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米トランプ大統領が拒否する所得証明書の開示がなるか?

立岩陽一郎InFact編集長
ホワイトハウスで経済界との面会をこなすトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

トランプ大統領が23日、米国の市民グループから訴えられた。外国政府から事業対価を受けることを禁じた憲法に違反している疑いが有るというものだ。原告は裁判の中でトランプ大統領が一貫して公表を拒んできた所得証明書の開示を求めることにしており、仮に裁判所が開示を決めると大統領は厳しい立場に立たされることになる。

トランプ大統領を訴えたのは政治家の倫理の問題などを監視する市民グループCREW。CREWはCitizens for Responsibility and Ethics in Washingtonの略で、憲法学の専門家や法律家などからなる。

訴えによると、トランプ大統領は所有する不動産を外国政府に貸すなどして収益を得ており、これは外国の王族、政府から議会の同意なくして如何なる利益も得てはならないと定めた合衆国憲法に違反しているとしている。

CREWはその根拠として以下のような点を指摘している。

・ニューヨークにあるトランプタワーに外国政府が所有する企業が既に入っている。

・ホワイトハウス近くにトランプ大統領の企業グループがオープンさせた「トランプ・インターナショナルホテル」を外国政府が利用することが予想される。

ホワイトハウスの目と鼻の先にオープンしたトランプ・インターナショナルホテル
ホワイトハウスの目と鼻の先にオープンしたトランプ・インターナショナルホテル

トランプ大統領は就任前の会見で、全ての事業の運営を2人の息子に委ねることにした上、所有するホテルを外国政府が利用した場合はその際に得られた利益を国庫に入れるとしている。だから憲法違反にはあたらないという主張だ。

今回の訴訟を担当するCREW側の弁護士は、ニューヨークタイムズ紙の取材に対して、この裁判によってトランプ大統領の所得証明書の開示がなされることに期待していると話している。証明書には、トランプ大統領のこれまでのビジネスの詳細や融資の状況が書かれているものと見られている。

トランプ大統領の資産を追いかけているワシントンの調査報道記者は次のように話している。

「所得証明書の中で、最も関心の高いのが融資の実態で、そこで仮にロシアなどの国から多額の融資を受けているとなると、これまでの大統領の説明は事実と異なったものとなる。これは大統領にとってはかなりの痛手となるだろう」

※当初、記事で「固辞」としていたところを指摘を受けて「拒否」に変更しています。

InFact編集長

InFact編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「NHK記者がNHKを取材した」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。日刊ゲンダイにコラムを連載中。

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