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米トランプ政権が内部告発サイト、ウィキリークスの訴追を検討

立岩陽一郎InFact編集長
内部告発サイト「ウィキリークス」のウエブサイト

米政府の外交機密文書や情報機関の文書などを大量に公開してきた内部告発サイト、ウィキリークスについて米トランプ政権は訴追の可能性について本格的に検討を始めた模様だ。ワシントンポスト紙が21日伝えた。

それによると、米司法省は、ウィキリークスが米政府の外交文書と軍事機密情報を自身のサイトで公表した案件について創設者で代表のジュリアン・アサンジ氏らメンバーを訴追できないか検討を始めたという。

ウィキリークスは2010年、入手した米政府の外交、国防に関する機密文書を自前のサイトで公表。この際、ウィキ―リークスにデータを渡したとされるチェルシー・マニング元米陸軍上等兵が訴追され35年の禁固刑を言い渡されたが、オバマ大統領の恩赦で減刑されている。

しかしオバマ政権は、得られたデータを公表したウィキ―リークスについては訴追しない方針を示していた。これについて、オバマ政権で司法省の担当者だった人物はワシントンポスト紙の取材に対して、データを公表したウィキリークスを訴追した場合、政府の情報を入手して報道する新聞やテレビといった報道機関をも訴追の対象にすることに道を開くことになるからだと話している

仮に、トランプ政権が訴追に踏み切った場合、米国の憲法が保障している報道の自由を侵害する行為との批判を受けることは必至だ。しかし、ワシントンポスト紙は、マニング元上等兵が機密データを持ち出す際に、アサンジ氏がその手法を伝授したことが確認されているとして、これを証拠に米司法省がアサンジ氏及びウィキリークスをジャーナリスト、或いは報道機関ではなく、マイング元上等兵の共犯として訴追できないか検討している可能性があるとしている。

(参考記事:ささやかれ始めた「ロシアの狙いはトランプ大統領のゴルバチョフ化」~トランプの米国とどう向き合うか? (45))

アサンジ氏は現在、英国のエクアドル大使館で亡命、保護されている状態が続いている。アサンジ氏は、ワシントンポスト紙への最近の寄稿で「(ウィキリークスの活動は)社会が必要とする内容を伝えているもので、ワシントンポスト紙やニューヨークタイムズ紙の行為と違わない」と書いている。また、アサンジ氏の弁護士は、「ウィキリークスは報道機関であり、社会の公益に資する真実を発信しているものだ」として、訴追は米国の憲法違反にあたると主張している。

トランプ大統領はウィキリークスについて状況次第で異なる意見を述べている。大統領選挙の最中にウィキリークスが民主党本部の電子メールを公表した際には、「私はウィキリークスが大好きだ」と発言している。一方、ウィキリークスが今年3月、CIAが一般家庭にある携帯電話やテレビを使ったスパイ活動を行っているとする文書を公表した際は、「(暴露されたのは)高度に機密性の高い情報だ」と述べて強い不快感を示している。

※マニング元上等兵について当初「懲役刑」としていましたが、米国に「懲役刑」はないとの指摘があり、「禁固刑」に修正しています。オバマ大統領の恩赦で今年の5月には刑務所を出ることになります。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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