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トランプ米大統領弾劾求める声強まる ロシアに最高機密提供の疑いが浮上

立岩陽一郎InFact編集長
FBI長官の解任を受けて連日紙面にはトランプ大統領の弾劾を求める声が

自身の周辺も捜査の対象としていたFBIの長官を解任したトランプ米大統領。その直後に行われたロシアとの会談の席で、同盟国から与えられた最高機密に属する情報を提供していた疑惑が浮上した。トランプ大統領の弾劾を求める声は強まりそうだ。

(参考記事:FBI長官の解任で トランプ米大統領への批判強まる)

FBI長官を解任したことで批判を浴びているトランプ大統領だが、その直後に行われたホワイトハウスでのロシアのラブロフ外相との会談で、ISイスラム国に関する最高機密に属する情報を提供していたワシントンポスト紙が15日、特報で伝えた。https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2017/05/15/trumps-extreme-hubris-just-made-his-russia-problem-much-worse/?tid=pm_politics_pop&utm_term=.819c3590b4da

情報は同盟国からもたらされたもので、ロシアへの情報提供について同意を得ていないという。また、他の同盟国とも共有しないことを前提に提供されている機密中の機密で、イスラム国への取り組みで異なる政策をとっているロシア政府と共有されることで今後のイスラム国対策が大きな打撃を受ける可能性が有るという

与党・共和党の重鎮、マケイン上院議員が「事実を確認する必要があるが、事実であれば問題だ」と憂慮を示すなど、与党の間にも衝撃が走っている。

国務省で長くキャリア外交官を務めた米国人は、今回の件について何も知らないとしつつ次の様に話した。

「憂慮していたことが起きたというのが率直なところだ。問題の情報とは、恐らくモサド(イスラエルの情報機関)からもたらされたものだろう。イスラエル政府は以前からトランプ政権のロシアへの接近に懸念を示しており、仮に情報がロシアに筒抜けになると考えたらもう情報は来ない。米国の安全保障上、モサドの情報は極めて重要で、仮にそうなれば極めて大きな問題となる

トランプ大統領は5月9日、ロシア政府が去年の大統領選挙に関与した問題を捜査していたFBIのジェームズ・コミー長官を解任しており、捜査妨害にあたるとの指摘を受けている。ハーバード大学ロースクールのローレンス・トライブ教授が、「議会がトランプ大統領を捜査妨害によって弾劾する時期が来た」とワシントンポスト紙に寄稿するなど、専門家から弾劾を求める声が出始めている。

(参考記事:FBI長官解任でトランプ米大統領の姿が辞任した大統領とダブリ始めた)

米政府機関の取材経験の長い公共放送NPRのデスクは次の様に話した。

「正直、ワシントンポストの報道が誤報であって欲しいという気持ちだ。トランプ大統領はFBI長官の任命を急ぐ考えを示しているが、そんなことでは大統領への信用は回復しないだろう。弾劾を求める声は強まるだろう」

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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