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6月は将棋界がアツい!竜王&名人を迎え撃つ、藤井聡太二冠のダブルタイトル戦が開幕

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
渡辺名人と豊島竜王を相手にダブルタイトル戦を戦う藤井聡太二冠(写真:森田直樹/アフロ)

 6日、第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負が開幕する。

 藤井聡太棋聖(18)の初防衛戦としても注目されるシリーズ。

 挑戦者は渡辺明名人(37)だ。

渡辺明名人、リターンマッチへ!藤井聡太棋聖との頂上決戦はどうなるか?

調子落ちか?

 昨年の第91期ヒューリック杯棋聖戦では藤井二冠が初めてタイトル戦に登場、そして初タイトル獲得ということでおおいに盛り上がった。

 切られ役になってしまった渡辺名人だが、今期はトーナメントを勝ち抜いて挑戦者として名乗りを上げた。

 先ほどの記事は挑戦者決定戦の行われた翌日、5月1日にあげたものだ。

 そこから約1ヶ月経って状況が少し変わっている。

 渡辺名人はこの1ヶ月で名人戦七番勝負において防衛を果たした。

 開幕局で逆転負けを喫したものの、そこからは安定感抜群の内容で4連勝。見事な防衛劇だった。

 調子は明らかに上向きで、名人戦を5局で終わらせたことでこの五番勝負に全力を尽くせる態勢が整った。

 一方、藤井二冠は調子が落ちているように感じる。

 5月1日時点では公式戦19連勝中で向かうところ敵無しの状態だった。

 しかし5月6日、深浦康市九段(49)に敗れて連勝がストップ。

 6月3日に行われた稲葉陽八段(32)との順位戦B級1組2回戦での対局にも敗れて、順位戦における連勝も22でストップした。

 5月13日に行われた三浦弘行九段(47)との順位戦B級1組1回戦での対局。

 5月31日に行われた永瀬拓矢王座(28)との叡王戦での対局。

 いずれも苦戦を強いられて、終盤での逆転による勝利だった。

 藤井二冠にしては内容が安定しておらず、連勝中にみせた鬼のような強さが影を潜めている。

棋聖戦の展望

記事中の画像作成:筆者
記事中の画像作成:筆者

 では、五番勝負はどうなるか。

 渡辺名人としては調子を上げているうちに白星を重ねたい。

 一方、藤井二冠としては、まず最初の2戦を1勝1敗で乗り切るのが大切だ。

 そうしているうちに調子も戻ってくるだろう。

 戦型は相居飛車で間違いない。

 ここ最近は互いに矢倉と相掛かりを軸に据えている。

 前期もそうだったが、今期も矢倉が中心になると予想する。

 対戦表をご覧いただくとわかるように、大体2週間に1局のペースで進んでいく。

 準備を整えて向かうには非常にいいペースだ。

 名人戦七番勝負を終え、他棋戦の対局も少ない渡辺名人にとっては、今回の五番勝負に全てをぶつける態勢が整っている。

 前期も渾身の研究をぶつけてきたが、今期は更に精度を上げた研究を見せてくれるに違いない。

 一方の藤井二冠は少し違う。後述するように6月29・30日に第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負が開幕するため、第3局以降は2つのタイトル戦を並行して戦うことになる。

 さらには、準決勝まで勝ち残っている叡王戦本戦や竜王戦決勝トーナメント、そして順位戦B級1組も消化する必要がある。

 この五番勝負にだけ力を注ぐとはいかない。

 こうして考えると、現時点では渡辺名人がやや有利なようにもみえるが、第1局の内容と結果をみないとわからないところもある。

 まずは明日(6日)、ご注目いただきたい。

王位戦の展望

 前述のように、6月29・30日に第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負が開幕する。こちらは藤井二冠が豊島将之竜王(31)の挑戦を受ける。

 対戦成績で1勝6敗と大きく負け越しているだけに、藤井二冠にとって最大の難敵といっても過言ではない。

 こちらは第3局まで早いペースで消化され、そこから約1ヶ月間隔が空くやや変則的な日程だ。

 オリンピック開催予定期間にはタイトル戦を入れないようにしているのだろう。

 過密日程の藤井二冠にとって、間隔が空くのは助かる反面、その前後が厳しいスケジュールになるので良し悪しといえる。

 藤井二冠としては、棋聖戦とのダブルタイトル戦が続く第3局までに一つでも白星をあげたい。

 逆に豊島竜王としては、藤井二冠の調子が出る前に3連勝してしまうのが理想だ。

 歴代の王者たちも初めての防衛戦では苦戦を強いられている。

 あの羽生善治九段(50)でさえ、初めての防衛戦では1勝4敗という成績でタイトルを失っている。

 今回は竜王と名人というトップオブトップの二人がまとめて藤井二冠に襲いかかる。

 常識的に考えて、藤井二冠にとって苦しい戦いが予想される。

 しかし藤井二冠が常識を覆すシーンを何度も見てきたのもまた事実である。

 今回のダブルタイトル戦は後世に語り継がれるであろう戦いだ。

 将棋界の熱い夏が幕を開ける。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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