無料招待では記事を書かなければならないのか? 裏側を知る5つの考察

(ペイレスイメージズ/アフロ)

無料招待

以下の書き出しで始まる興味深い記事がありました。

ゲーム情報専門メディア「4Gamer.net」が、自ら主催したコンサートにメディアを無料招待したにもかかわらず記事を書いてもらえなかったことに対し、ツイッターで「恨み節」を連発している。

出典:タダでコンサート招待したのに「記事を書かない」 そんなメディアは非常識?主催者が不満爆発

概要は次の通りです。

あるゲーム情報専門メディアが自社主催のコンサートを開催し、「記事にできないが参加する」という大手ゲームメディアの関係者4人を無料で招待しました。大手ゲームメディアはコンサートのことを記事で紹介せず、Twitterですら言及しませんでしたが、主催者であるゲーム情報専門メディアは「せめてTwitterで紹介してくれることを期待した」「アウトプットしないのであればチケットを購入するべき」と不満をTwitterに投稿したのです。

これはゲームメディアやコンサートに関連した事件ですが、食の分野でも共通することがあるので、考察してみます。

食の分野に置き換える

今回の事象を食の分野に置き換えて一つずつ考えてみましょう。

  • 無料招待の有無
  • 発信の必要
  • 発信の可否
  • メディアかフリーか
  • 競合が主催

無料招待の有無

無料招待は食の分野ではよくあることです。ただ、無料招待という呼び方はほとんどせず、試食会や賞味会と謳われています。

大人数を招待したかったり、カジュアルにしたかったり、提供するメニューが多かったりする場合には、立食もしくは着席のブッフェ形式で開催されますが、そうでなければ着席のコース形式で開催されることが一般的です。レストランやホテル、もしくはPRエージェンシーからメールや郵送でインビテーションが届きます。Facebookイベントから招待されることも増えてきました。

試食会や賞味会といった公式なプレス向けイベントではなく、5人~10人程度の小規模な非公式な会も設けられることがあります。小規模の会では、まず着席形式となります。メリットは大人数とは違ってしっかり話ができることです。メディアの人数は少ないですが、ターゲットを絞っているので、PR戦略は立て易くなるでしょう。

さらには、1~4名くらいが参加する会食形式の場合もあります。これくらいの規模であれば互いに面識があるメディアに声を掛けることがほとんどです。

いずれの規模でも広報担当者がその場にいることが基本になっています。ただ、とにかくまず体験してもらいたいということで、広報担当者がおらず、メディアだけが食事する非常にカジュアルなスタイルもあります。

それぞれ規模や目的は違うものの、PR戦略の重要な位置づけとして、様々な形で無料招待が行われているのが現実です。こういった観点からすれば、コンサートや映画などの興行で、無料招待を行うことは全く異質なことではありません。

発信の必要

以上のように、食の分野で、無料招待が行われることは珍しいことではありません。では、無料招待された場合には、記事を執筆したり、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSへ投稿したりするなど、発信は必要になるのでしょうか。

私が知る範囲では、無料招待をする場合に発信を義務化することは多くありません。ただ、発信をお願いしたり、可能かどうかを尋ねたりすることはあります。

メディアが自ら発信するので訪れたいと打診した場合には、契約ほど強い効力はありませんが、道義的には発信が義務となるでしょう。発信ができなくて申し訳ないからと、無料招待を断る真面目なメディアも私は知っています。

今回の件では、事前に記事を執筆できないと告げているので、記事化できないのは仕方ありませんが、そうであれば、どうして無料招待を要求するのか疑問です。主催者も、発信を期待していたのであれば、これを承諾したのは矛盾です。

中長期的に考えれば、今後何かで記事を執筆する際に、以前に体験したイベントを引用したり、参考にしたりすることは少なくないので、その時に発信できなくてもいずれ意味を持つ可能性があると、主催者が考えることも必要であると思います。

発信の可否

記事執筆やSNS投稿の可否は、無料招待するイベントの性質にも依存します。

例えば、何ヶ月にも渡る長期フェアであればまだしも、数日だけの短期フェアの場合には、編集・印刷・配本に時間を要する紙のメディアは記事にすることは難しいでしょう。

テレビやウェブであっても、短期フェアの場合はタイミングによります。イベントを告知するといった情報提供型の企画では、フェア前やフェア中に公開できれば紹介できますが、フェア後では紹介できません。こういったイベントがあったというレポート型の企画では、フェア前には紹介できませんが、フェア中やフェア後であれば紹介できます。

短期フェアではなく、中長期フェアであったり、新規オープンやリニューアルオープン、新シェフ就任やメニュー変更であったりと、インパクトの大きい要素であれば、様々なメディアが紹介し易いです。

この件に関して言及すれば、コンサートはたった1日だけのイベントなので、レポート型の企画でなければ記事にすることは難しいでしょう。ただ、主催者が不満を述べたように、SNSでの投稿であれば発信し易かったと考えたのは理解できます。

メディアかフリーか

無料招待される人が、編集者などメディアに所属する者か、フリーのジャーナリストやライターかによっても、事情が少し異なります。

メディア所属者を無料招待した場合には、当然のことながらそのメディアの性質を知った上で、開催する会と相性がよいと判断して声を掛けているはずなので、記事執筆やSNS投稿を希望しているでしょう。メディア所属者であれば、何を紹介するのかある程度は裁量を持っていますが、それでも紹介できない場合はあります。

主催者としては、せめてSNSに投稿してもらいたいと思いますが、SNS担当者は別にいることも多いので、簡単にSNSへ投稿できない事情もあるでしょう。ただ、個人アカウントはメディアの公式アカウントとは関係がないので、こちらで発信することは可能です。

フリーのジャーナリストやライターであれば、自身の連載をもっていない限り、何を紹介するのか、ほとんど決定権は持っていません。しかし、複数のメディアに関わっていることが多いので、どこかに提案して企画を通せば、紹介できる可能性があります。ただ、メディアに所属しているわけではないので、メディアの公式SNSへ投稿することはできません。

競合が主催

食の分野でも、今回の件のように、メディアが主催して食のイベントを行うことがあります。そういった場合、自身のメディアで紹介するのは当然のことです。ただ、それだけでは物足りないので、他でも取り上げてもらえることを期待して、メディアを無料招待します。

ただ、無料招待されたメディアからすれば、主催者が競合メディアであれば、紹介することは簡単ではありません。どうしてライバルのメディアが行っていることを、自社のメディアが宣伝してあげなければならないのかと考えるからです。

食の分野では、他のメディアが主催しているイベントを積極的に紹介することはほとんど見掛けられません。従って今回の件に関しても、競合メディアなので紹介できないと考え、「記事にできない」と事前に告げていたのではないでしょうか。

紹介される理由

ここまで、食の分野を通して、無料招待で記事を書かなければならないのかについて考えてきました。

PR業務をはっきりとした効果を数値で測るのは難しいですが、無料招待するためには予算が必要となります。そのため、記事執筆やSNS投稿を期待しているのであれば発信を必須とし、中長期的なリレーションシップを築いたり、今後の紹介につなげたりしたいのであれば、発信を必須としなくてもよいのではないでしょうか。

メディアにも色々な事情があるので、発信できないこともあります。ただ、本当に心を動かされたイベントであれば、せめて個人アカウントのSNSに投稿する可能性は高いでしょう。

記事執筆やSNS投稿が必須でないのであれば、発信しなかったことを詰るよりも、なぜ紹介されなかったのか、どうすれば紹介されるようになるのかを考えた方が、健全的でよかったと思います。