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グッチ裕三氏のカフェ・焼き鳥店問題から「知らないふり紹介」を再び考える

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

再びグッチ裕三氏の店

以前に<グッチ裕三氏のメンチカツ店問題から「知らないふり紹介」を考える>という記事で、グッチ裕三氏が自身の店を、全く部外者のように装ってテレビで紹介した件について考察しました。

そこで一段落着いたかと思われましたが、<「グッチ裕三」のステマ商魂 メンチカツの次はカフェ>という記事で、さらに「知らないふり紹介」が指摘されています。

オーナーを務めるカフェ

記事ではメンチカツ店の他に2店あると言及されていました。1つ目はグッチ裕三氏自身がオーナーを務めるカフェに関してです。

〈音楽も料理も飲み物も最高。陽気な雰囲気にホッとするんだよね〉(「女性セブン」15年1月29日号)

〈ここはちょっと凄いよ。一見、ごく普通のカフェ。でも、食べてみるとどの料理もお値段以上、外れがない。本物を感じる〉(「dancyu」17年7月号)

出典:「グッチ裕三」のステマ商魂 メンチカツの次はカフェ

「女性セブン」は週刊女性誌ですが、食の特集も時折に組まれています。「dancyu」はフードライターとして名高い森脇慶子氏が立ち上げに尽力した食の月刊誌です。グッチ裕三氏は、この2誌で自身の店を「知らないふり紹介」をしていたというのです。

経営に携わっていた焼き鳥店

2店目は、以前経営に携わっていた焼き鳥店になります。

〈ここの塩焼きはとにかくうまい! (略)何串でも食べられちゃう〉(「女性セブン」05年1月6・13日号)

出典:「グッチ裕三」のステマ商魂 メンチカツの次はカフェ

前述の「女性セブン」で、1月の合併号という大きな号で、自身が関係していた焼き鳥屋を褒めていたということです。

グッチ裕三氏の回答

記事の冒頭では、ステマではないかというストレートな質問に対して、グッチ裕三氏が以下のようにコメントしています。

「グッチは7月下旬、出演番組での取材の場で、このステマ疑惑に言及。繰り返し『認識不足だった』と口にしながらも、『自分の名前を出さず、味で勝負したかった』『それがフェアだと思っていた』などと弁明していました」(芸能記者)

出典:「グッチ裕三」のステマ商魂 メンチカツの次はカフェ

グッチ裕三氏のコメントを読んで、このコメントと「知らないふり紹介」の問題について考えます。

問題点

私が考える大きな問題は以下の3点になります。

  • 味で勝負したい
  • 評価者と被評価者
  • コンテンツ作り

味で勝負したい

グッチ裕三氏は「自分の名前を出さず、味で勝負したかった」と述べています。

しかし、もしも本当に「味」で勝負したかったのであれば、「自分の名前を出さずに、自分が紹介する」のではなく「自分の名前を出さずに、自分以外が紹介する」方針を貫くべきだったのではないでしょうか。

「自分の名前を出さず、味で勝負したかった」というのは基本的に「味」以外の要素を排除するということなので、芸能人であり知名度が抜群のグッチ裕三氏の店であるというバイアスがかかるのは確かによくありません。そのためグッチ裕三氏の店であることを隠匿するのは理解できることでしょう。

著名人かつ食に精通した方が経営しており、そのオーナーが公にされていない飲食店は少なくありません。

しかし、「勝負する」というのは通常、第三者の客観的観点による評価を意味するだけに、自身で「評価」=「紹介」してしまってはまずいでしょう。グッチ裕三氏が自身の店であることをひたすらに隠し、それでもなお、他の誰かが素晴らしい店であると認め、どうしてもテレビや雑誌で紹介したいとならなければ「自分の名前を出さず、味で勝負したかった」というポリシーと矛盾してしまいます。

評価者と被評価者

テレビや雑誌では、飲食店は紹介される側、つまり、被評価者です。反対に、テレビや雑誌で紹介する芸能人、ジャーナリスト、食通、マニアなどは評価する側、つまり、評価者です。

試験が行われる際に、試験を受ける人と、試験を「採点」=「評価」する人が同じであり、しかも、他の人はそれを知らないという状況があったら、どうでしょうか。適切に採点されたと信じるのは難しいかも知れません。

そして、今回のグッチ裕三氏の件では、自身が関係する店を「知らないふり」をして紹介しており、これと同じ構造になっているのです。

食の世界でも、当然のことながら、評価者と被評価者に密接な関係があってはなりません。

コンテンツ作り

グッチ裕三氏が、自身が関係する店をいくつも紹介してきたことによって、多くの方が、テレビ製作や雑誌制作、またはインターネット制作における食の特集で、こういった「知らないふり紹介」などのステマが行われているのではないかと疑うようになったのではないかと思います。

それは仕方ないことですが、やはり非常に残念です。何故ならば、ほとんどの場合には、予算的にも時間的にも人的にも余裕がない中で、ロケハン(事前調査)をこなした上で、その特集に相応しい店を選定しているからです。

もちろん、その内容はそれぞれで異なるものの、最低でも、コンテンツ制作する人々が関係する店を紹介することは、まず行われていません。店を選定する際、明示的に「自身が関係していない店」を選択するように言われることはありませんが、それは自明のことだからです。

テレビや雑誌、インターネットのコンテンツを制作する際に、「評価者」=「紹介者」はその度に契約書にサインしているわけではありませんが、こういった「知らない振り紹介」が多くなれば、自身が関係のある店を選んではならにという旨を記した契約書が必要になってしまいます。

絶対的な評価は存在しない

食の評価は、その「評価者」=「紹介者」の味覚や嗜好、体験や信念、および、その時の気分や体調、同席者を含めた環境などに大きく依存されるので、絶対的な評価など存在しません。

そういったことを前提とすれば、テレビや雑誌、インターネットで紹介されるお勧め店が、そのまま全ての人に対するお勧め店であるというのは幻想ですが、最低でも「評価者」=「紹介者」本人にとっては、自身の利益以外の要素から導き出されたものである必要があります。

そして、一度でも信用を失った「評価者」=「紹介者」のお勧めは二度と信頼されることはありません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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