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米トランプ政権は機能しているのか? 省庁幹部の大量空席続く

立岩陽一郎InFact編集長
大統領令に署名して会見するトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

4月29日に就任から100日を迎える米トランプ大統領だが、各省庁の幹部の多くが空席という異例な事態が続いている。こうした状況に、国務、国防のトップが苛立ちを見せることもあり、関係国の間でも懸念の声が拡がっている。

米国のトランプ政権は就任100日を前に自然保護区の指定の見直しを求める大統領令を発したり、法人税や所得税の引き下げを軸とする税制改革案を発表するなどして実績を示すのに懸命だ。しかし、政府中枢の官僚機構は十分に機能しているとは言えない状態が続いている。ワシントンポスト紙が26日、報じた。

それによると、トランプ大統領は政治任用の幹部についてまだ26人しか着任させておらず、530人の重要ポストが空席のままだ。

この26人に既に指名を終えて議会の承認を待っている段階の37人を足しても、オバマ大統領の就任1年目のこの時期と比べると3分の1程度にしかならない。その前のブッシュ大統領、クリントン大統領と比べても少ない。

政治任用ポストは長官と官僚機構との橋渡しを行う幹部のポストだけに、あまりに遅い手続きに対して、各省庁の長官の中には苛立ちを見せる人も出てきているという。このうち内務省のライアン・ゼィンケ長官は公に不満を口にしているが、北朝鮮問題や中東問題で極めて重要な局面を迎えている国務省のレックス・ティラーソン長官や国防総省のジェームズ・マティス長官も、公には見せないものの、ワシントンポスト紙の取材では、不満を示す場面が見られるという。

トランプ政権の政治任用については、過去にトランプ大統領について否定的な見解を示した人物を排除するなどしているため、人選が思うように進まないという問題も指摘されている。マティス国防長官が選んだ部下も、過去の発言が問題視されて指名されなかったという。中には、一度任命されたにも関わらず、その後に過去の発言が発覚して辞職させられたケースもある。

(参考記事:米トランプ政権で幹部の登用に忠誠心求める まるで「独裁国家」との批判も~トランプの米国とどう向き合うか? (32))

公共放送NPRで長く省庁取材を担当してきた記者は次の様に話している。

「既にこの人事の遅れが北朝鮮政策をめぐるホワイトハウスと国務省、国防総省の対応の微妙なずれなどに出ているとの指摘も有る。特に、国務省が厳しい状況で、各国の大使の任命も進んでいないし、職業外交官とトップのティラーソン長官との間をつなぐ幹部がいないということだ。北朝鮮に対しては外交によって圧力をかけるとしているが、それを担う国務省が健全に機能していなければ難しい。関係国の外交団も懸念を示している」

トランプ大統領は各国に赴任していた全ての米国大使を交代させるとして、大統領就任前の離任を求める異例の対応をとっている。このため、大使が任命されていない国では大使不在の状態も続いている。

(参考記事:トランプ政権下で噂される国務省の機能不全 日米関係にも影響の懸念(39))

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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