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王位戦、挑戦者決定戦は豊島竜王ー羽生九段戦。勝ったほうが藤井聡太王位と初めてのタイトル戦!

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
藤井聡太王位とタイトル戦で戦うのは豊島竜王か羽生九段か(写真:森田直樹/アフロ)

 7日、第62期お~いお茶杯王位戦挑戦者決定リーグ最終一斉対局が行われた。

 紅組リーグでは4勝1敗の豊島将之竜王(31)、白組リーグでは4勝1敗の羽生善治九段(50)が優勝を決め、挑戦者決定戦に進出した。

 藤井聡太王位(18)への挑戦権をかけた一戦は、24日(月)に行われる。

王位リーグ

 両リーグとも混戦で迎えた最終戦。

 豊島竜王は片上大輔七段(39)に快勝し、一番に勝ち名乗りをあげた。

 豊島竜王が紅組で優勝を争っていたのは、同じ3勝1敗で並ぶ前王位の木村一基九段(47)と澤田真吾七段(29)だった。

 木村九段は名人挑戦中の斎藤慎太郎八段(28)の巧みな攻めを受け止めきれず。

 澤田七段は佐藤天彦九段(33)の強靭な受けを突破できなかった。

 優勝を争う二人が敗れたため、豊島竜王のリーグ優勝が決まった。

 一方、前王位の木村九段はリーグ規定により陥落(澤田七段が残留)。一つの白星と黒星で明暗分かれる結果となった。

 白組は永瀬拓矢王座(28)、羽生九段、佐々木大地五段(25)の3名が3勝1敗で並んでいた。

 羽生九段と佐々木五段は直接対決。後手番の羽生九段は角換わりで流行の兆しがある△3三金型を採用。定跡から外れた力戦となったが、その中で羽生九段が地力を見せつけて制勝した。

 永瀬王座は近藤誠也七段(24)に完敗を喫した。相掛かりから激しい戦いとなったが、永瀬王座の研究に誤算があったか苦しいワカレに。中盤以降は近藤七段の正確な指しまわしの前にチャンスがなかった。

 永瀬王座の敗戦により、羽生九段のリーグ優勝が決まった。

 一方、永瀬王座はリーグ規定により陥落(佐々木五段が残留)。こちらのリーグも一つの白星と黒星で明暗分かれる結果となった。

挑戦者決定戦

 挑戦者決定戦は豊島竜王と羽生九段によって争われる。

 この二人の対戦といえば、昨秋の第33期竜王戦七番勝負が思い出される。

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 4勝1敗で豊島竜王が防衛したシリーズだったが、見応えたっぷりで記憶に残る戦いが多い。特に第3局は将棋AI全盛の現代将棋に課題を突きつける一局だった。

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 対戦成績は豊島竜王の22勝、羽生九段の18勝。

 上記の竜王戦第3局から豊島竜王が5連勝中だ。

 最後の対戦は、昨年12月に行われたA級順位戦でのもの。ABEMAで表示される勝率では優勢の場面で羽生九段が投了して話題になった一局である。

 対局は24日(月)に行われる。

 藤井王位への挑戦権をつかむのはどちらか。

藤井二冠のダブルタイトル戦

 藤井二冠は6月から始まる第92期ヒューリック杯棋聖戦で渡辺明名人(38)との対戦が決まっている。初めての防衛戦に最大の難敵を迎える。

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 そして例年7月に開幕する第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負でも難敵を迎えることになる。

 藤井二冠は豊島竜王になかなか勝てず、7戦目にしてようやく初勝利をあげた。特に厳しい相手といえよう。

 もし豊島竜王が挑戦者となれば、藤井二冠は竜王と名人を相手に2つのタイトル戦を並行して戦うことになる。これは将棋界の長い歴史を紐解いてもなかなかない。

 羽生九段が挑戦となれば、タイトル獲得通算100期がかかるシリーズとなる。

 もし羽生九段が藤井王位を破って100期達成となれば、物語でも出来すぎのストーリーだ。

 羽生九段は藤井二冠とのタイトル戦を熱望しているとインタビューで語っている。

 豊島竜王も藤井二冠との長い戦いを見据えているとインタビューで語っている。

 どちらも挑戦へ向けて並々ならぬ思いをぶつけてくるだろう。

 第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負、第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負、ともに注目度の高いシリーズとなることは間違いない。

 ファンにとって見逃せない夏の戦いがもうすぐ幕を開ける。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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