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100周年を迎えるヒルトンが発祥となったものを全ていえますか?

東龍グルメジャーナリスト
ヒルトン発祥メニュー/著者撮影

100という区切り

100という数字は人間が認識する大きな区切りのひとつです。

それを示す例として、100歳以上の方を百寿者と呼んだり、1世紀が100年単位となっていたり、パーセントが100をもとにした割合となっていたりします。

調査に使うデータベースにより少し異なりますが、令和元年の2019年に創業100周年を迎える日本の企業は1686社もしくは2160社とされており、住友商事、オリンパス、キューピー、ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスなど多くの日本人に知られた企業が名を連ねています。

日本とフィンランドの外交関係樹立日本とポーランドの国交樹立からも100周年を迎えます。

いくつもの100周年が訪れていますが、今年でちょうど100周年を迎える、日本にとって重要なホテルがあるのです。

創業100周年を迎えるヒルトン

その日本にとって重要なホテルとは、アメリカに本拠を置き、ワールドワイドに展開するヒルトン。

ヒルトンは1919年5月31日に誕生したホテルであり、ヒルトンを運営するヒルトン・ホテルズ&リゾートは全世界113カ国に17ブランド5700施設を展開する世界最大規模のホテルグループなのです。

日本ではヒルトン、コンラッド、ダブルツリーbyヒルトンといったブランドを展開しており、外資系ホテルの先駆けとなっています。

そのため、宿泊したり、挙式を行ったり参加したり、レストランを利用したりしたことがなかったとしても、多くの日本人はヒルトンの名前は知っていることでしょう。

日本におけるヒルトンは以下の通りです。

ヒルトン

  • ヒルトン東京

1963年開業(当時は東京ヒルトンホテル)、1984年に西新宿に移転

  • ヒルトン東京ベイ

1988年開業

  • ヒルトン東京お台場

2015年開業

  • ヒルトン小田原リゾート&スパ

2004年開業

  • ヒルトン成田

2002年開業

  • ヒルトンニセコビレッジ

2008年開業

  • ヒルトン名古屋

1989年開業(当時は名古屋ヒルトンインターナショナル)

  • ヒルトン大阪

1986年開業(当時は大阪ヒルトンインターナショナル)

  • ヒルトン福岡シーホーク

2010年開業

  • ヒルトン沖縄北谷リゾート

2014年開業

コンラッドや他のブランドに関しては以下となります。

コンラッド

  • コンラッド東京

2005年開業

  • コンラッド大阪

2017年開業

その他

  • ダブルツリーbyヒルトン那覇

2012年開業

  • ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

2016年開業

  • KYUKARUIZAWA KIKYO, キュリオ・コレクションbyヒルトン

2018年開業

  • ダブルツリーbyヒルトン沖縄北谷リゾート

2018年開業

北は北海道から南は沖縄まで、主要都市の大阪や名古屋、福岡はもちろん、東京にはいくつものホテルが存在しています。

ヒルトンは以上のように日本各地にあり、多くの日本人にとって馴染み深い外資系ホテルとなっていますが、100周年を機にしてその功績や影響力を振り返ってみましょう。

ヒルトンによるイノベーション

ヒルトンはホテル業界において様々なイノベーションを行ってきました。以下のイノベーションは、今でこそ、どのホテルでも当然のように行われていますが、当時としては画期的なことだったのです。

  • 客室にエアコンを完備
  • ルームサービスを開始
  • 客室にテレビを設置
  • 日本のホテルでソムリエを採用

1927年に冷たい流水とパブリックエリアにエアコンを設置したホテル(現ヒルトン・ウェイコ)をテキサス州に開業したり、1930年にヒルトンの最高級ラグジュアリーブランドであるニューヨークのウォルドーフ・アストリアでルームサービスを開始したりしました。

1947年にはニューヨークのルーズベルト・ホテルで客室にテレビを客室に設置したり、1963年には日本で初めての外資系ホテルとなる東京ヒルトン(現在はヒルトン東京)を東京都の永田町に開業して、日本のホテル業界で最初にソムリエを配置したりしました。

また、1959年に380室のサンフランシスコ・エアポート・ヒルトンを開業してエアポートホテルの嚆矢となったり、2005年にコンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランド内に、世界初の海中レストラン「イター アンダーシー(Ithaa Undersea)」をオープンしたりしています。

こういった先進的な試みを行ってきたことが大きく評価され、1949年に創業者であるコンラッド・ヒルトン(1979年91歳で逝去)がホテル経営者として初めて「タイム」誌の表紙を飾り、1963年にも再び表紙を飾るに至ったのです。

ヒルトン発祥のメニュー

ヒルトンが起こしてきたイノベーションの中には、もちろん、食もあります。

100年という歴史の中で、料理人やパティシエが数多くのメニューを生み出しており、ヒルトンが発祥となったものも少なくありません。

ヒルトン発祥メニュー

  • ウォルドーフ・サラダ
  • エッグベネディクト
  • サウザンアイランド ドレッシング
  • レッドベルベットケーキ
  • ブラウニー
  • ピニャコラーダ
  • マティーニ

各メニューを詳しく紹介しましょう。

ウォルドーフ・サラダ

ウォルドーフ・サラダ/著者撮影
ウォルドーフ・サラダ/著者撮影

ウォルドーフ・サラダはリンゴとセロリを使ったマヨネーズのサラダです。1896年頃にウォルドーフ・アストリアで、ウォルドーフのオスカーとして親しまれていたメートル・ドテルのオスカー・チルキーが考案しました。

エッグベネディクト

エッグベネディクト/著者撮影
エッグベネディクト/著者撮影

エッグベネディクトは、1894年にニューヨーク・ウォー ル街の元ブローカーであるレミュエル・ベネディクトがウォルドーフ・アストリアを訪れ、二日酔いを治すためにオーダーした料理から、オスカー・チルキーがインスピレーションを得て作った一品。

サウザンアイランド ドレッシング

サウザンアイランド ドレッシングはマヨネーズやケチャップで作られたポピュラーなサラダのドレッシング。1900年代、ウォルドーフ・アストリアのオーナーであったジョージ・ボルドが、米国とカナダの境目にあるサウザンド諸島に向かっている途中でオスカー・チルキーにサラダを作るように依頼し、即席で作られたドレッシングです。

レッドベルベットケーキ

レッドベルベットケーキ/著者撮影
レッドベルベットケーキ/著者撮影

レッドベルベットケーキはビーツを用いた赤いケーキで、アメリカ南部では昔から伝わる母の味といわれています。1920年代にニューヨークのウォルドーフ・アストリアでシグニチャーディッシュとして提供されていたのが起源だとされています。

ブラウニー

ブラウニー/著者撮影
ブラウニー/著者撮影

ブラウニーは、パーマーハウス創業者の妻であり、1893年のシカゴ万国博覧会のリーダーを務めていたバーサ・パーマーが「美しくて簡単に運べる何かを用意してほしい」という依頼を受け、シェフのジョセフ・セルに相談して生まれたケーキ。パーマーハウスでは、120 年を経た今でも当時のレシピがそのまま継承されており、年間5万個を売り上げるほどの人気ぶりです。

ピニャコラーダとマティーニ

左がピニャコラーダ、右がマティーニ/著者撮影
左がピニャコラーダ、右がマティーニ/著者撮影

ピニャコラーダは、1954年にカリブ・ヒルトンのバーテンダー ラモン・マレーロ・ペレズが、3ヵ月もの間試行錯誤を繰り返して完成させたカクテル。ラム、パイナップルジュース、ココナッツミルクが使われています。

マティーニは実に様々なアレンジが行われるカクテルですが、ウォルドーフ・アストリアでは、ジンとウォッカを混ぜたマティーニが初めて作られました。「ウォルドーフ・アストリア・カクテル」と呼ばれるほど、新しいカクテルだったのです。

ヒルトン東京の名物メニュー

こういった数々の発祥メニューに加えて、まだ他にも注目するべき食があります。

1984年に東京ヒルトンインターナショナル(現在はヒルトン東京)が、現在ではどこのホテルでも人気となっているデザートブッフェを日本で初めて開始しました。

ヒルトン東京で長らく愛されたメニューとしてはバナナブレッドやパーコー麺を挙げないわけにはいかないでしょう。

バナナブレッドはヒルトン東京開業の1984年から販売されており、コクのある甘さの黒糖とプレーンの2種類に加えて、チョコレートチップやナッツが入った新バナナブレッド「ケーキZARU」もあります。

パーコー麺は1972年の東京ヒルトン時代に誕生しました。国産小麦を使った中華麺に、カレー風味の2度揚げした九州産黒豚スペアリブをのせたボリューム満点の逸品。復活の声が多かったので、現在は中国料理「王朝」の裏メニューとして提供されており、オーダーするには事前予約が必要です。

ヒルトン東京「メトロポリタングリル」名物のバーボン熟成 ジョンディゴールドTボーン/著者撮影
ヒルトン東京「メトロポリタングリル」名物のバーボン熟成 ジョンディゴールドTボーン/著者撮影

薪の炎を使ったグリルカウンターを有し、モダングリルを味わえる「メトロポリタングリル」にも特筆するべきシグネチャーディッシュがあります。

バーボン熟成させ、桜のチップで燻製させたTボーンステーキは、他では食べられない肉料理として注目されているのです。

「復刻版ヒルトンメニュー」提供

ここまで多くの名物メニューを紹介してきましたが、この100周年を迎えるにあたり、当時のシグネチャーメニューを味わってもらおうと、復刻版ヒルトンメニューが提供されています。

ヒルトン東京では以下のメニューを楽しむことができます。

ヒルトン東京の復刻版ヒルトンメニュー

  • 1階「マーブルラウンジ」

レッドベルベットケーキ/ブラウニー

「ストロベリーCATSコレクション」ディナーブッフェで提供

2019年4月1日~6月3日

  • 2階「メトロポリタングリル」

ウォルドーフ・サラダ/シェフサラダとサウザンアイランド ドレッシング/エッグベネディクト

ウィークエンドブランチで提供

2019年4月6日~

  • 1階「セント・ジョージ バー」/2階「ZATTA」

ピニャコラーダ/マティーニ

2019年4月1日~

他のヒルトングループでも復刻メニューが提供されていることを忘れてはなりません。

コンラッド東京ではオールデイダイニング「セリーズ」で、ヒルトン東京ベイではバーラウンジ「シルバ」で、ヒルトン小田原リゾート&スパ「ザ・ロビーラウンジ」で、ヒルトン発祥メニューを体験することができます。

100日をカウントダウン

ヒルトンはホテルの設備やサービス、料理やスイーツ、カクテルからデザートブッフェまで創造してきましたが、それだけではなく、昨年2018年11月には、コンラッド・モルディブ・ランガリ・アイランド内に、世界で初めてとなる海中レジデンス「ザ・ムラカ(THE MURAKA)」を開業しました。

日本では以下のホテルを開業する予定で、ますます勢いづいています。

日本での開業予定

  • 2020年

ヒルトン沖縄瀬底リゾート(仮称)

  • 2021年

ヒルトン長崎

  • 2022年

ヒルトン広島

  • 2023年

ヒルトン札幌パークホテル

2019年5月31日に創業100周年を迎えるにあたり、ヒルトン100周年の特別ページで、記念日までの100日をヒルトンのスタッフ100人がカウントダウンしています。

ヒルトンは人材輩出ホテルとも称され、創造性とホスピタリティとバイタリティに溢れるスタッフを擁していますが、このヒルトンが誇る優秀なスタッフが100周年を盛り上げ、そして、次の100年を支えていくことを鑑みれば、今後も引き続きイノベーションが起きることは疑いようもなく、ヒルトンが提供するメニューがますます楽しみに思うのです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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