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トランプ大統領の「前大統領による盗聴」の根拠に女性ジャーナリスト?

立岩陽一郎InFact編集長
ルイーズ・メンチ氏(写真)が疑惑の鍵と報じるワシントン・ポスト紙

トランプ大統領が、前任のオバマ大統領に盗聴されていたと指摘している問題は、根拠の提示が無いことからメディアは大統領の真意を測りかねている。こうした中、ワシントン・ポスト紙は7日、元英国国会議員の女性ジャーナリストの書いた記事が大統領の主張の根拠になっているのではないかとする記事を掲載した。

この問題はトランプ大統領が、選挙中にオバマ政権によって盗聴されていたと主張しているもの。大統領は、「Terrible! Just found out that Obama had my "wires tapped" in Trump Tower just before the victory. (恐ろしいことだ。オバマが選挙中にトランプタワーを盗聴していた」とツイート。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (3)~米トランプ新政権を揺るがすロシアとの関係)]

これに対してオバマ政権時に情報機関トップを務めたジェームズ・クラッパー前国家情報長官が否定している他、FBIのジェームズ・コミー長官も司法省に対して否定するコメントを出すよう伝えたと報じられている。

トランプ大統領はその根拠を示していないが、トランプ政権の幹部がメディアに出て大統領の指摘に根拠が有ると説明してまわっている。

ニューヨーク・タイムズ紙は、これまでの幹部らの発言を検証。それらが誤った引用や根拠の薄弱な過去の報道に基づいた内容だったと報じている。

こうした中、ワシントン・ポスト紙は7日、ニューヨーク在住のジャーナリストでルパード・マードック氏が経営するニューズ・コープ社で役員を務めるルイーズ・メンチ氏の記事が根拠になっている可能性が最も高いとする記事を掲載。

記事によるとメンチ氏は、大統領選挙投票日前日の去年11月7日に自身が運営に関わっていたオンライン・メディア「ヒート・ストリート」に以下の見出しの記事を書いている。

「スクープ!FBIがトランプ陣営とロシアとのつながりを捜査するための令状を入手」

この中で、メンチ氏は、FBIが入手したのはトランプ陣営の米国民とロシアとの関係を捜査するためのスパイ摘発のための令状だったとしている。当時は全く注目されなかった記事だが、トランプ大統領のツイートをきっかけに注目を集め、メンチ氏は6日、記事は大統領が盗聴されたとの主張を裏付けるものではないとツイート。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (6)~トランプ米次期大統領に情報機関は何を語ったのか?)

メンチ氏は英国出身で、英国で国会議員を2年務めた後に夫と子供とともにニューヨークに移住したという。現在、45歳の彼女は、ニューズ・コープ社で新たなオンライン・メディアの開発に関わっているという。

ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領の主張の根拠は彼女の記事が最も可能性が高いとしているが、トランプ大統領の主張の真偽については触れていない。

この問題について公共放送NPRのベテラン記者は、「(大統領の主張が)バカバカしくてコメントする気になれない」と話している。

(参考記事:安倍総理帰国後のトランプ大統領を襲った側近のスキャンダル~トランプの米国とどう向き合うか? (29))

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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