Yahoo!ニュース

WHOが「ワクチン・ナショナリズム」に懸念示す

立岩陽一郎InFact編集長
会見するWHOのテドロス事務局長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

主要国がワクチン開発でしのぎを削る中、WHOのテドロス事務局長は各国がワクチンの争奪戦を行う「ワクチン・ナショナリズム」に懸念を示している。

8月18日の会見でテドロス・アダノム事務局長は、「新しい診断法、医薬品、ワクチンが提供される際に、各国が過去と同じことを繰り返さないようにすることが重要だ」として、新たなワクチンを一部の先進国が独占する「ワクチン・ナショナリズム」が起きることに懸念を示した。そして、WHOが各国政府や民間企業などとともにワクチン開発の新たな取り組みとして始めたCOVAXファシリティーへの各国の参加をあらためて呼び掛けた。

このCOVAXファシリティーは、WHOがワクチンと予防接種のための国際的な枠組みであるGaviなどと連携して取り組んでいるもので参加各国が共同で新型ワクチンを購入するもの。それによって、ワクチンを全ての国に公平に行きわたらせることを目的としている。日本を含め、ワクチン開発で先行するアメリカ、中国、ロシアなども入っていない。

会見の中で、COVAXで、現在、200のワクチン候補が検討され、そのうちの26から28が最終的な臨床試験に進む可能性が有ることが明らかにされた。

また、この日の会見では、武漢で行われたプールライブで多くの人がマスクをつけずに三密になっている写真が出回ったことについて記者から質問が出た。

これについて新型コロナ担当のマリア・バンケルコフ氏は、「自分自身でリスク管理をして、リスクについて理解してほしい。しかし人々を非難したり、失敗を取り上げることはすべきでない」と答え、個別の事例をあげつらうことに慎重であるべきとの考えを強調した。

この記事の作成にはFIJの伊藤友登リサーチャーが関わっています。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

立岩陽一郎の最近の記事