参院選ファクトチェック 維新代表「大阪では教育の無償化を実行している」は「不正確」

日本維新の会の選挙公報 (撮影:立岩)

NPOニュースのタネは、今月21日に投開票が行われる参議院選挙について各党党首の発言や報道、ネット情報などについてファクトチェックを行っている。この中で日本維新の会の松井一郎代表の、「大阪では増税なしに教育の無償化を実現した」は、実際には大阪の複数の自治体で幼児教育の無償化は行われておらず、事実と異なる点が有ることがわかった。ファクトチェックの評価=レーティングは「不正確」とした。(立岩陽一郎)

ファクトチェックの対象言説

今回、ファクトチェックを行ったのは、日本維新の会の松井一郎代表の「大阪では増税なしに教育の無償化を実現した」とする諸々の発言。

「今、総理から教育無償化の財源として消費税を使うという話が有りましたが、8年前から実質教育無償化を大阪では実行してきています。徹底的な行財政改革で財源を生み出し、これはできるわけですから、今消費税を上げる必要が僕は無いと思います」(NHK日曜討論7月7日放送)

「政府は(消費税の)増税分を教育無償化の財源にするとしているが、大阪では増税なしに私立高校の授業料や幼稚園、保育園の保育料無償化を実現した」(読売新聞7月8日)

調査結果=レーティング

「不正確」

説明

松井代表の発言は、消費税の増税に反対する立場でのものだ。与党の掲げる消費税の増税は少子高齢化対策を主として行われるもので、仮に少子化対策の目玉である子育て支援が消費税の増税無くして実現するのであれば、与党の主張は説得力を欠くものとなる。それだけに重要な発言だ。

松井代表は、対象言説で例に上げたNHKと読売新聞以外のメディアでも同様な発言をしている。では、大阪府下の全ての自治体で松井代表が発言するような状況になっているのだろうか?義務教育である小中を除いた高校の無償化と幼稚園、保育園の状況について調べてみた。

先ず、高校の無償化だ。大阪府に問い合わせたところ、松井代表の主張通り、公立、私学ともに無償化を実施していた。ただ、公立高校は国の政策であり、2010年度に当時の民主党政権が実施した制度がその始まりだった。私学についても、国の授業料支援補助があり、それを補う形で大阪府独自の支援をする形をとっていた。松井代表の主張とは微妙に異なるが、教育の無償化を実施している点は高校については間違ってはいないと言える。

では、4歳児、5歳児の教育の無償化についてはどうだろうか?主な市について担当者に問い合わせてみた。

政令指定都市である大阪市と堺市を調べた。松井代表は大阪市の市長だ。ところが、その大阪市では、幼稚園と保育園とで対応が違った。幼稚園については無償化していたが、保育園については半額負担となっていた。堺市では、幼稚園、保育園ともに、第二子以降については無償化を実施しているが、第一子、つまり最初の子供については無償化は実施していなかった。

他の市を見ると、特別に無償化を行っていない市は確認できただけで12市にのぼった。東大阪市、八尾市、松原市、和泉市、高石市、富田林市、藤井寺市、大阪狭山市、岸和田市、貝塚市、大東市、四条畷市は無償化を実施していなかった。 このうち富田林市は保護者の状況次第では負担軽減や無償化も有るということで、泉佐野市は、基本的に無償化をしていないものの、保護者の状況次第では第三子が無償になることもあるという説明だった。

限定的に無償化を実施している市もあった。羽曳野市、阪南市と泉大津市は第二子を半額補助、第三子以降を無償としていた。池田市は第三子以降については半額補助、第四子以降については無償としていた。高槻市と柏原市は5歳児のみ、幼稚園は無償、保育については50%から60%の補助を実施していた。 枚方市、交野市、寝屋川市は所得の状況に応じて無償化を実施するとともに、第二子以降に補助を行ったり、第三子以降を無償化にするなどしていた。

これらの自治体の担当者は、独自の財源で完全無償化を実現するのは不可能との見解を示した。

勿論、完全無償化に近い市もあった。箕面市、豊中市、茨木市、守口市、河内長野市、門真市だ。守口市は、保育は完全無償化で、幼稚園については年額で30万8000円を支援しており、その金額を超える部分についてのみ保護者負担となっていた。河内長野市と門真市は、三歳児以上は無償化としていた。箕面市、豊中市、茨木市は所得制限は有るとのことだった。

取材した何れの自治体も10月から政府が始める子育て支援策が始まれば、国の支援によって完全な無償化を実施すると話した。

松井代表の発言は、あたかも大阪全体が教育の無償化を実現しているかのような印象を与えるものとなっている。しかしファクトチェックの結果から見て松井代表の発言には事実と異なる部分が見られ、「不正確」と指摘せざるを得ない。

これについてNPOニュースのタネは日本維新の会にコメントを求めたが、期日とした7月12日18時を過ぎてもコメントは届いていない。今後でも良いので考え方を示してほしい。もっとも、コメントを出すことより重要なのは、党首として発言を正確に行うことだ。そちらを優先するのならそれで良いと考える。

解説

このファクトチェックはFIJのガイドラインに基づいたもので、調査結果を示すレーティングはFIJの基準を用いている。ファクトチェックは政策そのものを検証するものではない。だから、このファクトチェックは日本維新の会の政策を判断するものではない。あくまでも、松井代表の発言の中で事実として語られている部分について検証したものだ。

また、今回は松井代表について記事化しているが、当然、他の党首についてもファクトチェックは実施している。調査結果がまとまれば、それを順次発表する予定だ。

言うまでもなく、消費税増税はこの選挙の最大の争点であり、議論の分かれるところだ。NPOニュースのタネとしては、消費税の増税に賛成しているわけでも反対しているわけでもない。我々は政策を判断するメディアではなく、事実を検証するメディアだ。これまでもそれに徹してきたし、今後もそれに徹していきたい。

このファクトチェックに学生や社会人が参加してくれている。同志社大学の宮崎文歌さん(2年)と神戸学院大学の藤井郁也さん(2年)、近畿大学の大塚萌恵さん(2年)、熊本大学大学院の堀田龍玄さん(2年)などだ。他に匿名を条件に社会人数人が参加してくれている。それぞれ各市の調査を担ってくれた。しかし、この記事の責任の全てはNPOニュースのタネ編集長の立岩陽一郎にある。

NPOニュースのタネでは一般の方のファクトチェックへの参加を募集している。是非、この機会にファクトチェックを体験して頂きたい。

参考情報

この記事の根拠となっている参考情報はNPOニュースのタネのサイトに掲載しています。そちらをご覧ください。

NPOニュースのタネ