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今村更迭を巡る二階幹事長発言の真意を読み解く

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(299)

卯月某日

25日夜に自民党二階派のパーティで問題発言を行い更迭された今村前復興大臣について、野党は議員辞職を要求するとともに翌26日にマスコミ批判を行った二階幹事長についても批判を強めている。

しかし二階幹事長のマスコミ批判は単なるマスコミ批判ではないとフーテンは思う。その場にいたわけではないので報道を見ての判断だが、二階幹事長の批判の矛先は「今村大臣の首を取れ」と官邸にご注進したマスコミがあり、それに従って即刻更迭を決めた安倍官邸に向けられていると思うのである。

25日夜にホテルニューオークラで行われた二階派のパーティで今村前復興大臣が問題発言を行ったのは夕方の5時過ぎらしい。「東日本大震災はまだ東北で、あっちの方で良かった。これがもっと首都圏に近かったりすると莫大な被害があった」と語った。

その頃安倍総理は官邸で経済財政諮問会議に出席していた。問題発言は発言後速やかに官邸に報告され、経済財政諮問会議終了後、安倍総理は菅官房長官と対応を協議し今村氏の更迭を決めた。そして午後6時半過ぎ二階派のパーティに駆け付け、挨拶の冒頭で今村前大臣の問題発言を謝罪した。

おそらくパーティ会場の中にはなぜ安倍総理が謝罪したのか分からなかった人がいたかもしれない。二階幹事長は講演で「昨日の会で内閣総理大臣・安倍晋三先生がわざわざお越しになってお詫びを言ってくれる。聞いてる方は何があったか分からない。いきなり、大騒ぎです」と嫌味たっぷりに不満をぶちまけた。

おそらく自分の派閥に所属する大臣の更迭を相談なしに頭越しでやられたことを怒っている。そしてその情報を官邸に報告したのを官邸の言いなりになる一部のマスコミと見ている。

このところ閣内には問題発言や不祥事が相次ぎ支持率低下が懸念されていた。官邸は国民向けに「綱紀粛正」の姿勢を見せなければならないと考え、御用マスコミに問題発言探しを指示し、今村前大臣はその対象の一人であった。

そうでなければ問題発言から1時間も経たずに総理がパーティ会場に来て謝罪することなど考えられない。そしてその前に更迭は決まっていた。おそらく主導したのは菅官房長官で、官房長官の言いなりになるマスコミとの共同作業である。だから初めから更迭ありきで問題発言を探しているマスコミがあった。

「政治家が話したら、マスコミが1行悪いところがあったらすぐ『首を取れ!』という。なんちゅうことか」と二階幹事長が言ったのは、更迭ありきで問題発言を探していた官邸とそれに協力するマスコミへの怒りである。

二階幹事長は「そういうマスコミは締め出さなければならない」とトランプ張りの危険なことも言った。それは自分に都合の悪いマスコミを締め出すより権力の手先となって権力に都合よく取材するマスコミを締め出す意味ではなかったかとフーテンは思うのである。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:5月26日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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