肉好きには知っておいてほしい、新肉ブーム「ノーズ トゥ テール」

好調な肉業態

「六本木にステーキハウスが多い理由」でも述べたように、昨今は空前の肉ブームとなっています。ステーキ、焼肉から鉄板焼やシュラスコまで肉を前面に押し出した業態は好調です。

赤肉、熟成肉からジビエや希少部位といった様々な切り口がありますが、スケールの大きいフェアが試みが行われます。

それは、<モダングリルの原点、パーク ハイアット 東京「ニューヨーク グリル」を振り返る>でご紹介したニューヨークグリルが行う「ノーズ トゥ テール」(Nose to Tail)です。

これは英訳の通り「鼻先から尻尾まで食べ尽くす」ことを意味しており、1頭の牛を無駄にしないということに加えて、あらゆる部位をそれぞれの持ち味を生かした調理方法で楽しむということも含まれています。

この考え方が注目され、雑誌やネットで取り上げられています。

食材を大切にする

PRエグゼクティブ 石川さや子氏は「5月21日から5月23日の3日間限定でノーズ トゥ テールを行う。シビレやハラミなど様々な部位を手間隙かけて最上の料理に仕上げてご提供する」と概要を説明します。

今フェアを開催した理由を問うと、「20~30年前から1頭の牛を無駄にせず、大切にまるごといただこうというノーズ トゥ テールの考え方はがあった。それが最近になり、世界中の料理人たちの間で、この考え方が再び注目され始めた」と答えます。

日本人に合う考え方

料理長のフェデリコ ハインツマン氏は「日本のお客さまにも、ノーズ トゥ テールをご紹介したかった。高い調理技術をもってして、手間隙かければ、どのような部位もおいしく食べられることを是非知っていただききたい」と真摯に話します。

この発言を受けて石川氏は「日本では魚料理や焼鳥などで様々な部位を食べることに慣れている。そのため、牛をまるごと食べるという考え方は受け入れられ易いと考えた。開催日はまだ先になるが、既に予約が入っていたり、いくつも取材の依頼が届いたりしている」と、反響が大きいとします。

料理長はアルゼンチン出身

アルゼンチン出身のニューヨークグリル料理長 フェデリコ ハインツマン氏
アルゼンチン出身のニューヨークグリル料理長 フェデリコ ハインツマン氏

ニューヨークグリルのようなファインダイニングでは通常、テンダーロインやサーロインといった最上の部位しか使われないので、牛タンであるならまだしも、シビレやハラミが使われるのは珍しいことです。

そういった希少な部位を扱える料理人がいるのか尋ねると「フェデリコ料理長はお肉の消費量が多いアルゼンチン出身。各部位の持ち味を理解しているだけではなく、牛を解体できるなど、肉について知悉している」と自信を持ちます。

仕込みに3日間も

ノーズ トゥ テールで提供されるコースはかなり手間がかかりそうですが、いかがでしょうか。

石川氏は「手間隙をかければかけるほどおいしくなる部位を使っているので仕込みに力を入れている。全ての工程に3日も費やすので、3日間開催するのがやっと」であると述べます。

どの黒毛和牛を使うのかと訊くと、フェデリコ氏は「北海道のえぞ但馬牛、仙台牛、米沢牛などを使うが、今はまだ決めていない。その時に最もおいしい、A4もしくはA5等級の黒毛和牛を使う」と答えます。

苦労した点については「前菜からメインディッシュまで肉が続くので、お客さまが飽きないように腐心した。切り方で食感に変化をつけたり、味の強弱にメリハリをだしたりしているので、最初から最後までおいしく食べていただける」と丁寧に説明します。

では、フェデリコ氏が労を惜しまず紡ぎ出したノーズ トゥ テールのコースをご紹介しましょう。

温かい和牛タンのサラダ 玉葱のピクルスとコルニッション パルメザンチーズ 和牛テールのコンソメ

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牛タンは野菜、ガーリック、バジル、ニンジンなどと一緒に、沸騰させずに低温で3時間つけておき、じっくりと柔らかくしています。薄切りにして繊細な食感になっていますが、独特の力強さは残っています。パルメザンチーズ、マスタードと合わせたところが面白いでしょう。

牛テールスープは、バーナーだと脂が残るので、骨をオーブンでローストして脂肪を飛ばしています。様々な野菜と一緒に3時間煮詰めた後で抽出し、醤油を小さじ一杯加えて、香りを出しています。

リードヴォーのテリーヌ 和牛のパストラミとデコポン モリーユ茸のソース

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シビレとも呼ばれているフランス料理やイタリア料理ではお馴染みのリードヴォーは柔らかくて繊細な味です。タマネギ、カブのスープで15分煮て、取り出してプレスした後にスライスし、ブラウンシュガーを塗してカラメリゼします。リードヴォーの匂いを押さえて、酸味も引き出しています。アルゼンチンでは肉と季節のフルーツを合わせるので、ここではデコポンと合わせています。

和牛ブリスケット BBQソース モワルのリゾットと黒トリュフ

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ブリスケットは前足の内側にある肩バラ肉で、2日間かけて仕込みます。塩、砂糖、スパイスに24時間漬け込んだ後、低温オーブンで野菜と一緒に1時間焼き、その後に取り出してスモークし、プレスしてカット。最後にまたオーブンの強火で焼くという手間を要する工程です。骨髄の旨味が感じられるシンプルなモワルのリゾットと合っています。

和牛スカートステーキのグリル ベジタブルジュと牛脂でコンフィしたポテト チミチュリオイル

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スカートステーキとはハラミのステーキのことです。アルゼンチンのチミチュリソースに1時間漬けて表裏をそれぞれ30秒焼いた後、さらにオーブンで3、4分焼きます。10分寝かせて味を染み込ませた後に、最後にもう1回焼いて熱を入れます。中までしっかりと味が入っていて、ハラミも十分に柔らかくなっています。

ビターチョコレートとカルーアマルキーズ ”ドゥルセ・デ・レチェ”とキャロットケーキアイスクリーム マスカルポーネ

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ビターなチョコレートの中に、南米でお馴染みのキャラメルであるドゥルセ・デ・レチェを加えてマイルドに仕上げています。コーヒーパウダーを散らしたメレンゲのチップをトッピングし、キャロットケーキを現代風に解釈したアイスクリームを添えています。

他には見掛けられない試み

石川氏は「精肉工場へ自ら赴くなど、とにかく肉への愛情が深い」とフェデリコ料理長を評しますが、肉ブームである日本において、熟成肉や塊肉、希少部位が人気となっていながらも、牛1頭をまるごと大切に味わおうという試みが他に見掛けられないのは、もしかすると肉への愛情が足りないからなのかも知れません。

「日本中のお肉好きの方に体験していただきたい」と石川氏が話すように、肉が一過性のブームに終わらないためにも、肉好きであればあるほど、ノーズ トゥ テールを通して牛の大切さを改めて実感することをお勧めします。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

参考

レストラン図鑑にもニューヨークグリルが紹介されていますので、ご参考にどうぞ。