トランプ大統領に毅然と対した米TVキャスターの気骨

就任早々に訪れたCIAでトランプ大統領は、就任式の参加者数でマスコミを批判。(写真:ロイター/アフロ)

米4大TVネットワークの一つ、ABCテレビが25日、トランプ大統領の単独インタビューを放送した。キャスターは、放言を繰り返す大統領に向かって、自らの信頼を貶めると考えないかと問うた。その質問からは権力に毅然と向き合おうとする米メディアの姿勢が見られた。

キャスターは質問を続ける

インタビューはABCテレビの夜ニュースのキャスターを務めるデビッド・ミュアー氏が行った。最初はホワイトハウス内を2人で歩きながら、「ファーストレディーがニューヨークにとどまるのは寂しくないか?」などとにこやかなやり取りで始まった。

トランプ大統領とABCのミュアー氏
トランプ大統領とABCのミュアー氏

ところが、インタビューが始まるとミュアー氏の顔が厳しいものに変わる。メキシコとの国境に壁を作るといった話では、不法入国した親の下で生まれた子供たちはどうなるのか?「彼らは米国に残れるのか?」と執拗に迫る。

そして、極めて厳しい顔を見せて質問したのは、就任直後のトランプ大統領の対応についてだ。トランプ大統領は就任直後に、総得票数でヒラリー氏に及ばなかった点について次のようにツイートした。

「違法に投票した数百万人の票を除けば、私は(総得票数でも)勝っていた」

更に、ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官に予定外の記者会見を開かせて、就任式の参加者数をマスコミが不当に低く見積もっていると批判させた。

まず、ツイートについてミュアー氏が追及する。

「なんの根拠も示さずに数百万人の違法な投票が行われたと言うんですか?」

それに対して、「別に。だって多くの人が私と同じように感じている」と不機嫌そうに答える大統領。

ミュアー氏はなおも続ける。

「根拠を示さずにそういうことを言うことで、自らの信頼を貶めることになるとは思わないのですか?」

極めつけは、スパイサー報道官のマスコミ批判に対する質問だろう。

「就任式が終わった直後にマスコミを集めて報道官に、就任式に参加した人の数について話をさせています。これは、あなたにとって、他のどの問題よりも就任式に何人参加したかが問題だという風に受け止められるとは思いませんか?」

日本では

単独会見というのは新聞にしろテレビにしろ、取材する側は特権を与えられたことになる。このため、厳しい質問がしにくいという現状がある。特に日本のメディアでは顕著だ。

仮に日本で世界的に注目された総理大臣が誕生したとしよう。その総理大臣が某テレビ局に単独取材を許可したとして、テレビ局の第一声は次のようになるだろう。

「総理、まずはご就任おめでとうございます。就任から5日ほど経ちましたが、今の気持ちはどうですか?」

それは次の様に続くだろう。

「就任式、私も現場にいましたが、多くの人々が全国から駆け付けました。その姿を見て、どうお感じになられましたか?」

そして本題に入るとして、次の様になるだろう。

「総理は選挙戦から経済を活性化させると言われてきました。具体的におききします。まず、どこから手を付けられますか?」

それに気持ち良く答える総理大臣の顔が目に浮かぶ。要は、総理大臣の宣伝だ。それは質問の内容だけじゃない。ミュアー氏が見せたような、挑むという姿勢は全く見せない。なぜか?見せたら後で大変なことになるからだ。総理官邸から会社の上層部に苦情が寄せられるのは勿論、政権を支持する政治団体などから嵐のような抗議が会社に押し寄せる。その結果は多くの事例が語ってくれている。

ミュアー氏が見せた毅然とした態度は、まだ米国の民主主義が健全に機能していることを物語っているのかもしれない。