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トランプ大統領の娘婿の能力に疑問 元部下執筆の記事を有力紙が掲載

立岩陽一郎InFact編集長
クシュナー氏の元部下の記事を掲載したワシントンポスト紙(2日付)

トランプ米大統領は娘婿でホワイトハウスの上級顧問に任命しているジャレッド・クシュナー氏を、米国刷新室と命名した新たな部署のトップにそえることを発表した。米国の経済界を代表する人々を集めて政府の効果的な役割を検討するという。しかし、かつての部下がクシュナー氏の能力に疑問をなげかける記事を書き、ワシントンポスト紙がが2日、掲載した。

執筆したのはクシュナー氏が所有していた週刊新聞「ニューヨーク・オブザーバー」で編集長を務めたエリザベス・スピアー氏。スピアー氏は、2012年までの1年半、クシュナー氏が取得したこの新聞の編集長として仕えた。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (5)~米トランプ次期政権に娘婿入りで「利益相反」も問題に )

スピアー氏は、クシュナー氏のエピソードとして、利益が出た時に、直ぐにスタッフの解雇を検討し始めたことを紹介している。それは、実入りを少しでも多くしようという目的だったということで、スピアー氏は、スタッフの解雇がコンテンツの質の低下を招き、それが広告収入に跳ね返るという事実を無視していたと書いている。

また、成長が見込めたために様々な提案をしたが、クシュナー氏は全く受け付けなかったという。これについてスピアー氏は、クシュナー氏は新聞をより良いものにするよりも、単に安価に運営したかっただけで、規模が利益にもたらす関係や、リスクをとることによって得られる見返りについて見識が無かったと厳しく批判している。

更にスピアー氏は、クシュナー氏が2007年にニューヨークのマンハッタンの五番街にある不動産を18億ドル、日本円約2000億円で購入して、それが故に多大な負債を抱えている点を指摘し、経営者としての判断力にも疑問を呈している。

そして、もしクシュナー氏の新たな役割が、政府を単に効率的にするだけでなく効果的に機能させるものであるとすると、コストの削減だけではだめで、クシュナー氏がその適任者とは思えないとしている。

ワシントンポスト紙は掲載にあたってホワイトハウスに取材を申し入れたが回答を得られなかったとしている。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (14)~米トランプ大統領が拒否する所得証明書の開示がなるか?)

クシュナー氏はトランプ大統領の長女、イバンカ氏の夫。上級戦略官のスティーブ・バノン氏とともに、トランプ大統領の信任が厚いとされる。トランプ大統領がホワイトハウスに新たに設置した米国刷新室(Office of American Innovation)の責任者を務めることが発表されている。ホワイトハウスはこの米国刷新室について、民間企業のノウハウを導入して政府の効果的な運営を実現することを目的としていると説明している。

(参考記事:トランプ大統領の「壁」建設のために災害対策、沿岸警備予算を大幅削減へ(43))

※クシュナー氏はホワイトハウス入りを前に、ニューヨーク・オブザーバーの株をクシュナー氏の一族が運営する財団に移しており、現在は所有者とはなっていない。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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