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イノベーションするシェフズ ライブ キッチン、日本を味わい尽くせるのか?

東龍グルメジャーナリスト
シェフズ ライブ キッチン(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ)

早くもリニューアル

ここ3年の間に新しくオープンしたブッフェレストランの中で最も注目を浴びているブッフェレストランといえば、ホテル インターコンチネンタル 東京ベイのシェフズ ライブ キッチンでしょう。

ブッフェ台の仕切りや段差をほとんどなくしてライブ感を極限まで追求したり、最初にファーストディッシュをサーブしてブッフェの概念を変えたり、「ヘルシー」「ビューティー」「フレッシュ」を忠実に体現したコンセプトレストランであったりと、このどれもが革新的でした。

シェフズ ライブ キッチン
シェフズ ライブ キッチン

こういったブッフェレストランのデザインだけではなく、体に優しい「アンチエイジング野菜しゃぶしゃぶ」や「薬膳おでん」、竹塩・チリ・ローズマリー・レモンの4種の塩でいただくスタンディングカットスタイルの「骨付き国産牛のローストビーフ」、イギリスのパンケーキ「クランペット」といった、多くの新しいメニューも創り出しています。

このシェフズ ライブ キッチンが5日間の改装を経て2015年2月28日にリニューアルオープンするのです。

オープンからまだ3年を経過したばかりであり、食べログの口コミ・評価OZmallの口コミでは評価が高く、売上も好調であるのに、一体どうしてなのでしょうか?

リニューアルでもリノベーションでもなく、イノベーション

金時草麺とからし菜のサラダ、五郎島金時の春色サラダ、天然真鯛のカルパッチョなど
金時草麺とからし菜のサラダ、五郎島金時の春色サラダ、天然真鯛のカルパッチョなど

取締役 営業本部長 前原孝行氏は「お客さまは常に新しいものを求めている。今たくさんのお客さまに来ていただいているからといって、現状でよいとは全く思っていない」と切り出し、それを受けて、ホテル支配人 清水尚之氏は「オープンから3年しか経過していないが、常に最高の状態でお客さまをお迎えしたいので改修することにした」と真摯に話します。

リニューアルの内容を尋ねると、前原氏は「今回行うのは、リニューアルでもリノベーションでもなく、イノベーション。ソフトクリームフリーザーを2台導入し、ヘルシーで楽しいカラフルテイスト パフェを新しくご提供するなど、今以上にブッフェを革新していく」と力強く答えます。

鴨の治児部煮
鴨の治児部煮

他にも新しい試みはあり、シェフズ ライブ キッチン マネージャー 西村隆広氏は「これまではドリンクコーナーだけ静かだった。しかし、炭酸水を使って目の前でカスマイズドリンクを作るなど、ドリンクもライブ感を追求する」と述べます。

新しくオープンするだけでも注目されるものですが、営業本部 営業企画・個人営業部 担当部長 奥園恵美子氏は「改修工事するだけでも大変だが、より多くの方に関心を持っていただくため、オープンにあわせて『日本を味わおう第2弾 北陸』フェアも行う。新しいシェフズ ライブ キッチンと人気のフェアを同時に楽しめるので、是非お越しいただきたい」と案内します。

北陸へ食材や料理を探しに

ガス海老と加賀蓮根のガーリック炒め バジルソース
ガス海老と加賀蓮根のガーリック炒め バジルソース

「日本を味わおう」フェアは、第1弾 瀬戸内に続いて第2弾 北陸についても、私がご協力していますが、改めて話を伺ってみましょう。

今回、フェアの地域が北陸となった経緯について、平成24年度調理師関係功労者厚生労働大臣表彰を受賞したこともある総料理長 岸義明氏は「北陸はもともとよい食材が多い。加えて、北陸新幹線が2015年3月14日に開通することで、北陸がより注目される」と述べ、これを受けて前原氏は「実は北海道や京都も候補に上がった。しかし、最も注目される北陸を選んだ」とマーケティングの観点を重要視したとします。

岸氏は「40年も付き合いのある料理人が石川県にいるので、案内してもらうことができた」と振り返り、奥園氏は「1月14日、15日に北陸へ行った。2日目は朝5時から活動するなど、魚市場や農園には時間が許す限り訪れた」と精力的に視察したとします。

天然鯛のかぶら蒸し 和風ソース
天然鯛のかぶら蒸し 和風ソース

続けて「東京へ帰ってきてから、佃料理長が4日後に全てのメニューを完成させ、25日には商材用の撮影を行った」とスピード感があったとし、岸氏は「佃料理長には、料理を創造する力とフットワークの軽さ、フランス料理からアジア料理に渡る幅広い知見がある。北陸へ訪れる前から、頭の中にはメニューのイメージがほぼでき上がっていたのだろう」と見解を示します。

前原氏が「第1弾の瀬戸内フェアは大変反響をいただいただけに、第2弾の北陸も成功させなければならない」と真摯に話し、奥園氏は「今回は岸総料理長、佃料理長、私に加えて、購買部の担当者も一緒に行った」と補足します。この理由に関しては「どんなに素晴らしいメニューを考案したとしても、食材を安定して確保できなければ、お客さまをがっかりさせてしまう。そのようなことが絶対に起こらないようにするため、今回からは視察の段階から安定に仕入れることができるかどうかを購買部に判断してもらうことにした」と説明します。

加賀伝統 柿の葉寿司
加賀伝統 柿の葉寿司

様々なホテルやレストランで数多くのフェアが行われていますが、コストがかかってしまうので通常、マーケティング部はおろか、料飲部の担当社も現地へ赴いて視察することは、それほど多くありません。そういう状況にあって、視察の段階から購買部も同行するということは、フェアに懸ける意気込みが違うと言えるでしょう。

野菜と魚が中心

北陸フェアでは以下のメニューが提供されます。

  • コラーゲンたっぷり 牛ほほ肉と紅芯大根と春キャベツのクリームスープ
  • 加賀野菜 金時草麺 とからし菜のサラダ
  • 五郎島金時とブロッコリーの春色サラダ
  • 天然真鯛のカルパッチョ 春の庭園風桜のジュレを散らして
  • 紅芯大根とワサビ菜 ジャコのサラダ
  • 白海老とカブの桜マリネ
  • バイ貝のガーリックワイン蒸し
  • 能登人参のブランマンジェ
  • 鴨の治部煮
  • ガス海老と加賀蓮根のガーリック炒め バジルソース
  • 鰆のソテー 酸味の効いた白ワインソース
  • 天然鯛のかぶら蒸し 和風ソース
  • 加賀伝統 柿の葉寿司(ブリ、鯛、サーモン、海老)
  • 握り寿司(天然ブリ、天然真鯛)
  • 天ぷら(百万石椎茸、金時草、加賀蓮根)
  • 金沢芋堀り藤五郎芋蕎麦
  • 北陸産ホウボウのブイヤベース
  • 能登にんじんのクレームブリュレ
  • 加賀棒茶のゼリー
  • 桜プリン
  • 桜のシュークリーム
  • 能登ワインのゼリー

多くのメニューがありますが、特徴は何でしょうか。

北陸産ホウボウのブイヤベース
北陸産ホウボウのブイヤベース

奥園氏は「加賀野菜を中心にして20品目以上の北陸の食材を使っている」とし、岸氏は「野菜はもちろん、魚も驚くほどよい。本物のおいしさをお客さまに味わっていただきたいので、コストを度外視して天然の真鯛やホウボウを使うことにした」と熱を込めます。

料理長 佃勇氏は「北陸の食材はどれも素晴らしいので、どのようにして引き出すかに尽力した。例えば、能登人参は非常に甘くてニンジンの香りも穏やかなのでブラマンジェにし、金時草は独特の風味を生かしながらも遊び心を加えたかったので、そばに練り込んだ。五郎島金時は色と甘味を表現するために、サラダやアイスクリームに仕上げた」と目を輝かせて話します。

続けて「文化を大切にしたいので、金沢を代表する郷土料理である鴨の治部煮や、加賀の伝統である柿の葉寿司もご提供する。珍しいものでは、石川県ではよく食べられている、見た目はよくないが食味のよいガスエビを使う。定番となっているファーストディッシュのパイ包みスープでは、加賀野菜をふんだんに使うだけではなく、春ならではのサプライズも盛り込んでいるので楽しみにしていただきたい」と、佃氏の話が尽きることはありません。

日本を味わうということ

能登人参のクレームブリュレ、五郎島金時のアイスクリームなど
能登人参のクレームブリュレ、五郎島金時のアイスクリームなど

岸氏は「北陸の食材の質が高いのは、海産物や農産物でも規格がしっかりとしているから。例えば、能登野菜を代表する『のとてまり』は、笠の直径が8センチ以上、厚みが3センチ以上、巻き込みが1センチ以上でなくてはならない。折り返し部分の規格も決まっている」と説明します。のとてまりは、2013年末の初競りで1個4000円というマツタケを超える値を付けた、シイタケの高級ブランドです。

加賀野菜については、以下の記述があります。

城下町金沢には、藩政時代から受け継がれた季節感に富んだ特産野菜、加賀野菜が数多く引き継がれています。

しかし、生産者が増産性や耐病性を追い求め、一方、消費者も見た目の綺麗さや調理の簡便さを第一に考える時代風潮とともに、加賀野菜が市民から忘れられ、生産農家も減少の一途を辿ってきました。

こうした背景のもと、郷土の先人が育んできた、私たちの財産とも言うべき加賀野菜を受け継ぎ、後世に伝えながら、生産振興を消費拡大を図りたい、その熱い思いにより、各関係機関が協力して金沢市農産物ブランド協会を設立し、加賀野菜の生産振興や消費拡大に努めています。

出典:“いいね金沢”加賀野菜

このように「郷土の先人が育んできた、私たちの財産とも言うべき加賀野菜を受け継ぎ、後世に伝え」ようとする心は、「日本を味わおう」フェアのコンセプトである「日本全国の食材や料理、文化を大切にしたい」という前原氏や奥園氏の想いと同じであり、さらには、必ずや現地に赴いて自らの目と舌と心で味わおうとする佃氏のその地域に対する敬虔な祈りに通じます。

日本を味わい尽くせるのか、シェフズ ライブ キッチンがイノベーションを果たす2月28日からに注目しましょう。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

参考

すみれ草201にもシェフズ ライブ キッチンを詳しく紹介していますので、ご参考にどうぞ。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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