新型コロナ クルーズ船から羽田空港発で帰国した香港人8人に感染が確認されていた
クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号への対応では、日本政府は、感染の疑いの無い人を2月19日以降で順次下船させ、多くはそのまま公共交通機関で帰宅させた。ところが、同じように感染の疑いが無いとして香港に帰国した8人がその後、感染していたことがわかった。では、同じように下船した日本人はどうなのか?時間を少し戻して、クルーズ船の対応を考えたい。
ダイヤモンド・プリンセス号の状況
ダイヤモンド・プリンセス号における新型コロナウイルスの状況については、国立感染症研究所がまとめている。
それによると、クルーズ船は乗客2666人、乗員1045人の、合わせて3711人を乗せて、2月3日に横浜港に帰港した。その前の1月25日に香港で下船した乗客の感染が明らかになったことから、その接岸と同時に船内での検疫が開始された。そして体調の悪化が見られる乗客や高齢者からPCR検査が実施され、その結果、国籍を問わず、陽性だった人、つまり感染者は下船して病院で治療、その他は原則、下船を認めず船内で経過観察する措置をとった。
これについては専門家から、船内での対応は困難との指摘が出ていたが、政府は感染者や感染が疑われた人以外の乗客について2月19日までの下船を認めない方針を示し、アメリカ政府のチャーター便を利用したアメリカ人の乗客乗員300人余りをのぞく乗客乗員は、この2月19日以降に下船している。
香港政府のデータベース
このうち、香港人については、チャーター便などで213人が帰国している。何れも船内の検査では陰性で、感染者との濃厚接触の無かった人たちだ。この帰国者について香港政庁は14日間の隔離措置をとっている。
実は香港は感染者について政府がデータベースを作成して公表している。香港大学の鍛冶本正人准教授の協力を得てそのデータを調べたところ、3月29日現在で583人が感染者として登録されている。その中に、ダイヤモンド・プリンセス号から下船してチャーター便で帰国した男性3人、女性5人が含まれていた。つまり新型コロナウイルスの感染者だったというわけだ。年齢は16歳から68歳までと幅広い。21歳の女性もいる。他は50代が4人、60代が2人。このうち、68歳の男性は、帰国したその日に発熱と咳の症状を訴えていたという。
また、この8人とは別の2人からウイルスの抗体が確認されたということで、病院では、以前に感染していたものの回復した疑いが有ると見ている。
これについて厚生労働省に問うと、「その情報は把握している」とのみ話した。
約1000人の日本人はそのまま公共交通機関を利用
ここで問題なのは、同じ状況で下船した日本人乗客の状態だ。船内の検査で陰性で、且つ濃厚接触の無かったとして2月19日以降に下船した人は1011人。そのほとんどが日本人と見られている。その約1000人は、香港などが実施した下船後の14日間の隔離措置はとられておらず、その多くは下船後に公共交通機関で帰宅したと見られている。
香港人の213人のうちの8人で感染者が出たことを考えると、この約1000人から感染者が出ないとは断言できない。勿論、政府は、乗客のその後をフォローしているとしている。しかし、クルーズ船からの帰宅の途中でどのような接触が有ったかまで追うことは困難だろう。
実は、冒頭の国立感染症研究所の報告書には、気になる記述がある。
「一部の乗員は、船の運航を維持するために、検疫下においても限定的ではあるものの勤務を継続した。このため、検疫期間中乗員は乗客ほど完全に隔離はされていなかった」
3月28日、安倍総理は感染者のうち感染経路が追えないケースが増えていることに懸念を示した。しかし、クルーズ船の対策から見ても、そうなることは予測できたかとも思う。
現状への対策が最優先なことは勿論だが、今後の為にもクルーズ船への対策が正しかったのか、検証する必要が有る。