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大阪府知事選で偽ツイートの拡散に歯止めかかるが、被害にあった候補の発言も正確さ欠ける

立岩陽一郎InFact編集長
偽情報に悪用された3月21日放送の関西テレビの「報道ランナー」

大阪府知事選挙で虚偽のツイートが拡散された問題は、ニュースのタネが報じたことで状況が変わってきている。報道後、発信元と見られるアノニアマスのツイッターで当該ツイートが削除された他、拡散させていた大阪維新の会の関係者もリツイートを削除するなど、偽情報の拡散に歯止めがかかり始めている。一方、被害にあった候補者も、そのきっかけとなった発言が正確さを欠いていたことがわかった。(ニュースのタネ)

この問題は、関西テレビの番組「報道ランナー」で、大阪府知事選挙立候補した吉村洋文候補と小西禎一候補のやりとりが虚偽の情報をともなってツイートされたもので、小西候補が背を向けた画像と共に「吉村候補にデマを指摘され、ふてくされる小西候補」とされてネット上に拡散された。

拡散されたツイッター
拡散されたツイッター

大阪維新の会の松井一郎代表もリツイートしていたが、ニュースのタネの取材を受けてリツイートを削除。その事実も含めて、ニュースのタネで、「大阪府知事選でフェイクニュース 維新の会代表が拡散に加担も指摘を受けて削除」として報じた。詳細はこの記事を見て頂きたい。

他の維新の会関係者もリツイートをしていたが、ニュースのタネの報道後に、それらを削除していることが確認された。

また虚偽の情報を最初にツイートしたと見られるアノニマスポストのツイッター(@anonymous201504)でも削除されていたことがわかった。ただし、アノニマスポストのホームページ上では当該記事は削除されていない(3月26日18時現在)。

このツイート騒動について被害にあった小西候補の事務所を取材すると、「テレビの討論会の全景画面を普通に見ていれば、小西候補は司会者に向けてパネルの数値などを見ながら説明していることは明らかです。それを、全景画面を示さずに一部のみを切り取って悪罵を投げつけるのは、悪意が感じられます」とコメントした。

ただ、小西候補の側にも問題が無かったわけではない。ツイートの、「吉村候補にデマを指摘され」の「デマ」とは、大阪府知事選挙の争点である大阪都構想について小西候補が、初期投資として1500億円かかると発言した部分を指している。吉村候補が「初期投資は500億円であり1500億円には15年分のランニングコストが含まれている」と指摘したことが、「デマを指摘されふてくされる」との虚偽の内容につながっている。

これについてもニュースのタネで小西候補の認識を質したところ、小西候補の事務所は、「初期コストも含め1500億円と認識しています。このことは、吉村候補の説明や、テレビ局のパネルでも表示されているとおりです」と回答した。つまり、小西候補が「1500億円」と語ったものは、初期投資と15年分のランニングコストを含むとの認識ということだ。

 参考記事 「大阪府知事選でフェイクニュース 維新の会代表が拡散に加担も指摘を受けて削除

そうすると、小西候補の番組での発言も正確でなかったことになる。小西候補は明らかに「初期投資」と言った上で1500億円と言っているからだ。初期投資が1500億円なのか500億円なのかは、けして小さな話ではない。これはファクトチェックでは、「誤り」と判定されるもので、その点は小西候補も注意すべきだ。

勿論、そうだからと言って、虚偽のツイートをすることは許されるものではない。

今回の選挙でニュースのタネは市民の参加も得てファクトチェックを行っており、ネット上の情報とともに、候補者の発言についてもチェックしていく。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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