Yahoo!ニュース

謎に満ちた鉄板焼のアフタヌーンティーとは? 革新的な試みの詳細と背景

東龍グルメジャーナリスト
山形県尾花沢産の雪降り和牛/著者撮影

ラグジュアリーホテルのアフタヌーンティーが人気

ホテルで人気を博している食事といえば、アフタヌーンティーがそのひとつとして挙げられます。ラグジュアリーホテルにとって、アフタヌーンティーは非常に重要なコンテンツ。なぜならば、集客力の強いアフタヌーンティーをきっかけにしてホテルへ訪れてもらい、記念日や女子会、デートやウェディングで利用してもらえるからです。

レストラン飲食予約のOZmallや一休でも人気のカテゴリ。優雅なラウンジでホテルメイドのスイーツやセイボリーが食べられ、紅茶も飲めます。写真が美しく撮れてSNS映えもするので、若い世代から年配の方までと利用者も幅広いといえるでしょう。

数あるホテルのアフタヌーンティーの中でも、ラグジュアリーホテルのザ・リッツ・カールトン東京「ザ・ロビーラウンジ」で行われているアフタヌーンティーは王道スタイルで評判が高いです。実は今、その王道のアフタヌーンティーに加えて、茶懐石から着想を得たアフタヌーンティーのように楽しめる鉄板焼も体験できます。

一期一会の内容

ザ・カールトン東京「ひのきざか」
ザ・カールトン東京「ひのきざか」

鉄板焼「ひのきざか」では2021年4月10日から18日にかけて、アフタヌーンティースタイルの「一期一会」コースが提供されています。

一期一会 12,200円(税・サ込)

セイボリー

・苺豆腐

(宇治煎茶 京都)

・桜海老の自然薯饅頭、蛍烏賊あけがらし味噌、真鯛昆布〆 二色の飛子、菜花浸し 鯛の子

(Jewel of Flowers HANA 福健省)

・くぬぎ鱒麹漬け 蕎麦粉のプチパンケーキ キャビアと生柴漬けを添えて

・苺を入れた農園直送サラダ 梅肉ドレッシング

(釜炒り緑茶 IRIKA 妙香 宮崎)

・和牛パテの照り焼きハンバーグ、和牛の焼肉サンド、和牛フィレステーキ

(玉露 焙じ茶KAHO 香焙 福岡)

スイーツ

・白いお汁粉苺白玉 小豆

・嶺岡豆腐 苺添え、スフレパンケーキ焙じ茶の蜜、わらび餅黒蜜、桜ようかん、チョコで包んだ苺シャーベット

(抹茶黒豆玄米茶 鹿児島・宮崎)

・季節のフルーツ

(水だし宇治煎茶 京都)

お茶のペアリングも行われている/著者撮影
お茶のペアリングも行われている/著者撮影

セイボリーとスイーツに分かれており、お茶がペアリングされているなど、まさにアフタヌーンティー。セイボリーやスイーツが鉄板カウンターを通して提供されるのはとても革新的です。

鉄板焼では普通、黒毛和牛がメインなので最後のデザートは水菓子や出来合いのケーキなど簡易的なことが多いですが、「一期一会」ではスイーツが非常に充実しています。

苺豆腐

苺豆腐/著者撮影
苺豆腐/著者撮影

栃木県で2020年に新しく認可された「とちあいか」を用いたアミューズ。ほのかな甘味が食欲をそそります。通常の鉄板焼で「苺豆腐」がアミューズとして提供されることはまずないので、とても新鮮です。

前菜

前菜/著者撮影
前菜/著者撮影

桜海老やホタルイカ、菜の花やタケノコ、木の芽など旬の食材が使われたプレート。自然薯饅頭は串に刺さっており、アフタヌーンティーで提供されるようなピンチョス風に。

くぬぎ鱒麹漬け 蕎麦粉のプチパンケーキ キャビアと生柴漬けを添えて

くぬぎ鱒麹漬け 蕎麦粉のプチパンケーキ キャビアと生柴漬けを添えて/著者撮影
くぬぎ鱒麹漬け 蕎麦粉のプチパンケーキ キャビアと生柴漬けを添えて/著者撮影

静岡県のくぬぎ鱒を3日間寝かせてから、同じ静岡県の麹に1時間半漬けて焼いた魚料理。長野県産蕎麦粉のガレットが添えられているので、くぬぎ鱒やキャビア、京都大原産の生柴漬けを載せて食べるという楽しみ方もあります。

メインディッシュ

山形県尾花沢産の雪降り和牛/著者撮影
山形県尾花沢産の雪降り和牛/著者撮影

メインディッシュ/著者撮影
メインディッシュ/著者撮影

山形県尾花沢産の雪降り和牛を用いた3品。鉄板焼の醍醐味である黒毛和牛がハンバーガー、サンドイッチ、ステーキに仕上げられ、その旨味を様々な形で堪能できます。3種類のメインディッシュを体験できるのは嬉しいところです。

白いお汁粉苺白玉 小豆

白いお汁粉苺白玉 小豆/著者撮影
白いお汁粉苺白玉 小豆/著者撮影

目の前でお汁粉が仕上げられます。ポン酢を使った茶葉のお浸しがよい口直しです。

スイーツ盛り合わせ

スイーツ盛り合わせ/著者撮影
スイーツ盛り合わせ/著者撮影

5種の和菓子と洋菓子の盛り合わせ。スフレパンケーキは目の前で調理され、だんだんと膨らんでいく様子を見られるのは鉄板焼の妙味でしょう。

季節のフルーツ

季節のフルーツ/著者撮影
季節のフルーツ/著者撮影

贅沢にもイチゴ4種類の食べ比べ。静岡県の「きらぴ香」、茨城県「淡雪」、栃木県「とちあいか」、奈良県「古都香」と各地域、ブランドのイチゴを味わえます。

企画された背景

鉄板カウンター
鉄板カウンター

鉄板焼でアフタヌーンティーを体験できるのは非常に新しい試みですが、どのようにして生み出されたのでしょうか。

料理長を務める谷口祐卓氏は「サンドロ・ガンバ総料理長から、鉄板焼でアフタヌーンティーを提供できないかと相談されたのがきっかけであった」と振り返ります。

難しい提案でしたが、谷口氏はもともとスイーツやお茶が大好きだったので、果敢に取り組みました。昨年12月頃から考案し始め、日本のおもてなしの心を重んじる茶懐石の精神を鉄板焼で表現することにしたといいます。

苦労したところは、料理とのバランス。お茶を引き立てるための料理なので、料理が主張しすぎないように調整したといいます。

全く新しい和洋折衷の食事

谷口氏は3回の試作を経てコースを完成させましたが、実は「一期一会」という名前も3回の変更を経て決まりました。

ザ・リッツ・カールトン東京のテーマは「East meets West(東洋と西洋の融合)」。この「一期一会」は鉄板焼と茶懐石を融合させた、全く新しい和洋折衷の食事なので、どのような名前を付けたらよいのか、とても悩ましかったのではないでしょうか。

次回は今年秋に予定されているということなので今後も楽しみですが、初回となる今回はわずか9日間しか提供されておらず、まさに「一期一会」の貴重な機会なので、是非とも体験していただきたいです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍の最近の記事