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なぜストロベリーデザートブッフェが増えているのか? 3つの特徴と各ホテルの食べどころ

東龍グルメジャーナリスト
ヒルトン東京「マーブルラウンジ」/著者撮影

ホテルのストロベリーデザートブッフェ

ストロベリーデザートブッフェが非常に人気を博しています。多くのホテルでイチゴをテーマにしたスイーツブッフェが行われており、テレビや雑誌、インターネットの記事で紹介されているので、多くの人の目に止まっていることでしょう。

東京だけでも、ストロベリーデザートブッフェを行っているホテルは、以下のようにたくさんあります。

※各ホテルにおいて期間内で実施されている日は異なるのでご確認ください

  • ヒルトン東京「マーブルラウンジ」

2017/12/26~2018/05/31「ストロベリー・サイケデリック60s」

  • ヒルトン東京ベイ「シースケープ テラス・ダイニング」

2017/12/26~2018/03/15「いちごに恋するマスカレード」

  • ANAインターコンチネンタルホテル東京「シャンパン・バー」

2018/01/01~03/31「ストロベリー・ピクニックブッフェ」

  • ウェスティンホテル東京「ザ・テラス」

2018/01/04~03/30「ストロベリーデザートブッフェ」

  • ストリングスホテル東京インターコンチネンタル「ザ・ダイニング ルーム」

2018/01/05〜05/31「クリスタルプリンセスの苺ランチビュッフェ」

  • 京王プラザホテル「樹林」

2018/01/06~31「アリスとSweet Strawberry」

  • ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ 宴会場「パークレーン」

2018/01/10~02/28「アリスのスイートティーパーティー ストロベリーデザートブッフェ by Junji Tokunaga」

  • コンラッド東京「セリーズ」

2018/01/12~04/30「オトナ苺スイーツブッフェ」

  • サンシャインシティプリンスホテル「カフェ & ダイニング シェフズパレット」

2018/01/13~05/31「いちごスイーツフェア」

  • マンダリン オリエンタル 東京「ヴェンタリオ」

2018/01/14~02/25「ストロベリー サンデー ブランチ」

  • グランド ハイアット 東京「フレンチ キッチン」

2018/02/01~03/11「ストロベリー アフタヌーンティー」

昨年も<人気爆発のストロベリーデザートブッフェを大総括、3つの傾向と楽しみ方>という記事でその人気ぶりを紹介しましたが、今年は実施店がさらに増え、人気がさらに高まっています。

増えている理由

ホテルのストロベリーデザートブッフェが増えている理由は何でしょうか。

それには以下の3点が挙げられます。

  • 集客力が高い
  • メディア露出が多い
  • 値段を上げられる

集客力が高い

まず挙げられるのは、集客力が断然高いことです。デザートブッフェは季節要素を強く取り入れる傾向にありますが、秋のマロンフェア、年末のクリスマスフェアといった定番に比べても、ストロベリーデザートブッフェは文句なしに集客力が高いのです。

日本には2016年末で250以上も登録品種があるほど、日本人はイチゴが大好きな国民であり、韓国に日本のイチゴ品種が流出したとして問題になったことがあるほど、日本のイチゴは質が高いです。

日本のイチゴはおいしい上に日本人はイチゴに目がないので、イチゴを使った様々なスイーツを堪能できるストロベリーデザートブッフェが大人気となっています。

ヒルトン東京では、昨年2017年に全館をあげて行ったストベリーフェアで、6ヶ月で23トンものイチゴを使用しました。また1階にある「マーブルラウンジ」で現在行われているストロベリーデザートブッフェは、既に2018年3月末まで予約一杯になっているなど、ストロベリーデザートブッフェの破壊力はすさまじいものがあります。

他のホテルでも、同様の傾向にあり、1ヶ月先まで満席であったり、週末は予約が取れなかったりしているのです。

ホテルは他のホテルの動向をよく注視しているので、ストロベリーデザートブッフェのように集客力があるフェアを自社でも行うという傾向になっています。

メディア露出が多い

メディアでの紹介が多いこともストロベリーデザートブッフェが増えている理由にあるでしょう。私が取材した時に、3社合同となったこともあります。

Googleトレンドで確認してみると、ここ3年間くらいは1月くらいになるとストロベリーデザートブッフェへの関心が急増していることが分かるでしょう。

他とは異なる独自のフェアを行って取り上げてもらうことも悪くありませんが、日本人は大のイチゴ好きであるだけに、メディアもストロベリーデザートブッフェを取り上げる傾向にあります。

プレスリリースの転載をみても、ストロベリーデザートブッフェが非常に多いことが分かるでしょう。ストロベリーデザートブッフェを行ってさえいれば、確実にどこかのメディアには紹介してもらえるのです。

値段を上げられる

ストロベリーデザートフェアは、数カ月先まで予約が埋まってしまうほどの人気なので、値段も上げやすいです。そういったこともあり、ストロベリーデザートブッフェの時にだけ値段を上げるところも少なくありません。

イチゴが人気ということも背景にありますが、イチゴはもともと値段が高いので、普段よりも値段を高くしても客に納得してもらい易いという事情もあります。

客からしてみても、ストロベリーデザートブッフェは年に1回だけの貴重なフェアであること、しかも、高級なホテルのデザートブッフェであれば絶対に満足できるということで、多少は値段が高くてもちょっとしたハレの日のイベントの一環として訪れるのです。

特徴

ホテルのストロベリーデザートブッフェが増えている理由は以上の通りですが、特徴は何かあるのでしょうか。

大きく分けて以下の3点があると考えています。

  • 物語性
  • 装飾物
  • 期間が長い

物語性

ストロベリーデザートブッフェは人気なので、一昔前であれば単に「ストロベリーデザートブッフェ」とだけ謳っておけば、それだけで十分でした。しかし、最近はどこもストロベリーデザートブッフェを行っているので、差別化を図るために物語性を携えて付加価値を高めています。

飲食店ではただ単に食べ物を食べるだけではなく、そこで得られた体験が重要であると言われていますが、エンターテインメント性が高いブッフェは何かしらの世界観で彩ることが体験を高めるのに有用です。

そのため、今回のストロベリーデザートブッフェでも、プリンセスや不思議の国のアリス、1960年代や仮面舞踏会をテーマにしたものがあり、何かしらのストーリーを与えています。

これからのストロベリーデザートブッフェは、よりイチゴと相性のよい物語が必要になってくるでしょう。

装飾物

<「オトナカワイイ」デザートブッフェの時代へ><いざ!デザートブッフェは撮る時代へ>で紹介したように、2016年にはヒルトングループがInstagram(インスタグラム)などでSNS映えするデザートブッフェに力を入れることを目的として掲げています。

現在では、テーマに合わせて、ブッフェ台に小物を置いたり、店内を装飾したりするだけではなく、ユニフォームを替えたり、インスタ映えするための写真スポットを設けたり、メニュー表も製作したりするのが当たり前となりました。

ストロベリーデザートブッフェでは、ケーキそのものよりも、電動で動いたり、とても大きかったりと、装飾物に力が入れられています。ストロベリーデザートブッフェはとても集客力があって予算を割けられること、さらには、後述するように開催期間が長いこともあって、装飾物にも力を入れられるのです。

また先のヒルトン東京「マーブルラウンジ」では、壁の2つのエリアにプロジェクションマッピングで映像を投影しています。

期間が長い

ストロベリーデザートブッフェは一昔前であれば、2月や3月だけの1ヶ月間ということが普通でしたが、人気が高まるにつれて1月から3月くらいとなり、さらには5月までに延長され、今ではクリスマスが終わった12月下旬から開始されるようにもなっています。

ストロベリーデザートブッフェは最大で5ヶ月間にも及びますが、1年の半分近くを占めるフェアなど他には存在しません。しかし、これだけ長い期間行っても、予約でぎっしりと埋まっており、予約が取れないという状況です。

フェアは本来、客を飽きさせないようにするために、1~3ヶ月毎にテーマを新しくするものですが、ストロベリーデザートブッフェだけは例外になっていると言えるでしょう。

予約したい客を断るだけでも非常に大変になっており、期間が長期化しています。

ホテル毎の特徴

最後にホテル毎の特徴もおさらいしておきましょう。

ヒルトン東京、ヒルトン東京お台場、コンラッド東京といったヒルトングループでは、「#ヒルトンスイーツ」というキーワードをもとにして、SNS映えするスイーツに力を入れています。それだけあって、おいしいことはもちろん、見た目だけで心を引きつけるスイーツや装飾になっており、インスタ映えすることは間違いありません。実際にメディアでの露出は最も高くなっている言えるでしょう。

京王プラザホテルは他に先駆けて始めたアリスフェアをストロベリーフェアに合わせており、こちらも独特の世界観が印象的です。サンシャインシティプリンスホテルは毎年恒例の3部にもなる壮大なストロベリーフェアを展開します。

ANAインターコンチネンタルホテル東京は、これまでそれほどイチゴに力を入れていなかっただけに、ブッフェを始めとして全館あげてストロベリーフェアを行っていることに注目です。

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイは、世界的パティシエである徳永純司氏がファンシーなストロベリースイーツを創るとあって大きな話題をさらっています。開催期間も少ないとあって予約が難しい状況です。

ストリングスホテル東京インターコンチネンタルはこれからブッフェに力を入れ始めるにあたり、まずはランチにストロベリーデザートブッフェを合わせて付加価値を高めています。

グランド ハイアット 東京やマンダリン オリエンタル 東京は普段からペストリーの評判が高いだけに、本格派のスイーツを味わえることは間違いありません。グランド ハイアット 東京は常時スイーツブッフェを行っているわけではなく、マンダリン オリエンタル 東京はランチやディナーのブッフェで季節に合わせたデザートフェアを謳っているわけではないだけに、どちらともイチゴの期間だけの特別感があるえしょう。

ウェスティンホテル東京は、もともとエグゼクティブペストリーシェフの鈴木一夫氏によるクオリティの高いデザートブッフェが安定した人気を誇っており、年中満席となっています。しかし、イチゴの時期は普段よりも予約がさらに多いので、既に3月末の予定を4月末までに延期しました。

これからが本番

2018年のストロベリーデザートブッフェについて人気の理由と特徴を紹介しましたが、ストロベリーデザートブッフェの本番はこれからです。

これからますますテレビや雑誌、インターネットのニュースにも取り上げられ、目にも触れる機会が多くなっていきますが、残念ながら予約を取ることはそれに比例してより難しくなります。

イチゴ好きな日本人がストロベリーデザートブッフェにさらなる磨きをかけていくことは確かなはずなので、今年はもちろん来年移行もこの時期はイチゴから目が離せません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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