Yahoo!ニュース

米トランプ政権内で激しい権力争い 米メディアが一斉に報道

立岩陽一郎InFact編集長
バノン主席戦略官(左)とプリーバス首席補佐官(右)(写真:ロイター/アフロ)

従来の主張を覆してシリアへの空爆に踏み切ったトランプ政権。その政権内で圧倒的な存在感を示していたステファン・バノン主席戦略官が国家安全保障会議のメンバーから外されたことで、トランプ政権内で勢力争いが起きていると米メディアが一斉に報じ始めた。

トランプ大統領が掲げた「米国第一主義」や「脱グローバリズム」といった政策の思想的な支柱であり推進者とされるステファン・バノン主席戦略官。その発言力は政権発足直後から圧倒的で、トランプ大統領の最も信頼する側近として知られていた。

そのバノン戦略官が国家安全保障会議のメンバーを外されたことが、米国のメディアで様々な憶測を呼んでいる。ワシントンポスト紙は、ホワイトハウス内の関係者の話として、「左遷人事だ」と報じた。

ニューヨークタイムズ紙は、バノン戦略官のこの人事の背景には、ハーバート・マクマスター国家安全保障担当補佐官や軍関係者からの強い進言が有ったと伝え、社説で「大統領はマクマスター補佐官が仕事をしやすいようにすべき」と指摘している。

また、主要メディアは一斉に、ホワイトハウス内で、バノン戦略官のグループと娘婿で上級顧問を務めるジャレッド・クシュナー氏のグループの間で政策上の対立が生じていると報じ始めている。そして、クシュナー氏のグループに主導権が移りつつあるとの見方を伝えている。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (5)~米トランプ次期政権に娘婿入りで「利益相反」も問題に )

こうした中、ホワイトハウスの内部情報に強いとされるオンライン・メディア「アクシオス」は、トランプ大統領がバノン戦略官と、そのバノン戦略官と歩調を合わせてきたラインス・プリーバス首席補佐官について交代を検討していると報じた。「アクシオス」は最終的にトランプ大統領がどう判断するかは未定だとしているが、後任候補の名前もあげている。

トランプ政権はまだ政権発足から100日もたたないが、早くも政権内の権力争いがメディアで報じられる状況となっている。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

立岩陽一郎の最近の記事