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何でもできる日本発の40万円を超える調理道具は何が違う?

東龍グルメジャーナリスト
ANAORI kakugama (C) 東龍

自宅にある高価な家電

自宅にある高価な調理器具は何でしょうか。

ストウブやルクルーゼなどの鋳物ホーロー鍋、岐阜県関市や福井県越前でつくられた鋼の包丁、有田焼や南部鉄器の急須など、色々なものが挙げられるかと思います。

調理器具だけではなくテーブルウェアにもこだわりがあれば、フランス・リモージュのプレートや北欧のカップ&ソーサー、オーストリアやドイツのワイングラスが揃えられているかもしれません。

高価な調理家電であれば、電子レンジやオーブンレンジ、炊飯器、ノンフライヤー、コーヒーメーカー、真空低温調理機器が挙げられるのではないでしょうか。

飲食店の調理器具

飲食店であれば、冷凍冷蔵庫は20万円以上、コンベクションオーブンは10万円から架台付きで何百万円の製品もあります。今や家庭でも使われるようになった真空低温調理器具でも業務用であれば30万程度の商品もあり、減圧加熱調理器であれば100万円前後。

調理器具は調理家電に比べればまだ安いですが、20万円くらいする大きな寸胴鍋や、何十万円という包丁もあります。

高級な調理器具はいくら挙げてもキリがありませんが、実は今、前例のない新しい高級な調理器具が登場しました。

それは、カーボン・グラファイトで定評のあるANAORIが2021年4月8日に発売を開始した「ANAORI kakugama(アナオリ カクガマ)」。

5.1Lサイズ(W/D 242mm × H 184mm、7.9キログラム)は419,800円、3.4Lサイズ(W/D 204mm × H 184mm、6.0キログラム)は249,800円という、非常に高価な調理器具です(共に税・送料込)。

最高級の調理道具

ANAORI kakugama (C) 東龍
ANAORI kakugama (C) 東龍

「ANAORI kakugama」は「角」形の外観と日本伝統の調理道具「釜」を合わせた造語「角釜」=「kakugama」から命名されました。

100%天然素材のカーボンを3000度で焼成してつくられたカーボン・グラファイトを、塊から1台ずつ職人技で削り出しているため、素材成形から完成まで約10ヶ月が必要。

カーボン・グラファイトは鉄の10倍の強度があり、炭火に匹敵する遠赤外線の効果があります。蓄熱性、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、熱伝導性にも優れており、金属に代わる素材として工業ではもちろん、医療の分野でも注目を集めている素材です。

このような特性を有しているため、焼く、煮る、蒸す、揚げる、炊くという日本料理に伝わる調理法に対して最適な火入れができ、食材の持ち味を生かし、旨味を引き出せるようになっています。

ナチュラリティ・ツアー by ANAORI

ANAORIが有する哲学に「ナチュラリティ」があります。人の暮らしは自然と関係なくしては成立しないということから、自然の原理を理解し、できるだけ手を加えずに自然の働きを尊重したいというもの。

このコンセプトに賛同する世界の料理人が、自らのレストランで「ANAORI kakugama」を用いた料理を提供する「ナチュラリティ・ツアー by ANAORI」が、2021年4月10日からスタートしました。

詳細は次の通りです。

ナチュラリティ・ツアー by ANAORI

※以下、敬称略

・4月10日~4月16日

富山「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」谷口英司

・4月17日~4月23日

東京「銀座小十」奥田透/「unis」薬師神陸(日程変更)

・4月24日~4月30日

シドニー「Momofuku Seiōbo」Paul Carmichael

・5月1日~5月7日

メルボルン「Lee Ho Fook」Victor Liong/「Philippe」Philippe Mouchel

・5月8日~5月14日

ロサンゼルス「N/Naka」Niki Nakayama

・5月15日~5月21日

ニューヨーク「Aska」Fredrik Berselius

・5月22日~5月28日

メキシコ「Ticuchi」Enrique Olvera

・5月29日~6月4日

リマ「Central」Virgilio Martinez

・6月5日~6月11日

リオデジャネイロ「Oteque」Alberto Landgraf

・6月12日~6月18日

ボゴダ「LEO」Leonor Espinosa

・6月19日~6月25日

北京「Da Dong」Da Dong

・6月26日~7月1日

上海(調整中)

・7月2日~7月8日

香港「LOUISE」Franckelie Laloum

・7月9日~7月15日

台北「Raw」André Chiang

・7月16日~7月22日

バンコク「Bo.Lan」Bo Songvisava&Dylan Jones

・7月23日~7月29日

ムンバイ「Masque restaurant」Prateek Sadhu

・7月30日~8月5日

シンガポール「Ritz Carlton Singapore」Massimo Pasquarelli(Executivechef)

・8月6日~8月12日

ウィーン「Tian」Paul Ivic

・8月13日~8月19日

ロンドン「Da Terra」Rafael Cagalli

・8月20日~8月26日

アルバ「Piazza Duomo Alba」Enrico Crippa

・8月27日~9月2日

アヌシー「Clos des Sens」Laurent Petit

・8月27日~9月2日

ノワールムティエ「La Marine」Alexandre Couillon

・9月3日~9月10日

パリ「Fief Restaurant」Victor Mercier

日本を出発点としてオーストラリア、北米、中南米、アジア、 ヨーロッパなど全部で24都市をリレー式につなぎ、9月にパリで終了します。 世界の主要な地域で「ANAORI kakugama」を用いた料理が提供されるといってよいでしょう。

日本でのツアー

「unis」の内観 (C) 東龍
「unis」の内観 (C) 東龍

ツアー最初となる「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」では、谷口英司氏がクマの内臓やすね肉などを6時間から7時間かけて煮込み、周辺で採れた山菜と合わせた「熊」をつくり上げました。

次の「銀座小十」では奥田透氏がアワビと大豆根菜などを共に煮た「鮑大船煮」と、こんがり焼いたサクラマスをのせ、サクラエビを散らした「桜鱒春菜御飯」を提供。

そして、日本のラストに行われたのが「unis」のツアーです。シェフを務める薬師神陸氏は1988年生まれと非常に若い新進気鋭の料理人。商品開発やメニュー監修など多岐にわたって活躍しています。

その薬師神氏が「ANAORI kakugama」によって紡ぎ出した料理について、いくつか紹介していきましょう。

広島・岡本農園グリーンアスパラ

KAKUGAMA海藻焼 牡丹海老のミキュイ|せとかの黄身酢

KAKUGAMA海藻焼 牡丹海老のミキュイ|せとかの黄身酢 (C) 東龍
KAKUGAMA海藻焼 牡丹海老のミキュイ|せとかの黄身酢 (C) 東龍

「ANAORI kakugama」でグリーンアスパラを温めて甘味をじっくり引き出しています。その予熱で北海道根室産のボタンエビをミキュイにし、とろっとした口溶け感に仕上げました。ジューシーで甘い「せとか」の黄身酢が添えられ、よいアクセントになっています。

千葉・いすみ市・蝦夷鮑

KAKUGAMA酒蒸し 季節の山菜と香草のブーケサラダ

KAKUGAMA酒蒸し 季節の山菜と香草のブーケサラダ (C) 東龍
KAKUGAMA酒蒸し 季節の山菜と香草のブーケサラダ (C) 東龍

薬師神氏のシグネチャーディッシュです。上にはたっぷりのハーブとタラの芽のフリット。底にはシソとピスタチオのジェノベーゼソースと、「ANAORI kakugama」で10分間酒蒸しにしたやわらかいアワビがあります。混ぜて食べると、味も食感も複雑になってよりおいしく食べられるでしょう。

山形・雪降り和牛うちもも

KAKUGAMAグリル 徳島・濃紅キャロット|花山椒

KAKUGAMAグリル 徳島・濃紅キャロット|花山椒 (C) 東龍
KAKUGAMAグリル 徳島・濃紅キャロット|花山椒 (C) 東龍

山形県の黒毛和牛である雪降り和牛を用いたメインディッシュ。肉質等級はA5なので脂はしっかりしていますが、ウチモモなので旨味が味わえ、重たくありません。「ANAORI kakugama」で焼かれているので、ドリップがしっかり閉じ込められ、中の焼き加減もムラのない美しいグラデーションとなっています。非常にジューシーで、黒毛和牛がもつ食味を堪能できるといってよいでしょう。濃紅キャロットはサツマイモのように甘く、名残の花山椒は好みで刺激的なアクセントに。

高知・おかざき農園フルーツトマト

KAKUGAMAおじや 完熟ヴェルガモット

KAKUGAMAおじや 完熟ヴェルガモット (C) 東龍
KAKUGAMAおじや 完熟ヴェルガモット (C) 東龍

鶏の出汁と粒の小さい九州ブランドの日本米「にこまる」でつくられたおじや。糖度の高い高知県のフルーツトマトはバナーで焼かれており旨味が増しています。ベルガモットの香りが上品です。

何でもできる調理道具

最旬の料理人である薬師神氏に生み出された料理によって、「ANAORI kakugama」の素晴らしさは伝わったと思いますが、他の点についても触れていきましょう。

最初に挙げておきたいのが、何でもできる調理道具であること。様々な用途に使える万能鍋もありますが、飲食店で使われるようなプロ仕様ではそれぞれの用途に応じて専用の調理道具が用いられるのが一般的。ソースをつくる深型のソースパンやソテー用のフライパン、煮込むための両手鍋、フライ用の厚板揚鍋など使い分けられています。

「ANAORI kakugama」は前述したように高い強度や遠赤外線効果を誇っており、調理に有用な色々な特性を有しています。熱源はガス(直火)、オーブンに加えて、鉄やステンレス、ホーローと同じようにIHにも対応。耐熱温度は300度なので焼く、煮る、蒸す、揚げる、炊く調理に関しては問題ありません。

全ての用途において、非常に高いレベルで調理でき、他の鍋がいらないくらいというのが大きな特長であるといえるでしょう。

機能性が高い

機能性が高いのも魅力的です。「ANAORI kakugama」には旨味を閉じ込めるための蓋がついていますが、裏返すとグリルパンになります。パーツが散らばらないのですっきりと収納でき、キッチンスペースを有効に使えるのは大きな利点です。

外蓋を開けると、無垢のヒノキでつくられた内蓋がついています。ヒノキは吸湿力があり、余分な水分量を吸収するので、鍋中がちょうどよいしっとり具合になります。

食材が炭化せず、他の食材に匂いがつかないので、続けて調理できるのも便利なところ。熱伝導率は鋳鉄の3倍、ステンレスの5倍もあり、これは常温のまな板の上で食材を解凍するよりも効率が高いほどです。

様々な機能性を有しており、頼りになる調理道具であることは間違いありません。

デザイン性に優れている

デザイン性に優れているのも大きな魅力です。

本体と上蓋はカーボン・グラファイトで、内蓋は無垢のヒノキでつくられているので、高級な素材ならではの上質感が感じられます。

ゲストから見える場所に置いてあっても、スタイリッシュで洗練されているので、おしゃれなインテリアとしか思えません。

ガストロノミーのトレンドでは、アトリエ風のオープンキッチンでゲストに見せるスタイルが流行しています。それだけに、「ANAORI kakugama」のようにデザイン性にも秀でた調理道具は時代に求められているといってよいでしょう。

日本発の調理道具

日本発の調理道具という点も注目したいところ。

「ANAORI kakugama」があれば、日本料理に伝わる微妙な火入れの技を、他の料理でもかんたんに応用できるようになります。角のフォルムや縁の処理の「几帳面取り」などデザインにも日本を取り入れているのも特徴的です。

ワサビやミソ、ユズや緑茶といった食材、日本刀をベースにしたナイフなど、海外から注目されている日本の食は少なくありません。しかし、ここ最近はスペインや北欧が食のトレンドをリードしてきました。アジアでは香港やシンガポール、タイなどで食の進化が目覚ましいです。

2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の食文化をますます海外に伝えていきたいだけに、食材やテーブルウェアに加えて、素晴らしい調理道具が登場したことは大きな意味があります。

世界の料理人も認める

最後に挙げたいのは、世界の料理人が認めていること。

「ナチュラリティ・ツアー by ANAORI」では、ミシュランガイドで星を獲得したり、「世界のベストレストラン50」や「アジアのベストレストラン50」でランクインしたりしているレストランがいくつも参加しています。シェフたちの顔ぶれを見ても、世界で名声を得ている料理人ばかりです。

このようなレストランや料理人は、ただ新しいというだけで、自分たちの手足となる大切な調理道具を意味もなく使用することはありません。

「ANAORI kakugama」が、最高のガストロノミーに相応しい調理道具であり、これまでにはなかった食体験を提供できるという確信から、ツアーに参加しているのです。

食材に寄り添った調理道具

ANAORIは、商品の開発についてこのようにコメントしています。

「世界の有名シェフたちからも評価をいただいているが、この商品は、食材へのストレスを限りなく削減することを目標に設計されたもの。食材の細胞破壊を最低限にするように設計された調理道具はこれまで存在しなかった。他の調理道具よりも圧倒的に早く調理できるが、それは時短を目的にしたのではなく、食材にとって最適な火入れ方法を探った結果」

様々な調理法に精通した薬師神氏は、次のように期待を込めます。

「日本発の素晴らしい調理道具が登場したことを嬉しく思う。今回のツアーを通して多くの発見があった。新しい調理方法も可能なので是非とも探求していきたい」

通常の調理道具はどのようにして安定的に料理をつくるかをテーマとしていますが、「ANAORI kakugama」はいかに食材にストレスを与えないかを考えてつくられています。「ナチュラリティ」という哲学のもと食材に寄り添い、そのポテンシャルを最大限に引き出す「ANAORI kakugama」が世界各地のガストロノミーシーンで見かけられることを楽しみにしたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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