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立憲のメディア資金提供問題 立憲の説明と実際の支払い時期は異なるとメディア側が証言

立岩陽一郎InFact編集長

インターネット番組を配信するメディアChoose Life Projectが立憲民主党から約1500万円の資金提供を受けていた問題で、メディアの代表が取材に応じ、「立憲民主党の言っている支払い時期と私たちが資金を受け取った時期は異なる」と証言した。立憲民主党は「説明は終了」としているが、あらためて説明責任が求められる事態だ。

この問題は公共メディアを掲げて報道番組を制作・配信していたChoose Life Project(CLP)が立憲民主党(立憲)から約1500万円の資金提供を受けていたもの。当時幹事長だった福山哲郎議員の事務所は2020年8月から10月にかけて4回にわけて1500万円余を支払っていたことを認めている。

代表の2人が証言

これについてCLP共同代表の佐治洋氏と工藤剛史氏が1月16日に私の取材に応じた。

2人は、「支払いについて報道で(立憲からの支払いの)時期を初めて知った」と述べた上で、「立憲民主党の言っている支払い時期と私たちが資金を受け取った時期は異なる」と証言した。

2人によると、立憲から資金を得た時期は2020年3月から8月の番組までで、毎月、支払われていたという。なぜ立憲の説明が8月から10月の4回となっているのかについて2人とも、「その理由は)わからない」話した。

また、支払いは立憲から直接行われておらず、最初の番組で配信の支援を受けた制作会社を通じて支払われたと話した。この制作会社は立憲と取引の有る都内の会社であることがこれまでの取材でわかっているが、2人は「会社との守秘義務があり、自分たちから会社名を公表することはできない」と述べた。

福山議員「いいじゃない」で始まった支援

立憲から支援を受ける経緯については次の様に証言した。

2019年12月に最初の番組を制作・配信したが出費が大きく、手弁当では難しいとなり様々なところに支援を求めていた。しかし、支援を受けられない状況が続き、そんな時、福山議員に会う機会が有り『フェイクニュースに対抗するメディアを作りたい』との思いを話すと、『いいじゃない』と言われ、後日、『立憲として支援します』との連絡を受けた

「資金で立憲の業務を行った事は無いのか?」との問いに、「一切無い。支援提供が始まって福山議員とこの件でやり取りをしたこともない」と話した。

立憲の説明への疑問

CLPの今回の証言によって、立憲の説明に疑問が生じる事態となっている。

先ず、支援の時期に関する疑問だ。立憲の説明は政治資金収支報告書に基づいているが、これが事実で無い可能性が出てくる。

また、CLPは制作会社から資金を得たとしている。立憲は支援に際して大手広告代理店の博報堂へ支払いをしており、これについて博報堂も立憲から受け取った資金を制作会社に渡したことを認めている。なぜこのような複雑な資金の流れだったのか?

加えて、CLPは資金提供は完全な支援だったとしている。これで政治資金収支報告書に記載されている「企画広報活動費」と言えるのか?取引の実態が有ったと言えるのか?

もう1つは、支払いが立憲の正式な決定だったのではないかという点だ。CLPが福山議員の側から「立憲として支援します」との連絡を受けたのは、福山議員から「いいじゃない」との好感触を得てから数日後だったという。これは、支払いが幹事長だった福山議員の独断ではなく、立憲の組織としての決定だったことを示唆するものではないのだろうか?

公共メディアとしての認識

CLPは立憲から支援を得ていた2020年7月に、市民に支えられる公共メディアとの方針を打ち出し、それを機会に立憲からの支援を止めることを決める。この点は2人とも、「公共メディアとしては政党の支援を受けてはいけない」との認識だったと話した。

そして7月に始めたクラウドファインディングによって3100万円余を得ている。これについて2人は以下の様に話した。

「クラウドファンディングは当初800万円を予定していたが、それさえ集まるとは思っていなかった。予想を超える規模で資金が集まる状況になったが、その金額を直ぐに受け取れるわけではなく、それもあって、8月分の番組制作までは立憲の支援を得ることとした」

2人は、「(立憲との間に)契約書が有ったわけでもなく、福山議員とのやり取りはフワッとした軽い感じだった。当初はCLPの方向性も定まっていなかったこともあり、特定の政党から支援を受けてはいけないとの意識が希薄になっていた」と当時の状況を振り返り、「支援して頂いた皆さんに大変申し訳ないことをした」と謝罪の言葉を繰り返した。

「終了」からはほど遠い立憲の説明

立憲がCLPに支出したとしたのは以下の4回だ。

  • 2020年 8月7日 4,475,390円
  • 2020年 9月4日 5、637,090円
  • 2020年10月9日 2,511,420円
  • 2020年10月9日 2,384,370円

何れも「動画制作費または企画広報動費」として支払ったとの説明だ。西村智奈美幹事長も1月12日の定例会見で、同じ調査結果を発表している。

立憲の泉健太代表は、1月14日の定例会見で、「我が党としての説明を終了している」と発言している。しかしCLPの説明を聞く限り、立憲の説明は「終了」からはほど遠い。

CLPは近く第三者による調査委員会を立ち上げて経緯をまとめて公表するとしている。私が編集長を務めるInFactはCLPと2021年に2度、共同で番組を制作している。関わった責任から逃げることなく、今後も取材を続けていく。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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