菅義偉首相も和牛を推進! 注目するべきホテル鉄板焼4選の理由

銀座みやちく竹芝店(メズム東京、オートグラフ コレクション)/著者撮影

和牛を堪能するなら鉄板焼

寒い冬は動物が脂肪を蓄えるので、肉の味わいが旨味を増します。

肉をメインとした日本料理で筆頭に挙げられるのが、鉄板焼。海外であれば、ステーキハウスはキッチンで仕上げられてから、ダイニングのテーブルへと運ばれます。しかし、鉄板焼では、寿司と同じようにゲストの目の前にある鉄板で仕上げられ、提供されるので、最高の状態で食べることができ、臨場感に溢れているのです。

黒毛和牛をはじめとした和牛を堪能でき、その時だけのパフォーマンスを体験できる鉄板焼は、一皿に全てを懸けるフランス料理と異なるのはもちろんのこと、強力な火でさっと熱を入れる中国料理とも違っています。

特に肉がおいしいこの時期において、注目したいホテルの鉄板焼とその裏側を紹介しましょう。

銀座みやちく竹芝店(メズム東京、オートグラフ コレクション)

店内からの眺望/著者撮影
店内からの眺望/著者撮影

メズム東京、オートグラフ コレクションは、JR東日本の子会社である日本ホテルが2020年4月27日にオープンしたラグジュアリーホテル。「魅了する」という意味の言葉からとった「メズム」という新しいオリジナルブランドであること、そしてマリオット・インターナショナルが世界中で展開する「オートグラフ コレクション ホテル」に加盟したことで話題を集めました。

そして、開業後に再び注目をさらったのが、ホテル4階に2020年8月7日テナント店舗としてオープンした宮崎牛専門店「銀座みやちく竹芝店」。なぜなら、鉄板焼店にしては珍しく、バーカウンターや優雅なテラスも設けられており、他店にはない魅力を携えているからです。

宮崎牛は、和牛のオリンピックと称される5年に1度の全国和牛能力共進会で、団体賞、種牛の部や肉牛の部で内閣総理大臣賞を受賞するなど、非常に評価が高い黒毛和牛。

この宮崎牛を「銀座みやちく竹芝店」で堪能できます。

おすすめしたいコース

「銀座みやちく竹芝店」で楽しみたいコースは次の通り。

鉄板焼きコース

(宮崎牛 90g 6,000円~、特選宮崎牛 90g 11,500円~、超特選宮崎牛 90g 15,500円~)

・本日のつきだし

・本日のスープ

・本日の前菜

・本日の海鮮

・フレッシュサラダ

・季節の焼き野菜

・ステーキ

・季節のピラフ/味噌汁/香の物

・デザート/珈琲 又は 紅茶

宮崎牛を専門としているだけあって、メインディッシュには宮崎牛、特選宮崎牛、超特選宮崎牛とランクを選べるのが大きな特徴。特定のブランド和牛をウリにしている鉄板焼店であっても、ランク別に用意されていることは非常に稀です。

左から順番に「東京ミリオンダラー」「竹芝サンセット ビューティー」「はつみつ平兵衛酢シャンパンカクテル」「日向夏ジントニック」/著者撮影
左から順番に「東京ミリオンダラー」「竹芝サンセット ビューティー」「はつみつ平兵衛酢シャンパンカクテル」「日向夏ジントニック」/著者撮影

カクテルや宮崎県のリキュールを用いたドリンクも特徴的で、宮崎県のマンゴーを用いたジュースも提供されています。

注目したいメニュー

本日の前菜/著者撮影
本日の前菜/著者撮影

「本日の前菜」は旬のせいこ蟹をたっぷりと用いた煮こごり。上にはたっぷりのキャビアやマーシュがのせられています。せいこ蟹の磯の香りとキャビアの塩味でよいメリハリ。

本日の海鮮/著者撮影
本日の海鮮/著者撮影

「本日の海鮮」は長崎県の神経締めした天然のヒラメを焼いた一品です。ソースはせいこ蟹を用いた濃厚なアメリケーヌで、上には黒トリュフ。ヒラメの旨味を引き出した魚料理です。

ステーキ/著者撮影
ステーキ/著者撮影

「ステーキ」の宮崎牛はA4相当。赤身にも脂身にも旨味があります。下に敷かれた食パンはそのまま食べられることが多いですが、最後のデザートに添えるラスクに仕上げてもらえます。

「デザート」はタルトタタンとフルーツ。カリカリに焼かれたラスクがよいアクセントです。

背景やこれから

「銀座みやちく」はもともと銀座にあり、15年にわたり営業してきましたが、2017年11月に閉店し、2018年2月に渋谷へ移りました。好立地を探していたところ、日本ホテルと縁があり、オープンする運びになったといいます。

こだわっているのは、宮崎牛と宮崎県から厳選して取り寄せた野菜や魚。

店長を務める真野佐和子氏は「宮崎牛のコースに加えて、東京ベイエリアと浜離宮を臨むロケーションと都心とは思えない開放感あふれる店内で喜んでいただいている」とゲストの反応について述べます。

今後は季節ごとに旬の食材などを用いたスペシャルコースも企画しているということなので、楽しみにしたいです。

日比谷モンシェルトントン(ザ・ペニンシュラ東京)

15メートルもの鉄板カウンター/著者撮影
15メートルもの鉄板カウンター/著者撮影

日本料理としゃぶしゃぶの名店といえば「瀬里奈」。1961年に六本木で開業して以来、存在感を示してきました。グループには鉄板焼「モンシェルトントン(mon cher ton ton)」があり、「瀬里奈 本店」と同じビルの地下にあります。

この新店舗となる「日比谷モンシェルトントン」が「ザ・ペニンシュラ東京」5階に2020年10月1日オープンしたとあって、食通の間で話題となりました。

デザイナーには建築家であり、「upsetters architects」を主宰する岡部修三氏を起用。15メートルを超える研ぎ出しのカウンターなど、非日常的な空間を紡ぎ出しています。

おすすめしたいコース

最も人気となっているのが、「瀬里奈」と命名された次のコース。

瀬里奈コース 15,000円(税・サ別)

・お通し

・前菜

・車海老と帆立貝の鉄板焼

・きざみ野菜のサラダ

・和牛特撰サーロイン

・野菜の鉄板焼

・ガーリックライス・味噌汁・香物

・デザート 

・コーヒー 又は 紅茶

お通しと前菜は日替わりになっていて、魚介類を経てからメインディッシュという流れです。

「瀬里奈」オリジナルラベルの白ワインと赤ワイン/著者撮影
「瀬里奈」オリジナルラベルの白ワインと赤ワイン/著者撮影

「瀬里奈」オリジナルラベルの白ワインや赤ワインも用意されており、コースのどの料理にも合うことは間違いありません。

注目したいメニュー

車海老と帆立貝の鉄板焼/著者撮影
車海老と帆立貝の鉄板焼/著者撮影

「車海老と帆立貝の鉄板焼」は鹿児島県のクルマエビと北海道産のホタテ貝を用いた魚料理。ホタテ貝は塩と胡椒を振って軽く粉をまぶしています。クルマエビは足の部分を香ばしい煎餅に。

和牛特撰サーロイン/著者撮影
和牛特撰サーロイン/著者撮影

「和牛特撰サーロイン」は国産の黒毛和牛。格付けはA5で、等級区分のB.M.S.は8から9とちょうどいい脂の差し具合です。焼き色をしっかり付けることで、脂が適度に抜けており、しつこくありません。

ガーリックライス/著者撮影
ガーリックライス/著者撮影

「ガーリックライス」はご飯のおいしさを伝えたいということで、新潟県のコシヒカリをややかために炊き、冷や飯ではなく炊きたてを用いています。フォン・ド・ボーを加えているのが、おいしさの秘密。ご飯ではなく素麺を選べるのも他とは違うところです。

「デザート」は選べるようになっており、3種盛りが一番人気。自家製クレームブリュレ、抹茶アイス、マロンのタルトといった内容で、アイスは六本木店で、他は店内でつくられているという、こだわりようです。

背景やこだわり

どうして「モンシェルトントン」がラグジュアリーホテルにオープンすることになったのでしょうか。

調理部長の薩川佐武郎氏は「以前から銀座周辺で鉄板焼をオープンしたいという想いがあった。お声がけいただき、よい機会なので入居するに至った」と答えます。

5階には会議室などがありましたが、改装して鉄板焼に相応しい空間が生み出されました。

六本木店との違いは、神戸ビーフのフィレが提供されるようになったこと。六本木店ではロースだけが提供されていました。世界でも知名度の高い神戸ビーフのフィレも楽しめるのは、ゲストにとって喜ばしいことでしょう。

モンシェルトントンは訪日外国人の方もよく訪れていましたが、ラグジュアリーホテルと老舗の鉄板焼店の組み合わせは相性がよいはずなので、改めて日本の食通にも鉄板焼の素晴らしさを伝えられるのではないでしょうか。

さざんか(The Okura Tokyo)

鉄板焼の主役は黒毛和牛のステーキです。ただ、他にも味わっておくべきメニューを備えている鉄板焼店もあります。

それは、ホテル鉄板焼の先駆けであるThe Okura Tokyoの「さざんか」。

The Okura Tokyoの鉄板焼は、1964年の東京五輪の際に限定営業のオープンレストラン「テラスレストラン」で提供されたのが始まりで、1990年に店舗として独立し、長い伝統と格式を誇ります。

この「さざんか」では、神戸ビーフや育て方を指定した特選和牛に舌鼓を打てることに加えて、ブイヤベースも味わえるのです。ブイヤベースは、フランス料理の鬼とも称され、開業当時に総料理長を務めた小野正吉氏の流れを組む欧風料理の一品で、まさに鉄板上の和魂洋才。

一年を通じてアラカルトで提供されていますが、今の時季であれば、コース料理でも楽しめます。

おすすめしたいコース

そのブイヤベースを味わえるコースはこちら。2021年1月15日から2月28日にかけて提供されている「葵」(20,000円、税・サ別)です。

葵(20,000円、税・サ別)

・アミューズ

・前菜

・かにと海藻のサラダ

・ブイヤベース さざんか風

・特選和牛フィレ(130g) または 特選和牛サーロイン(180g)

・季節の焼野菜

・ガーリックライス

・味噌椀

・香の物

・デザート

・コーヒー

前菜とサラダの後に「ブイヤベース さざんか風」があり、特選和牛へと続きます。魚料理の代わりにブイヤベースが提供されているのが、他の鉄板焼コースとは異なる大きな特徴。

ポメリー ブリュット・ロワイヤル マグナム/著者撮影
ポメリー ブリュット・ロワイヤル マグナム/著者撮影

The Okura Tokyo専用エイジングセラーでつくられた「ポメリー ブリュット・ロワイヤル マグナム」は前菜や魚料理にはもちろん、和牛にも合います。

注目したいメニュー

前菜/著者撮影
前菜/著者撮影

前菜はフレッシュな魚介類を用いた一品。手長海老とヒラマサのマリネ、イクラにミニトマト、スナップエンドウの新芽を合わせています。マッシュポテトとチキンのタルトも添えられていて、食べ応えがたっぷり。

ブイヤベース さざんか風/著者撮影
ブイヤベース さざんか風/著者撮影

「ブイヤベース さざんか風」は、スープのベースとなるヒュメ・ド・ポワソンも、「さざんか」で舌平目の骨を仕入れてつくっているほどのこだわりよう。車海老、帆立貝、白身魚、イカといった豪華な具材は焼き目を付けてから入れているので、香りもよく立ちます。

特選和牛/著者撮影
特選和牛/著者撮影

「特選和牛」は栃木県のフィレと群馬県のサーロイン。その時その時で最良の和牛を仕入れており、この日は脂がしっかりとしていたので、やや強めに焼いてさっぱりとさせています。

デザート/著者撮影
デザート/著者撮影

「デザート」は転卓して楽しめるのが嬉しいところ。和洋折衷の盛り合わせで、当日は、ほうじ茶のアイス、抹茶のムースケーキ、わらび餅、栗きんとんでした。

背景やこだわり

鉄板焼では珍しいブイヤベースはどのようにして考案されたのでしょうか。

マネージャーを務める伊藤純雄氏は「2008年のリーマンショック後、もっと楽しんでいただくために、新たに目の前で調理する料理を加えたらどうかと議論した」といいます。

ビーフシチュー、リゾット、トルティーヤなども候補に挙がりましたが、オークラのフレンチでも人気であったブイヤベースを「さざんか」風に進化させることに決まったということです。

今回の「葵」コースにブイヤベースが組み込まれた理由については「まだ寒いのでスープを入れようと考えた。素晴らしい演出だと喜んでいただいている」と自信をもちます。

鉄板上のブイヤベースを体験できるところはなかなか少ないので、是非とも体験しておきたいところです。

恵比寿(ウェスティンホテル東京)

個室の鉄板カウンター/著者撮影
個室の鉄板カウンター/著者撮影

鉄板焼では前菜や食事が提供されますが、メインディッシュはあくまでも鉄板の上で焼かれる黒毛和牛です。したがって、和牛以外で手の込んだ料理が提供されることは多くありません。

しかしそのような状況にあって、黒毛和牛をしっかりと堪能できる上に、会席料理のコースも楽しめる鉄板焼店があるのです。

それは、ウェスティンホテル東京の22階にある「恵比寿」。1994年にオープンした時からあり、最上階からの眺望も堪能できる、鉄板焼デートを確立させた人気店です。

おすすめしたいコース

2020年11月1日から2021年2月28日まで行われている「冬の鉄板会席」では、冬の味覚をふんだんに用いた会席コースが味わえます。

冬の味覚 鉄板会席 26,250円(税・サ別)

・ズワイガニと法蓮草の土佐酢ジュレ掛け

・虎河豚の土瓶蒸し

・合鴨と海老芋の葱味噌掛け

・金目鯛のかぶら蒸し

・ソフトシェルの南蛮漬け

・恵比寿牛ロースステーキ 120g もしくは 恵比寿フィレステーキ 100g

・焼野菜

・食事 ズワイガニの炒め御飯、味噌汁、香の物

・季節のフルーツ、コーヒー または 紅茶

※取材時のメニューで、時期によって変更あり

トラフグ、キンメダイ、ズワイガニといった冬の食材を、土瓶蒸しやかぶら蒸し、炒めご飯に仕上げているなど、鉄板焼とは思えない本格的な日本料理。

「ソフトシェルの南蛮漬け」など面白いメニューもあります。メインディッシュは、ウェスティンホテル東京のブランド牛である恵比寿牛です。

注目したいメニュー

※取材時のメニューで、時期によって変更あり

虎河豚の土瓶蒸し/著者撮影
虎河豚の土瓶蒸し/著者撮影

「虎河豚の土瓶蒸し」は大黒しめじとトラフグを合わせた前菜。ふぐ調理師免許を持つ料理人が2人いるので、フグの扱いも巧みです。フグの旨味とその軽い脂によって、出色のスープが紡がれています。

金目鯛のかぶら蒸し/著者撮影
金目鯛のかぶら蒸し/著者撮影

「金目鯛のかぶら蒸し」は希少な龍皮昆布の上に金目鯛をのせて焼いた魚料理。最後にやさしくかけられる餡は、カブと卵白、マイタケや菊の花で構成されており、見た目も味わいも華やかです。

恵比寿牛/著者撮影
恵比寿牛/著者撮影

恵比寿牛はロースかフィレを選べます。A4でB.M.S.7くらいの適度に脂がのった牛肉で、恵比寿牛がもつ旨味を味わえます。

ズワイガニの炒め御飯/著者撮影
ズワイガニの炒め御飯/著者撮影

「ズワイガニの炒め御飯」はたっぷりのズワイガニに加え、卵を入れてチャーハン風に。鉄板焼で、潮の香りがするご飯を味わえるのは非常に貴重です。

最後のデザート「季節のフルーツ」は転卓してゆったりと味わうことができます。

背景やこだわり

本格的な会席料理も食べられる鉄板焼コースは珍しいですが、実は2015年くらいから始められていました。

鉄板会席が始められた理由は、季節感を感じてもらえる会席仕立ての鉄板焼を提供したかったから。他では見かけられないスタイルなので、ゲストに喜んでもらえるのではないかという思いもあったといいます。

今回の「冬の味覚 鉄板会席」について料理長の吉田明人氏は「冬に旬を迎える食材をふんだんに使っている。最初から最後まで冬の味覚を会席に仕立てているので、味わっていただきたい」と自信をもちます。

「引き続きブランド牛のコースと、季節を表現する鉄板会席をご提供していくので、お好きな方を選んでいただければ」ということなので、これからも鉄板会席に期待したいです。

和牛と鉄板焼のポテンシャル

日本経済新聞によると、2019年の日本産牛肉の輸出は金額、数量ともに過去最高を更新したといいます。2010年と比べて金額は8.7倍、数量は8倍に増えたということなので、かなり伸長した食材であるといってよいでしょう。ちなみに、輸出している日本産牛肉とはほぼ全てが和牛です。

2020年における牛肉の輸出は鈍化していますが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けているからであり、それさえなければ、さらに伸びていたことは疑いようがありません。

2020年11月30日に菅義偉首相も出席した会議で、政府は、日本が強みを持ち、輸出拡大が見込める重点品目に、海外で和牛として人気の高い牛肉などの27品目を選定しました。

国を挙げて世界に輸出していく和牛の魅力を存分に味わえるのが鉄板焼です。鉄板焼および黒毛和牛を中心とした和牛は、寿司と並んで世界に誇れる日本の食材であり、食文化であるだけに、より多くの方に鉄板焼の魅力を知っていただきたいと思います。