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はあちゅう氏も巻き込まれたラーメン1杯を4人で食べた炎上事件は、何がよくて何が悪いのか?

東龍グルメジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

4人でラーメン1杯

<【日本の常識】ラーメン屋で1杯のラーメンを4人で分け合って食べるのはアリ? 大規模アンケート調査結果>という記事で、ラーメン1杯を4人でシェアして食べることの是非を質問していました。

<はあちゅう氏のセクハラ証言を受けて、レストランやホテルでパワハラやセクハラはあるのか?>でも触れた渦中のはあちゅう氏も関連しているとして、2年近く前の出来事が再びクローズアップされているのです。

皆さんは、混雑しているラーメン屋に入り、1杯のラーメンを注文し、複数人で分け合って食べたことはあるたろうか。いまインターネット上で、1杯のラーメンを4人で分け合って食べた女性たちが炎上し、物議を醸している。飲食店では「1人1品を注文するのが常識」とされているからだ。

出典:【日本の常識】ラーメン屋で1杯のラーメンを4人で分け合って食べるのはアリ? 大規模アンケート調査結果

飲食店では1人1品注文することが普通なので、こういった行為をどう思うのかとアンケートを採っています。

・ラーメン屋でラーメン1杯を4人で分けて食べるのはアリ? 男性編(200名)

ナシ 62.5%

アリ 37.5%

・ラーメン屋でラーメン1杯を4人で分けて食べるのはアリ? 女性編(188名)

ナシ 75.5%

アリ 24.5%

出典:【日本の常識】ラーメン屋で1杯のラーメンを4人で分け合って食べるのはアリ? 大規模アンケート調査結果

結果を確認してみると、男女共に否定的な意見が多いようで、男性よりも女性にその傾向が強いです。アンケートを行って結果を紹介するのもよいですが、記事では考察が行われていないので少し物足りなく感じます。

不特定多数の意見を知ることも大切ですが、考察することも必要なので、以下の観点から考えてみましょう。

  • 法律
  • 業態
  • 機会

法律

そもそも飲食店で1つの食べ物を複数人で食べることは法律的にどうなっているのでしょうか。

今回の件に関しては以前、既に話題となっており、法的な解説もされています。<博多ラーメン1杯を4人で「シェア」して堪能、そんな客の「注文」は拒否できるか?>では「許可を得ていれば、契約は有効に成立する」と述べられているのです。

つまり、飲食店と客とは契約関係にあり、複数人で訪れたとしても1つの食べ物を注文するだけでよいと飲食店が承諾をしたのであれば、契約が成立したということで何の問題もありません。

今回の件も、4人で1杯のラーメンを食べることをラーメン店に承諾してもらっているということであり、店側の注意を聞かずに迷惑をかけたわけではないので、何も責められる理由はないでしょう。

この事実を重要な前提として、次の考察に移ります。

業態

飲食店には様々な業態があり、業態によっても事情が異なります。

1つの食べ物を複数人で食べられる業態はあるのでしょうか。

ファミリーレストランのように小さい子供を連れて利用することが多い業態では、1つの食べ物を複数人で食べられるようになっています。

小さい子供は食べる分量が少ないので、1人前を注文しても、1人ではとても食べ切れません。もちろん、乳児や離乳食を食べる幼児であれば、そもそも食べられるメニューがないでしょう。

お子様プレートなど子供用のメニューが用意されていることもありますが、小学生でもお腹一杯になるようなボリュームになっていたりするので、未就学児には分量が多過ぎます。

未就学児であれば大人が注文して、そこから少しだけ分けて食べさせた方が食品ロスも少なくなりますし、経済的にも負担もないので、よいことでしょう。

ファミリーレストラン以外の業態では、ファインダイニングであれば、1席当たりの単価が高いこともあり、席に着いたら必ず何かを注文する必要があります。子供用のメニューも用意されていないので、例え小学生が入店を許可されていたとしても、大人と同じコースやアラカルトを食べなければなりません。

こういったポリシーは公式サイトに記載されていたり、予約時に説明されたりします。

似たような問題として、以下の記事を書いたことがあります。

そこではカフェが問題となりましたが、カフェのような業態では、店内のスペースを専有することに価値があるので、必ず1人1品注文する必要があります。

今回のラーメン店はファミリーレストランでもファインダイニングでもカフェでもありません。しかし、ファストフードを含めて、こういったカジュアルな業態ではファミリーレストランとは異なり、回転率が重要ということもあって、1人1品を注文しなければならないことが多いです。

機会

最後は飲食店が客を獲得する機会についてです。

先に紹介した私が過去に書いた記事でも述べていますが、飲食店で支払う値段には、料理だけが含まれているわけではありません。その値段の中には、食材費や人件費だけではなく、皿やカトラリの値段、光熱費や空間の値段なども含まれているのです。

こういった観点から考えると、席それ自体にも値段があり、飲食店の価値が宿っているのです。注文しない客が席に座っていることによって、注文するはずの客が座れなくなることになり、飲食店が売上を立てる機会を損失してしまいます。

1人1品注文さえしていれば売上機会は損失しないので、注文しないことによってその席の売上を失っていると考えてもよいでしょう。

飲食店が承諾していたとしても、1人1品注文しない場合には売上機会を奪っていることに変わりはないので、そのことを認識する必要があります。もしも、店の外で入店待ちの列ができているのであれば、なおさらのことでしょう。

以前から私もよく述べていますが、飲食店の運営は経済活動の一環です。経済活動は慈善活動とは異なり、利益を上げることを目的としています。飲食店が儲かること、売上を立てることは当然のことです。

ブログが発端

1つの食べ物を複数人で食べることは、業態によっては、普通のことではなく、売上機会を奪っています。しかし、1つの食べ物を複数人で食べてよいかどうかは、あくまでも飲食店と客との決めごとであるので、飲食店が承諾していれば、外野からとやかく指摘することはありません。

今回の騒動は、あるブロガーが過去にブログで書いた記事が発端となり、炎上しました。店側に承諾してもらっていたので全く問題ありませんが、ラーメン店に入って4人で1杯食べることはあまり普通のことではないだけに、そこにはあえて触れなかった方が、食べた4人にとっても承諾したラーメン店にとっても、よかったのではないかと思います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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