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【全日本大学女子駅伝】名城大・米田監督が語る新コースの駅伝。22年ぶりアンカー逆転劇が起きる可能性も

寺田辰朗陸上競技ライター
名城大の1区を2年連続で任される米澤奈々香。前回に続いて区間賞獲得なるか(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 10月29日に仙台市で行われる全日本大学女子駅伝(弘進ゴムアスリートパーク発着6区間38.0km)の区間エントリーが、28日に決定した。今年からコースが変更され4、5区以外の4区間は新しいコースとなった。7連勝を狙う名城大と、初優勝を狙う日体大&大東大が3強と言われている。名城大の米田勝朗監督が大会前日、開会式後のカコミ取材においてレース展開と、自チームの選手への期待を語ってくれた。

優勝候補3チームの区間エントリー選手一覧
優勝候補3チームの区間エントリー選手一覧

1、2区の“仙台出身コンビ”でトップに立ちたい名城大

「駅伝は総合力ですので、全ての区間で取りこぼしなくきっちり走ることが重要です。その中でも流れを作るという部分で、1区の米澤奈々香(2年。仙台育英高出身)と2区の力丸楓(1年。仙台一高出身)が、2人とも仙台の地で育った選手ですので、地の利を生かして良い流れを作って欲しいですね」

 6連勝を振り返ると名城大がトップに立ち、その後もトップを譲らなかった展開に持ち込んだ区間は以下の通りである。

17年:5区(フィニッシュでの2位との差=35秒)

18年:3区(  〃  =34秒)

19年:2区(  〃  =2分31秒)

20年:2区(  〃  =2分51秒)

21年:1区(  〃  =2分36秒)

22年:1区(  〃  =2分31秒)

 17年と18年で2位との差が小さい。トップに立ったのが17年は5区と終盤だったし、18年大会は3区でトップに立ったが4区以降で立命大と大東大に、交互に追い上げられもしている(交互だったので抜かれなかった)。

 19年は2区でトップに立ったが3区で大東大(鈴木優花。現第一生命グループ)に迫られ、4区の区間賞で引き離した。20年は2区でトップに立ったが、引き離したのは3区の区間賞の走りでだった。

 そしてここ2年間は1区区間賞でトップに立ち、両大会とも5区以外の5区間で区間賞を独占して圧勝した。

 これは前半区間の選手だけが強かったわけではなく、後半区間にも強い選手がいるから成立した。米田監督のいう「駅伝は総合力」という部分だが、前半のスピード区間に強い選手がいるから成立することでもある。今年は“仙台コンビ”が名城大の前半を担う。

 3区の石松愛朱加(2年)は前回2区区間賞選手、4区の薮谷奈瑠(1年)は一昨年、昨年と2年連続インターハイ(高校生の全国大会)決勝に進出した期待の選手。だが、昨年まで中盤区間を走ってきた山本有真(現積水化学、23年世界陸上ブダペスト5000m代表)ら先輩たちに比べると、力が落ちるのはやむを得ない。

 米田監督は「日体大が一緒に競る展開もある」と見ている。

 それでも「5区の原田紗希(2年)に、日体大と大東大より先にタスキを渡して欲しい」と4区までの選手に期待する。そのためにはやはり、1~2区の“仙台コンビ”で先行したい、というのが本音だろう。

名城大5区の原田、日体大6区の柳井がトラックのタイム以上の走りをする可能性も

 米田監督は「5区がポントになる」とも明言した。

「5区の原田が山﨑(りさ・日体大3年)選手に対してどこまで粘れるか。日体大と大東大に追いつかれても、付いて行く展開に持ち込みたいですね。距離が9.2kmあってアップダウンもあるので、トラックの記録(原田よりも山﨑と大東大のワンジルがかなり速い)だけでは読めない部分もあります。かなり調子が良いので、原田の走りに期待したいですね」

 そして今大会は「昨年までのように独走になるとは思えません。場合によっては5区終了時に2番、3番にいることもある。必ずアンカー勝負になる」と、米田監督は予想している。

 その想定のもと、アンカーの6区に谷本七星(3年)を起用した。過去2大会連続4区区間賞を、ともに区間新記録で取ったロードに強い選手である。

「谷本には絶対的な信頼があります。日体大に対しても、大東大に対しても、30秒負けていても逆転はできるかな、と期待しています」

 もちろん、大東大と日体大もアンカー勝負で簡単に白旗を揚げるつもりはない。大東大は1年生ながら日本インカレ5000m3位の野田真理耶である。5000mのベスト記録は谷本の方が勝るが、スピード能力という点では野田が勝るかもしれない。

 日体大のアンカーは柳井桜子(2年)で5000mの自己記録は16分06秒82と2人に劣る。だが大阪薫英女高時代はインターハイ1500mで入賞(8位)経験がある。短い距離のスピードでは負けていない。

「高校時代から駅伝ではアンカーを経験していて、本人は将来的にマラソンをやりたいと言って、距離も自分で練習しています。もちろん5区終了時の差によりますが、逃げ切ってくれるんじゃないかと思います」(日体大・佐藤洋平監督)

 アンカーでのトップ交替は、今大会では01年大会が最後である(筑波大が優勝)。米田監督は次のようにも話した。

「今までは前半で抜け出す展開が多く、独走になるケースが多くありました。アンカーはそれほど重要視されていませんでしたね。しかし(3区が短くなり6区の距離が延びた)新しいコースになって、そういう展開にはならないと思います」

 22年ぶりのアンカーでの逆転劇。新コースとなる全日本大学女子駅伝が、新たな様相を示し始める可能性が高まっている。

陸上競技ライター

陸上競技専門のフリーライター。陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の“深い”情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことが多い。地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。座右の銘は「この一球は絶対無二の一球なり」。同じ取材機会は二度とない、と自身を戒めるが、ユーモアを忘れないことが取材の集中力につながるとも考えている。

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