあまりよくありません。もちろん同じ飲食店であっても、業態や立地によって異なります。

第8波への不安を煽る論調もあるだけに、最大の書き入れ時である12月も十分に利益を確保できるかどうか、飲食店にとっては勝負どころ。

ドタキャンやノーショーによって繁忙期の売上が減少するので、閑散期を目の前にした飲食店は苦しい立場に置かれます。

幹事が気を付けるべきこと

忘年会や新年会を開催する幹事は、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。

1つ目は、責任をもって確認すること。ノーショーは絶対に行ってはなりませんが、ドタキャンもしないにこしたことはありません。加えて、人数の増減があればすぐに連絡することを、普段以上に徹底することが重要。全体を仕切っている幹事は、参加者としっかりコミュニケーションをとり、変化をいち早く察知するべきです。飲食店に必ず連絡をとってノーショーにならないようにし、人数の増減があれば少しでも早く連絡しなければなりません。

次に気を付けるべきことは、強制参加にしないこと。コロナ禍で会社など仕事関係による忘年会や新年会は減少していますが、上司と部下、先輩と後輩、年上と年下など、上下関係がある場合に、立場的に上の方が下の方に強制的に参加させることがあります。絶対参加と明言していなくても、暗黙的なプレッシャーや雰囲気があれば同じことです。

上下関係がなくとも、コロナ禍で忘年会や新年会に参加することが気になる人もいるでしょう。できるだけ飲食店に訪れてもらいたいと思いますが、気が進まずに参加を表明してドタキャンやノーショーするくらいであれば、最初から欠席した方がよいです。幹事はこういった時期であるからこそ、少しでも強制的なニュアンスを漂わせてはなりません。

最後は、テイクアウトやデリバリーという選択肢も考えること。飲食店が復調するためには、店内飲食が活気を取り戻さなければなりません。しかし、ドタキャンやノーショーは飲食店に大きな損害を与えます。もしも、ドタキャンやノーショーとなる可能性があるようならば、飲食店でのテイクアウトやデリバリーも考慮に入れた方がよいでしょう。

コロナ禍のドタキャンやノーショー

第8波が襲来し、先行きがみえないコロナ禍において、ドタキャンやノーショーで損害を受け、売上機会も損失するとなれば、飲食店の経営状況はより厳しくなっていきます。飲食店を助けるために、是非とも1人でも多くの方に予約してもらいたいですが、だからといって、ドタキャンとノーショーが許されるわけではありません。

これまで人類が直面したことがないコロナ禍にあって、当の飲食店だけではなく、飲食店を訪れる利用者も試されているように思います。行動制限のない年末年始において、ドタキャンやノーショーに注意を払いながら、飲食店で楽しいひとときを過ごしていただきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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