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政府の無駄遣い批判のトランプ大統領、自身の警護関係費は増額か

立岩陽一郎InFact編集長
フロリダから専用ヘリコプターで戻るトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

選挙戦中から政府の無駄遣いを厳しく批判してきたトランプ大統領。先に議会に示した予算案では、外交をはじめ多く分野で歳出削減を掲げている。しかし、一方で自身や家族の警護のための来年の予算は大幅に増やす方向だ。ワシントン・ポスト紙が独自に入手した予算案の内部資料を基に報じた。

ワシントン・ポスト紙によると、大統領、副大統領及びその家族の警備にあたるシークレット・サービスの予算を来年、現状より6000万ドル、日本円にして約70億円増額する方向だという。

(参考記事:トランプ大統領の「壁」建設のために災害対策、沿岸警備予算を大幅削減へ(43)))

記事は、「大統領の極めて特異な生活スタイルによって生じる旅費と警護費のため」と書いている。

それによると、増額の理由としては通常のホワイトハウスでの大統領の警護に加えて、ニューヨークのトランプ・タワーに住むファーストレディーのメラニア夫人と息子の警護、また、大統領が週末を家族で過ごすフロリダの別荘「マール・ア・ラーゴ」での警護費や旅費などが余分に必要となっているためだという。

ビジネスのために各国を回るトランプ大統領の長男、次男に対するシークレット・サービスの費用も増額の理由と考えられる。

(参考記事:トランプ大統領の取り締まり部隊「ICE」 その名の通り冷徹との指摘(34))

記事によると、ホワイトハウスの予算局はこの増額を認めなかったということで、このため、シークレット・サービスはこの増額分を他の予算から持ってくることになるという。記事の中で取材に応じたシークレット・サービスのOBは、「こんなに頻繁に大統領がフロリダに行くことは当初、予想されていなかったのだろう」と答えている。

また、ニューヨークのトランプ・タワーにもシークレット・サービス、国防総省が緊急時の対応とし部屋を確保する方向だということで、記事は、こうした一連の支出が結果的に大統領の私的なビジネスを利する形になっていると指摘している。

トランプ大統領は、今年10月から始まる会計年度の予算で国防と治安対策以外の多くの支出の削減を意図した予算案を議会に示している。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (23)~トランプ大統領の息子のビジネス出張で国費1000万円以上!)

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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