お笑い第一世代の欽ちゃんが、今もネットで活動を続ける理由に学ぶ真の芸人魂

欽ちゃんといえば「テレビ」というイメージですが。(写真:アフロ)

欽ちゃんこと萩本欽一さんが、「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」で突然「今回で私、この番組終わり」と降板宣言をして、お茶の間やテレビ界を驚かせてから、もう3ヶ月が経過しています。

参考:萩本欽一、仮装大賞で「今回で私、この番組終わり」

欽ちゃんといえば「テレビ」という印象が強い方からすると、これで欽ちゃんもいよいよ引退か、と思われた方も少なくないかもしれません。

でも実は、緊急事態宣言下の現在も、欽ちゃんが元気に毎週出演している「番組」があることをご存じでしょうか。

欽ちゃんが毎週クラブハウスに降臨中

その出演場所は、テレビでもなくラジオでもなく、なんとネットの音声チャットサービスであるクラブハウス。

初回は、東京をはじめとした4都府県に3回目の緊急事態宣言が発令された4月23日金曜日の21時。

『1970年代の伝説のラジオ番組「欽ちゃんのドンといってみよう!」を復活させてみよう!』というタイトルで、日本テレビの電波少年のプロデューサーとしてもお馴染みの土屋さんとともに開催されたのです。

クラブハウスといえば、2回目の緊急事態宣言下の1月末に日本でも異様なほどの熱気で盛り上がりを見せたものの、緊急事態宣言があけるとともに一気に波がひき、過疎化したという指摘すら増えているサービスです。

筆者自身は今もクラブハウスを毎日楽しんでいる人間ではあるのですが、視聴率100%男とまで呼ばれたこともあるテレビのシンボル的な存在である欽ちゃんが、本当にクラブハウスに来てくれるの?と、驚きながら参加。

キャプチャ画像を見て頂ければ分かるように、出演者3人のうち、土屋さんはイラストですが、欽ちゃんと放送作家の鶴間政行さんは画像が設定されておらず「鶴政」「萩欽」という文字のままというシュールな絵面で1時間ほどの番組が進行されました。

正直個人的には、てっきりこれは実験的な取り組みで1回きりかなと思っていたのですが、その後も毎週当然のようにクラブハウスの番組は継続。

5月14日の4回目の開催では、「欽ちゃん質問に答えちゃいます?」というタイトルで、ついに一般人の質問を取る回が開催され、多数の一般人と欽ちゃんの掛け合いがクラブハウスで展開されることになりました。

なにしろ、欽ちゃんといえば「素人いじり」の元祖ともいえる功労者。

参考:80歳になった“欽ちゃん” 「素人いじり」「タレント発掘」…バラエティをテレビの王様にした功労者の“隠された想い”

どんな質問も軽妙な切り返しで笑いに変えてくれていましたし、途中からは次々に質問者が質問ではなく、過去の欽ちゃんの行為に対して感謝を伝えるという展開になったりと、80歳とは思えないエネルギーを参加者に振りまいてくれてました。

なぜ伝説のコメディアンがクラブハウスなのか

そんな中、筆者がどうしても気になってしまったのが、伝説のコメディアンとも呼ばれるテレビの象徴的な存在である欽ちゃんが、なんでまた落ち目と叩かれがちなクラブハウスで毎週こうやって私たちの相手をしてくれているのかという疑問。

勇気を出してクラブハウスの挙手機能で手を挙げたら、ありがたいことに土屋さんが見つけて機会をくれたので、思い切って欽ちゃんに直接「欽ちゃんにとってこのクラブハウスは何なんですか?土屋さんとの飲み会ですか?ラジオですか?」と聞いてみました。

で、じっと私の質問を聞いてくれていた欽ちゃんが話し始めたのが、驚きの事実。

「いや、仮装大賞で終わりと言っちゃったし、もう大人しくしてようと思ってたんだけど。

この人(土屋さん)がさ、インターネットというのがあるから、まぁちょっとこっち来てとか言うんだよ。

で、なんだこのクラブハウスって、顔は見えないけど大丈夫かって言っても、ラジオみたいなもんだからとか何とか言ってさ。

なんだかよく分からないんだけど、つれてこられちゃってるのよ。

これは何なんだって聞かれても、私が教えて欲しいよ〜。」

で、一呼吸あけて

「でもね、これ、楽しいよね〜。」

っておっしゃるわけです。

(出典:筆者撮影)
(出典:筆者撮影)

クラブハウスの画面上、土屋さんの笑顔のイラストと、「鶴政」「萩欽」という文字だけが並んでいるシュールな画面なわけですが。

その時、私の脳裏にはハッキリと、往年の電波少年の企画よろしく、欽ちゃんが目隠しをされて土屋さんに手を引っ張られて、「なんだなんだ」と言いながらクラブハウスに連れてこられている絵面が浮かんでしまいました。

私自身にとっての欽ちゃんとは、私が子どもの頃に夢中になってみていた「欽ちゃんのどこまでやるの!」のお父さんであり、全日本仮装大賞の名物司会者であって、文字通りテレビ界のレジェンドであって、遠い雲の上の存在です。

ただ、欽ちゃん自身は今でも、プロデューサーの土屋さんのオファーを断らずに引き受ける、現役の「芸人」なんだな、と感じた瞬間でした。

なにしろ、土屋さんと欽ちゃんは、30年来の付き合いで、密着ドキュメンタリー映画まで作ってしまった間柄。

参考:欽ちゃん、主演映画公開も「見てない」「充実感もない」  観客には“感想禁止”も…

土屋さんも欽ちゃんのことを良く師匠と書かれていますし、自分のサイトで欽ちゃんの近況報告をするような関係のようですから、この信頼関係があるからこそのクラブハウス出演ということなんでしょう。

参考:未来を作る その6|T_producer

実は欽ちゃんはYouTubeも開始済み

最近、「お笑い第七世代」というフレーズが注目されていますが、その流れで欽ちゃんは「お笑い第一世代」と定義されているそうです。

参考:お笑い第一世代・いかりや長介と萩本欽一の凄み

明石家さんまさんが、テレビに出る人間にとって敵はYouTubeと発言されるなど、一般的には上の世代の芸人やテレビ関係者の方ほど、インターネットはテレビの敵と考えている人は少なくないと聞きます。

参考:さんま「今、敵はYouTube!」マツコ「3分に1回爆笑取ればいいの!!」

当然、欽ちゃんのような第一世代、レジェンドの世代にとって、インターネットに無理に取り組む必要はないといえるでしょう。

ただ、欽ちゃんは土屋さんが企画されている電波少年Wを通じて、YouTubeライブにも出演。

ダイジェストやアーカイブもYouTubeで見られるという大盤振る舞いの状態になっています。

参考:「電波少年W」は、テレビとネットの最後の壁を崩すことができるか

さらに、実は欽ちゃんは、萩本企画でYouTubeチャンネルも開設済み。

昨年のコロナ禍において実施していたZoomでの公開オーディションの様子をYouTubeに公開しているのです。

おそらく欽ちゃんの中では、テレビなのかネットなのかとか、クラブハウスが盛り上がってるとか過疎ってるとか、YouTubeの視聴回数とか購読者数とか、そんなことはどうでもよくて、今も昔もお客さんにどう楽しんでもらうか、どう笑顔になってもらうかというのが、一番大事なことなのでしょう。

これが本当の芸人魂というものなのかもしれないな、と改めて振り返っています。

コロナ禍でも諦めずに模索した結果の選択

ちなみに5月14日のクラブハウスの回では、そんな欽ちゃんですら、参加者から「コロナをどう笑いに変えますか?」という質問に「変えられないねぇ」と悲しそうに回答されていたのがとても印象的でもありました。

土屋さんに聞いたところによると、本当はクラブハウスの番組も、もともとはYouTubeライブで実施する予定だったのが、YouTubeだとどうしてもスタッフが欽ちゃんの家にセッティングに入る必要があり、コロナ感染リスクをゼロにできないのが課題だったのだとか。

クラブハウスであれば、iPad1台で欽ちゃんが1人ではじめられるというのが、クラブハウス選択の背景だったそうです。

ただ、その判断により私たちは、欽ちゃんがもたらしてくれる「笑い」を引き続きクラブハウスで気軽に楽しむことができ、伝説のコメディアンに素人が直接声で質問する機会をえることができたとも言えます。

欽ちゃんのようにクラブハウスやYouTubeなど、新しいものに積極的に取り組むレジェンドが増えてくれると、芸能界だけでなく、政治も企業も、もっと楽しくデジタル活用が進んだりするのではないかなと感じます。

欽ちゃんの真の芸人魂が、今後も多くの人を笑顔にしてくれるのを楽しみにしたいと思います。