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「記者」のみなさん、どうですか? 米国の高校で学生新聞が校長の学歴詐称を暴く 校長が辞任

立岩陽一郎InFact編集長
校長の学歴詐称を暴いたピッツバーグ高校の学生新聞(オンライン)

米国の高校で、学生新聞が調査報道で自校の校長の学歴詐称を暴いた。校長は辞任。調査報道の盛んな米国でも高校生の頑張りに称賛の声があがっている。

自校の校長について調べたのは、カンザス州にあるピッツバーグ高校の学生新聞「ブースター・ルダックス紙」。地元紙が報じた内容によると、新たに校長として赴任したエイミー・ロバートソン氏について「ブースター・ルダックス紙」が取材。学歴に私立コーリンズ大学で修士号と博士号を取得と記していたので、その学歴に問題が無いか取材をしたという。

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その結果、このコーリンズ大学は、教育機関として機能しておらず卒業資格を買うことが可能だということがわかったという。

http://www.kansascity.com/news/local/article142682464.html

取材班はロバートソン氏に取材結果を示してコメントを要求。その直後、ロバートソン氏が地元の教育委員会に辞表を提出したという。

教育委員会は辞表を受理し、再度、校長職の選考を再開する考えを示した。今後、ロバートソン氏と競った応募者らへの打診を行うということで、委員会は、「我々が求めているのは最良の人材であり、それは生徒が求めているものでもある」と話している。

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デスクとして取材を指揮した3年生のトゥリナ・ポールさんは、地元紙の取材に対して、「学校のトップになる人なので、その人間の適性を調べた」と話している。

学生新聞を指導している顧問のエミリー・スミス氏は、「学生を誇りに思う。彼らは誰かを辞任に追い込むためにやったわけではなく、純粋に真実を追い求めるために頑張ったものだ」と話している。

調査報道とは、政府や公的機関が発表したり、或いは発表する予定の内容を先んじて報じるのではなく、取材者が独自に資料や関係者にあたるなどして事実を掘り起こす取材を指す。欧米では最も価値のある報道とされ、特に米国で盛んに行われている。

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InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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