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トランプ米大統領がツィートで金正恩委員長を評価

立岩陽一郎InFact編集長
イラク駐留の米軍を訪問した際のトランプ大統領夫妻(写真:ロイター/アフロ)

アメリカのトランプ大統領は現地時間の1月1日、北朝鮮の金正恩委員長の年頭の辞を高く評価するツィートを発信。

PBS(米公共放送)によると、金正恩委員長は核の製造も実験もせず、他に譲り渡すこともしないと言った。いつでもトランプ大統領と会う用意が有るとも。金委員長は北朝鮮に凄い経済的なポテンシャルの有ることをよく理解している。私も金委員長に会うのが楽しみだ

ツィートの発信についてはトランプ大統領の支持者からも「大統領らしくない」と否定的な意見が出ているが、今年もトランプ大統領はツィートを多用する考えの様だ。

ツィートについて「管理する」と明言し「ホワイトハウスに秩序を持ち込む」と話していたケリー首席補佐官も解任されることになり、益々、ツィートは抑制の効かないものになりそうだ。

CNNは、こうしたトランプ大統領の対応について、「トランプ大統領は公的な記者会見に対して明らかに否定的に見ており、ツィートや立ち話をそれにかわるものにしようとしている」と指摘。その狙いについて、「自分に都合の悪い質問をさせないことにある」と見ている。また、こうした大統領の対応について歴代の大統領報道官からも「極めて憂慮すべき事態」との声が出ていると紹介している。

トランプ大統領のツィートの中には事実でない内容も多く含まれているが、トランプ大統領はこれまで訂正に応じる姿勢を見せていない。

例えば、2018年の暮にも次の様にツィートしている。

オバマ大統領夫妻はワシントンDCの自宅の周囲に10フィートの高さの塀をはり巡らせている。これは彼らの安全のために必要であり私もこの考えに同意する。アメリカも同じものが必要だ。少し大きめだが

10フィートとは、3メートル以上だ。

ツィートはメキシコとの国境に壁を作るための予算を民主党が認めないことを揶揄したものだ。

しかし、実際にはオバマ大統領夫妻がワシントンDCに購入した家の周囲には3メートルもの高さの壁は存在しない。大統領の任期が終わった時に購入した家がそのまま使われているだけだ。ワシントン・ポスト紙が付近の住民に取材しても、工事をしたという事実は確認されていない。

この大統領の事実を無視したツィートに2019年もアメリカはかき乱されそうだ。日本は毅然として欲しいが、残念ながらそうはなりそうもない。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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