ホテビアが人気の理由、ホテルビアガーデンの今

ホテビアが大盛況

ホテビアをご存知ですか。

これは私が作った造語で「ホテルのビアガーデン」のことです。最近ではこのホテビアが大盛況となっており、今年になってさらにその勢いを増しています。

ビアガーデンは夏の風物詩ですが、百貨店の屋上でプラスチック製やアルミ製のかたいイスに座り、あまりきれいとは言えないテーブルの上で、簡易容器に入れられた焼きそばや唐揚を食べ、大ジョッキからグラスにビールを注いで飲む様子を想像する人が多いかと思います。

しかし、ホテビアはそういった野暮ったさとは無縁であり、実に優雅なので人気を博しているのです。今ではホテルの夏の主要コンテンツになっていると言ってよいでしょう。

主だったホテビアを挙げると以下の通りです。

  • 山の上ホテル

「山の上ビアまつり」

  • グランドプリンスホテル新高輪

飛天テラスガーデン「高輪フォレストガーデン」

  • 東京プリンスホテル

「森の中のビアガーデン」

  • ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル

屋外テラス「はまビア!海の見えるビアガーデン」

  • ヒルトン東京

ホテル7階 屋外プライベートラウンジテラス「天空のビアガーデン」

  • 東京ドームホテル

ポートガーデンテラス「ビアガーデン」

  • グランド ハイアット 東京

オークドア「サマービアガーデン」

フレンチ キッチン「ラ・テラス サマープロバンス BBQ」「ソワレ ブランシュ」

フィオレンティーナ「テラスハッピーアワー」

六緑「和ビール テラス ハッピーアワー」

チャペルガーデン「昭和ビアガーデン」

  • パーク ハイアット 東京

デリカッセン「パーク ブリュワリー」

  • ホテル グランドアーク半蔵門

パティオ「杜を望むビアガーデン」

  • ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ

「森のビアガーデン by シェフズライブステージ・カールトン」

  • ホテル日航東京

アプレイズ「アプレイズB.B.Q.」

  • 吉祥寺第一ホテル

8階テラス「ラム肉ジンギスカン」

  • シェラトン都ホテル

カフェ カリフォルニア「テラスバーベキュープラン」

このように、ホテビアは非常に充実しています。次に特徴的なものを説明していきましょう。

差別化

ホテビアは競争が激しくなっているので、高級化したり、オリジナル商品を提供したりするなどして、差別化が進んでいます。

グランドプリンスホテル新高輪「高輪フォレストガーデン」では15000円ものプレミアムバーベキューセットが提供されており、フォアグラのポワレや和牛のロースやミスジやカルビ、さらにはオマール海老やタラバ蟹、鮑までが食べられるのです。一流の鉄板焼と比べても遜色のない品揃えとなっており、高級志向の人にも適した内容となっています。

東京プリンスホテル「森の中のビアガーデン」では女性ホテリエによる女性のためのプロジェクト「TOKYO HONEY PROJECT」が考案したレディースバーベキューセットが提供され、前菜やデザートが付き、ノンアルコールカクテルも飲み放題に含まれています。女性の視点で考えられたメニュー構成であり、女子会にも十分に利用できるところが新しいでしょう。

The Park Weizen
The Park Weizen

またザ・プリンス パークタワー東京では、「【グルメ/快挙】何故ザ・プリンス パークタワー東京「ブリーズヴェール」は料理コンクールに強いのか?」の記事でも取材させていただいた野原茉美氏が中心となり、オリジナルクラフトビール「The Park Weizen」を作り出して販売するなど、ビアガーデンだけではなくビールそのものに力を入れていることは見逃せません。ホテリエ自らが新しいビールを考案するというのは私も聞いたことがなく、他との差別化につながっています。

これらは全て今年から提供されるようになった商品です。

またビールという観点で言えば、東京ドームホテル「ビアガーデン」ではベルギービールを飲むことができますし、夏にホテルでビールを飲むというスタイルを確立したパーク ハイアット 東京「パーク ブリュワリー」に至っては元祖地ビールのサンクトガーレンによるオリジナル2種のオリジナルビールがフリーフローとなっており、今年も大盛況が見込まれています。

空間

ビアガーデンと一括りにしていますが、実に様々な空間で行われるようになっています。

ヒルトン東京「天空のビアガーデン」はプライベートラウンジテラスという隠れ家的な環境の中で新宿の夜景を眺めることができ、その魅惑的な名前とも合わせて、メディアにもよく露出しています。

ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル「はまビア!海の見えるビアガーデン」では無限の海が目の前に広がり、ホテル グランドアーク半蔵門では新しくリニューアルしたパティオで今年から「杜を望むビアガーデン」が行われ、皇居の杜を望めることをウリとしています。

ホテル グランドアーク半蔵門は帝国ホテルのレストランで料理長を務めたシェフが腕を奮うことも謳われていますが、これは帝国ホテルの子会社である帝国ホテルエンタープライズがホテル グランドアーク半蔵門を運営しているからです。帝国ホテル東京はビアガーデンを行わないだけに、ホテル グランドアーク半蔵門のビアガーデンに余計に力を入れているように感じられます。

また山の上ホテル「山の上ビアまつり」では屋台風にして日本の夏を演出しています。

特に注力するホテル

サマービアガーデン
サマービアガーデン

ホテル単体に焦点を当てると、「ラグジュアリーホテル「グランド ハイアット 東京」は何故フリーフローに力を入れるのか?」でもご紹介したように、グランド ハイアット 東京は特にホテビアが充実していると言えるでしょう。

オークドア「サマー ビアガーデン」とフレンチ キッチン「ラ・テラス サマープロバンス BBQ」ではフリーフローが行われており、フィオレンティーナ「テラスハッピーアワー」ではハッピアワーが開催され、六緑「和ビール テラスハッピーアワー」では全国各地のクラフトビールを飲むことができます。

さらに今年はフレンチ キッチンのテラスで白をテーマにした南仏アーリーサマーパーティー「ソワレ ブランシュ」も行われ、食事に加えて、シャンパーニュ、赤ワイン、白ワインがフリーフローとなっています。このように1970年代のフレンチリヴィエラを体感できるかと思えば、チャペルガーデンで昭和時代を回顧できる「昭和ビアガーデン」も開催したりと、実に様々な試みを行っているのです。

ビアガーデンという枠を超えて、テラスでいかにオシャレにお酒を楽しむかをテーマにしており、ゴージャスながらも親しみ易いグランド ハイアット 東京のブランドイメージを体言しています。

ハイブリッドビアガーデン

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ

他にも新しい試みとして挙げたいのは、ハイブリッドビアガーデンと謳われ、今年から始められたホテル インターコンチネンタル 東京ベイ「森のビアガーデン by シェフズライブステージ・カールトン」です。

豪華な宴会場カールトンを木々が生い茂る森に仕立て上げ、幻想的な雰囲気を醸し出す一方で、窓の外には東京ベイやレインボーブリッジが見えて景色も楽しめます。さらには宴会場にガラス張りのキッチン「シェフズライブステージ」が設けられているので臨場感も楽しめたり、女性向けにコラーゲンが入っていたりするビューティーカクテルを用意したりしているのです。

ハイブリッドビアガーデンと命名したのは「森の癒し」×「できたて料理とビール」ということが理由ですが、昨今では普通のビアガーデンは注目されないということの裏返しでしょう。

ホテルがビアガーデンに力を入れる理由

以上のように、ホテビアはとても進化していますが、では、どうしてホテルはビアガーデンに力を入れているのでしょうか。

それはまず第一にテラスなど良質なハードウェアを有効に使うためです。ホテルは豪華な複合施設と言えますが、客室やレストランと同じように、テラスもハコモノなので遊休させておくわけにはいかず、売れる時に売らなければなりません。

そこで、夏と相性のよいテラスとお酒を結び付け、さらにはホテルならではの本格的な料理や洗練された空間で付加価値を高めて、ビアガーデンを売り出すことにしたのです。

次に、ホテルのブランドイメージを壊さないでカジュアルにし、より広い客を呼び込むのに、ビアガーデンがちょうどよいからです。ホテルは敷居が高いと思われて、昔に比べると若い人が足を運びにくくなっていますが、かしこまったレストランではなく、開放的なビアガーデンであれば、気軽に訪れることができます。

利用する方からすると、居心地やサービスが悪かったり、あまり清潔ではなかったり、料理がおいしくなかったりするビアガーデンよりも、少し高くてもよいから、上質で品のよいオシャレなホテビアを選んでいるのです。

ホテビアによって得られるもの

1875年にオープンした「スプリング・バレー・ビヤ・ガーデン」をもってビアガーデンの嚆矢とされています。

当時のビールの価格は500mlの中ジョッキに換算すると2000円くらいの高価なものでありながらも、男性グループや1人客で夏は賑わいを見せていたようですが、そこから140年の時を経た今は一転し、ビール離れが進んでおり、特に若者によるビール離れは顕著になっています。

その一方で、クラフトビールや海外のビールはますます人気となっており、スティルワインやスパークリングワインも需要が高まっていますが、これらが、これまた若者離れが進んでいるホテルによって盛り上げられており、しかも、当のホテルはホテビアによって若者を取り戻すチャンスを得られているのは、何とも数奇な巡り合わせであるような気がしてなりません。

ホテビアの進化だけではなく、ホテビアによってホテルが何を取り戻せるのか、注目したいです。

元記事

レストラン図鑑に元記事が掲載されています。