最も行きたい「偽レストラン」は、きっと見破れない。事件を知るための5つの考察

(写真:アフロ)

偽レストランが高評価

<ロンドンの実在しないレストラン、口コミ旅行サイトで格付けトップに>という記事で、偽レストランに関する記事が掲載されました。

【AFP=時事】英ロンドンで「最も行きたい」レストランに格付けされた、裏庭の物置小屋を改装したレストランが実は存在していなかったことが分かった。世界最大級の口コミ旅行情報サイト「トリップアドバイザー(TripAdvisor)」が7日、明らかにした。

出典:ロンドンの実在しないレストラン、口コミ旅行サイトで格付けトップに

実際には存在しないレストランが世界に展開する口コミ旅行サイトに登録され、しかも、レビューで高評価を獲得し、注目されていたという事件です。

日本ではどうか

今回の偽レストラン問題を、日本におけるレストランやインターネットの観点から、以下の点から考察してみましょう。

  • レストラン登録
  • 口コミ投稿
  • 高評価獲得
  • ジャーナリスト
  • 口コミサイト

レストラン登録

「食べログ」や「Retty」を始めとするCGM(Consumer Generated Media=コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア=消費者生成メディア」では、基本的にユーザーが自由に登録・投稿する側にあり、運営側の承認がなくとも、自由にレストランを追加できるようになっています。

登録されたレストランに対して、実際にその住所に訪れ、直に電話番号へ架電してみなければ、その存在の有無は立証できません。それをいちいち、運営側が行っていては速度の面からしても、コストの面からしても見合わないでしょう。

そもそも、こういったコストを省いて爆発的にコンテンツを増やしたいので、CGMは存在しています。従って、レストラン登録の際に、本当に存在するかどうかを運営側が確認するのは、非常に難しいと考えられます。

「トリップアドバイザー」で偽レストランが登録されましたが、それを責めることは難しいでしょう。

口コミ投稿

レビューは本来、そのレストランに実際に訪れて食べたことがある人しか登録できないものです。しかし、実際のところは、レストランを訪れたかどうかを証明することなくレビューを投稿することが可能です。

写真も共に投稿していればまだ少しは証明になりますが、写真を投稿せず、具体的な記述がなくてもレビューとして登録できます。

熱心な「食べログ」のレビュアーや「Retty」のユーザーの中には、口コミ数を増やしたいと思うがあまりに、本当は訪れていないのに口コミを投稿するような人もいます。詳しい人が読めば、本当に行ったのかどうか怪しいと思う口コミでも削除されることはありません。

削除となるのは主に、レストランの経営に大きな影響を与える衛生面などの記述のうち、その真偽が証明できないものです。

基本的に口コミは投稿されたもがのそのまま掲載されます。従って、レストラン登録と同様に、「トリップアドバイザー」で虚偽の口コミ投稿が登録されてしまうのも仕方ないと言えるでしょう。

高評価獲得

今回の事件で最も注目するべきところは、ここだと考えています。

偽レストランを登録できたり、虚偽口コミを登録できたりしても仕方ないと思いますが、それが高評価になるのは問題です。

「ダリッジの小屋」は掲載当初、格付けが最低の1万8149位だったが、複数のコンピューターからトリップアドバイザーの監視をくぐり抜けて寄せられた偽のレビューのおかげで人気が上昇した。

出典:ロンドンの実在しないレストラン、口コミ旅行サイトで格付けトップに

「トリップアドバイザー」のような点数で表示される口コミサイトでは、口コミが非常に重要なコンテンツとなるだけに、ステルスマーケティング(ステマ)に対するシステム的な対策がなされているべきです。

ステルスマーケティングへの対策がされているのであれば、特定の企業や人物からの不正な口コミに対してペナルティが与えられており、虚偽口コミも同様に対処されていることになります。

しかし、「トリップアドバイザー」では虚偽口コミの点数が反映されており、その結果、ロンドンのレストランの中で1位にランク付けされたということなので、そもそもステルスマーケティングへの対策が十分になされていなかったと思われても仕方ありません。

「食べログ」では加重平均を採用しているので、口コミ数が多かったり、特定のジャンルに詳しかったり、他のレビュアーから支持されていたりするレビュアーの点数が反映され易くなります。「トリップアドバイザー」では点数のロジックが公にされていませんが、どのようにしてい点数を集計しているのでしょうか。

不正を行う方が悪いことは確かですが、不正が簡単に行われないようにすることは必須の要件であると思います。

ジャーナリスト

このジャーナリストはどういった目的で、偽レストランを登録し、虚偽口コミを投稿したのでしょうか。

 読者をいたずらニュースで面白がらせる目的で運営されているウェブサイト「vice.com」の寄稿者でフリーランス・ライターのオオバー・バトラー(Oobah Butler)氏は「ある日小屋の中で急に思いついたんだ。偽情報があふれる中、偽レストランもあっていいだろう、と」。

出典:ロンドンの実在しないレストラン、口コミ旅行サイトで格付けトップに

ジャーナリストの使命の一つとして、世の中でまだ知られていない問題を白日のもとにさらすことがあります。しかし、実際に偽レストランが何か問題になっていることはありません。このジャーナリストが行った不正行為では、せいぜい偽レストランが登録される可能性があることを提示しただけになるのではないでしょうか。

偽レストランを口コミサイトに登録することによって、実際に利益を上げたりできるわけではないので、ここから大きな犯罪や不正へとつながることは、想像することは難しいです。従って、偽レストランが登録される可能性を世の中に提示しても、あまり意味がなかったように思います。

そういった意味では、このジャーナリストは単に、いたずらやジョークで偽レストランを登録し、虚偽口コミを投稿し、目立ちたかっただけとしか、私は判断できません。

本当にレストランのためを思って、普段から活動していたのでしょうか。

口コミサイト

「トリップアドバイザー」は世界に展開する旅行に関する最大の口コミサイトです。世界各地の言語に自動的に翻訳されることから、SEOにも強く、世界各国で最も読まれている旅行口コミサイトのうちの一つであると言えるでしょう。

その「トリップアドバイザー」で、企業ぐるみの組織的なステルスマーケティングでも、最先端の技術に秀でたハッカー集団でもなく、単に一介のジャーナリストによる「偽情報があるのと同じように偽レストランがあってもいい」といった非ジャーナリズム的な思いつきで始められた行動が正規のものとしてまかり通ったのは、恥ずべきことであると考えられます。

口コミサイトの生命線は、その口コミの信頼度でしょう。従って、口コミの健全性には最も気を遣うべきであり、コストもかけるべきです。

今回の事件を通して「トリップアドバイザー」は改めて口コミの質的向上に努めなければならないように感じます。

改善するためのよい機会に

世の中ではフェイクニュースの問題が取り沙汰されましたが、外食産業においては、レストランの不正な評価、つまりレストランの不正レビューに関しても、より注目されるべきであると考えます。

レストランは、「ミシュランガイド」「世界のベストレストラン50」「アジアのベストレストラン50」「ゴ・エ・ミヨ」を始めとする様々な組織・団体からはもちろん、「食べログ」「トリップアドバイザー」のような口コミサイトからも評価され、それが経営に甚大な影響を及ぼします。

レストランにとっては重要な評価を、いたずらに試すのは糾弾するべきです。また、評価する組織・団体も公平性が担保されるような仕組みを構築しなければならないことは明白ではないでしょうか。

今回の事件では、レストランのことを考えているわけでもないジャーナリストの悪ふざけによって、口コミサイトにおけるレストランの評価が正される機会が作られたことは皮肉ですが、世界中から参考にされる「トリップアドバイザー」の仕組みがより改善されていけば結果的にはよいことなので、これからの対応を見守っていきたいと思います。