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米トランプ政権、北朝鮮との事実上の「協議」入りをドタキャン

立岩陽一郎InFact編集長
ホワイトハウスでロイター通信の取材に応じるトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ政権による北朝鮮との事実上の「協議」の開始と見られていた北朝鮮外交官へのビザの発給が取り止めたとなった。ニューヨーク・タイムズ紙が25日に報じた。

記事によると、北朝鮮外交官へのビザの発給は24日の段階で国務省から了承が出ていたということで、ニューヨーク・タイムズ紙は、突然の取り消しになったとしている。

外交官を含む北朝鮮の高官6人を米国に招く計画を立てていたのは、外交問題を専門とする民間団体のNCAFP。国務省によるビザ発給の手続きが進められ、早ければ3月にも北朝鮮高官の訪米が実現するものと見られていた。

https://www.ncafp.org/about-us/our-mission/

国務省が関与した招聘ではないが、国務省がビザの発給を認めることで事実上、トランプ政権が北朝鮮政府高官の入国にお墨付きを与えるものとして注目されていた。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、NCAFPにビザが発給されるとの連絡が国務省から入ったのは24日の朝だったという。そして、その数時間後に取りやめになったという。

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (22)~ケネディ前駐日大使、トランプ大統領の外交政策に憂慮示す)

北朝鮮をめぐってはミサイル発射に加えて、金正男氏を、VXガスを使って殺害した疑いが持たれており、ニューヨーク・タイムズ紙は、金正男氏殺害事件がビザ発給取り止めの理由になったと思われるとしているが、その一方で、なぜ24日の段階でビザ発給の手続きが行われていたのか、明確ではないとしている。

この問題について国務省でアジアを担当し現在は大手企業のコンサルタントをしている元外交官は次のように話す。

「NCAFPは民間団体だが、トランプ政権の意を受けて動いたのは間違いないだろう。このタイミングでの取り消しを見ると、外交のプロである国務省が筋書きを描いたとは思えない。ホワイト・ハウスが強硬に推し進めたものの、最終的に判断がひっくり返ったと見るのが普通じゃないか」

(参考記事:トランプの米国とどう向き合うか? (17)~来日する米国防長官にトランプ政権の「重し」との期待)

トランプ大統領は選挙戦中、金正恩朝鮮労働党委員長と直接会っても良いと話していた。23日のロイター通信とのインタビューでこの点について問われ、「私は彼の行動に腹を立てている」と話し、会う意思が有るかどうかについては明言は避けた。

※NCAFPは外交問題を専門的に扱う団体で、National Committee on American Foreign Policy。

(参考記事:拉致の記憶~蓮池兄がたどる拉致事件)

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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