「アベノマスク」の業者とのやり取りの記録は存在しないと言い放つこの国の政府

「アベノマスク」と政府の通知書

「アベノマスク」を業者と契約する際にそのやり取りを示した記録などを政府が存在しないと説明していることがわかった。記録の開示を求めた大学教授に回答したものだ。マスクを税金を使って配った是非はともかく、多額の税金を使った政策の記録を残していないと答える政府の姿勢には唖然とする。

「アベノマスク」は新型コロナの感染拡大からマスク不足が深刻化した2020年に4月に、政府が布マスクを各世帯や学校に配布したもの。466億円もの予算が計上されたものの、随意契約による業者の選定や価格決定の不透明さが問題になった。

このため、神戸学院大学の上脇博之教授が、契約の過程を残した記録の開示を政府に求めていた。マスクは各家庭向けを厚生労働省、学校向けを文部科学省が担ったことから上脇教授は両省に開示を求めたが、両省とも不開示とした。

厚生労働省の不開示通知書
厚生労働省の不開示通知書

不開示の理由について厚生労働省は「事務処理上作成又は取得した事実はなく、実際に保有しないため」とし、文部科学省は「文書を保有していないため」としている。つまり存在しないとの答えだ。

行政文書の扱いを定めた公文書管理法は次の様に定めている。

行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない」(第4条)

「次に掲げる事項」とは「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」や「複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯」が含まれる。

「アベノマスク」は、2020年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として行われている。つまり法律の条文にある閣議決定を経ていることから、その経緯を残すべき事案と考えられる。また、マスクの購入に関しては厚生労働省と文部科学省との間で調整が行われており、「複数の行政機関による申し合わせ」の経緯が記録されていなければならない。

上脇教授は「実際には面談や電話、メールなどでの業者側とのやりとりを記した文書を作成し、保管しているのではないか。有るにも関わらず、表に出したくない業者とのやりとりを隠している懸念が有る」と話しており、不開示の決定を不服とする訴えを2月22日に大阪地裁に起こすことにしている。

上脇教授は、これとは別に「アベノマスク」の契約の内容についても開示を求める訴えを同じく大阪地裁に起こしている。これについては単価などが黒塗りとなって一部が開示されているが、黒塗りし忘れた文書から、1枚あたり143円と見られることがわかるなど、政府の対応に混乱が見られる。

公文書管理法の第1条には、次の様に書かれている。

「国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」。

もし業者との間の記録が無いとしたら、政府は公文書に関する「基本的事項」さえ守っていないということにならないだろうか?「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務」についてはどうだろうか?政府の対応には次から次に疑問が浮かぶ。

上脇教授の訴訟で代理人を務める谷真介弁護士も、記録は有るのに出したくないのではないかと政府の対応を見ており、「過去のずさんな公文書の管理などの問題から、重要な政策について後で国民が検証できるよう、2011年に公文書管理法が制定された。税金の支出に関する契約締結経過に関する文書は、同法で作成・保存すべき典型的な文書だ」と指摘した上で次の様に話した。

「今回、(記録が)必ず存在するのに存在しないとしているのも問題だが、本当に存在しないならこの国の公文書管理は極めて杜撰ということになり、そのようなことを堂々という国の姿勢も問題だ」。