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トランプ大統領が身内の共和党保守派を批判 党内で冷めた見方出始める

立岩陽一郎InFact編集長
週末をフロリダの別荘で家族と過ごすトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

最大の政策目標だった医療保険制度の見直し案が頓挫したトランプ大統領は、その原因として与党・共和党の保守派を批判し始めた。上下両院で多数派を握る共和党をまとめて政策実現を目指すとしていたトランプ政権だが、党内では早くも冷めた見方が広がっているという。

オバマ政権下で誕生した医療保険制度、通称「オバマケア」の廃止と新たな制度を目指した共和党案が撤回に追い込まれたのが24日。その2日後、トランプ大統領は、ツイートで共和党内の保守派のグループへの批判を始めた。

当初は法案作成にあたったライアン下院議長をねぎらうなどしており、批判めいたことは一切口にしていなかったが、その豹変ぶりが共和党関係者を驚かせている。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (20)~トランプ大統領が連邦最高裁判事を指名で、更に米国の分裂が深まるとの懸念も)

ワシントンポスト紙はこの攻撃を27日、「大統領が批判合戦に舵を切った」と報じ、この批判がもともと分裂傾向にあった共和党を更に分裂させる新たな動きになるとしている。

トランプ大統領は次の政策ターゲットとして、大型減税の導入を掲げている。減税は小さな政府を志向する共和党では支持を得られると考えられているが、大企業に対する減税と中流家庭に対する減税が柱となっているため、その細部の議論については党内でも意見が分かれることが予想されている。

ワシントンポスト紙は、「共和党の指導者らは、トランプ大統領の経歴ややり方に違和感を覚えつつも、トランプ政権は長年の懸案だった政策を実現するために党をまとめるチャンスだと思っていた。しかし、今、彼らはトランプ政権では何もできないことを悟った」と書いており、今後、トランプ大統領が共和党の全面的な支援を得られるかは微妙だとしている。

(参考記事:トランプ政権を痛烈に批判する米お笑い番組の気骨

公共放送NPRのベテラン記者は、「(法案を)撤回した当初は大人の対応を見せていたトランプ大統領だが、自身の能力の限界をマスコミで指摘されたことで、急きょ、批判を始めたようだ。しかし、民主党の協力も得られず、身内の共和党からも距離を置かれたら、大統領としてはかなり厳しい状況になるだろう。早くもレームダックなどという言葉が出ているが、就任2か月でこの言葉をささやかれる政権というのは、過去にはないだろう」と話している。

(参考記事:トランプ大統領の「前大統領による盗聴」の根拠に女性ジャーナリスト?)

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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