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トランプ大統領の元選対本部長にロシアから資金提供の疑惑が浮上

立岩陽一郎InFact編集長
トランプ大統領とプーチン大統領のそっくりさん(写真:REX FEATURES/アフロ)

トランプ大統領の陣営で選挙対策本部長を務めていた人物がロシアの起業家から多額の金銭を受け取っていた疑惑が浮上。米テレビが伝えた。ロシアとの関係で不透明さが際立つトランプ大統領の周辺で、個人名が特定された資金のやり取りが浮上したのは初めて。テレビは専門家の話として、「危険信号」と報じた。

疑惑が浮上したのはトランプ大統領の選挙対策本部長を務めたポール・ナマフォート氏。米NBCテレビが28日、特ダネとして報じた。

(参考記事:安倍総理帰国後のトランプ大統領を襲った側近のスキャンダル~トランプの米国とどう向き合うか? (29))

報道によると、マナフォート氏は、キプロスに10の会社と15の銀行口座を持ち、その口座にロシアのプーチン大統領に近いとされる資産家から日本円にして数億円規模の入金が有ったという。NBCテレビは具体的なロシア側の個人名や、この資金の具体的な流れについては報じていない。

キプロスの金融当局はマネーロンダリングの疑いが有ると見て捜査に乗り出しているが、口座は既に閉鎖されているという。当局は既に、資料を米財務当局に提供しているとNBCテレビに明かしたという。

(参考記事:米トランプ政権で幹部の登用に忠誠心求める まるで「独裁国家」との批判も~トランプの米国とどう向き合うか? (32))

マナフォート氏のスポークスマンはNBCテレビに対して書面で回答し、全ての口座はキプロスの顧客の指示によって設立されたもので、「正当なビジネスのためだ」と説明したという。

マナフォート氏は2016年8月に、ロシアの資産家のためのロビー活動が明らかになって選挙対策本部長を辞任している。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (3)~米トランプ新政権を揺るがすロシアとの関係)]

トランプ大統領の周辺をめぐっては、他にもロシアとの不透明な関係が指摘されている。

3月20日には、FBIのジェームズ・コミー長官が下院の情報機関に関する委員会で、FBIがトランプ大統領の周辺とロシアとの関係について捜査していることを明らかにしている

最重要課題に掲げていた医療保険制度の改革が頓挫した上、身内の共和党との間に亀裂が生じ始めているトランプ大統領。発足して2か月余りで、低支持率と与党との軋轢に加えて、周辺が捜査対象になるという異例の事態となっている。

(参考記事:ささやかれ始めた「ロシアの狙いはトランプ大統領のゴルバチョフ化」~トランプの米国とどう向き合うか? (45))

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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