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トランプ大統領に新たに中国疑惑が浮上か

立岩陽一郎InFact編集長
聖パトリック・デイの祝賀式でアイルランド首相らと歓談するトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

ロシア政府との不透明な関わりが取り沙汰されるトランプ大統領の周辺。ところが、トランプ大統領自身の不動産取引に新たに中国との不透明な取引が浮上。調査報道を専門とする米国のNPOメディア「マザー・ジョーンズ」が報じた。

記事によると、今年2月21日、中国系米国人の女性実業家がニューヨークのトランプ・パーク・アベニューの1室4LDKを購入。現金で2180万ドルを売主のトランプ大統領の企業グループに支払っている。

購入したのは、アンジェラ・チェン氏。米国企業に中国でビジネスを行う際の支援などを行う会社の代表を務めている。記事によると、チェン氏が購入した部屋はトランプ大統領の企業グループが出している売り出し物件のリストには記載されていなかった。

(参考記事:米トランプ政権、北朝鮮との事実上の「協議」入りをドタキャン(36))

更に取材を進めると、チェン氏が中国芸術基金会の米国の責任者を務めていることもわかった。この団体は、表向きは中国と米国との文化芸術交流を目的としているものの、中国人民解放軍の対外工作機関とつながりが指摘されているという。

取材班が中国芸術基金会にチェン氏の不動産取得について問い合わせた後、この団体のウエブサイトがネット上から削除されたという。この一連の取引について、トランプ大統領の企業グループの側もチェン氏の側も取材に応じていない。

(参考記事:米トランプ政権、初軍事作戦でつまずき 戦死した米兵の父親が「バカげた作戦」と批判(38))

記事の中で、オバマ政権で大統領の倫理問題に関するチェックを行ってきたノーム・エイセン弁護士は、チェン氏、中国芸術基金会、中国の情報機関の関係を考えると、一連の不動産取引は深刻な疑問を呈するとしている。そして、こうした疑問は本来、「大統領の職にある人間が問われるべきものではない」と話す。

なぜチェン氏は公になっていない物件を購入できたのか。なぜ現金での支払いだったのか。これだけの規模の不動産取引で現金というのは極めて珍しい。本当の買主は他にいるのか。様々な疑問が出てくる。

取材をしたラス・チョーマ記者は、「トランプ大統領は身の潔白を証明できるかもしれない。しかし、何れにせよ大統領はこの取引について米国民に説明する責任が有る」と話している。

(参考記事:3 1 1 緊急特集 「 福島第一原発事故から6年 」 「甲状腺がん多発 − 被曝の影響は本当に無いのか?」後編))

トランプ大統領は習近平国家主席と来月会談することになっている。

※マザー・ジョーンズは1976年に設立された調査報道を専門とするNPOメディア。雑誌として始まり、現在はオンライン・メディアとして活動。サンフランシスコに本部。ワシントンDC、ニューヨークに支局を持つ。名称は20世紀初頭に活躍した米国人女性で「マザー・ジョーンズ」と呼ばれた労働活動家のメリー・ジョーンズに因んでいる。トランプ大統領に関する調査報道で2017年の全米雑誌賞を受賞。

(参考記事:現地報告:中国共産党腐敗官僚の実態1))

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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