aiko 25周年目前、“更新”を続けるラブソングの名手が最新作で見せた新境地
25周年イヤーに突入。失わない新鮮さ、斬新さ
今年7月17日でデビュー満24年を迎え、25周年イヤーに突入するaikoのニューシングル「ねがう夜」が、4月13日に配信され、待ちわびたファンの声がSNS上で飛び交っている。そのコメントにもあるが「ここまでキャリアを重ねてもまだ新しい部分が出てくる」という新鮮さ、斬新さで満ちあふれている作品だ。
エッジが効いたイントロがaiko式迷路への入口だ。いつものようにaiko流の行先不明のコード展開にワクワクさせられるが、今回の作品は展開がとにかく複雑。出口を知っているのはaikoだけだ。そんなaikoに手を引かれ、迷路の中を歩いて行くような感覚。目まぐるしく変わる歌の表情に目が離せなくなり、歌詞から感じるヒリヒリとした痛み、愛しさ、切なさが胸に響き、またすぐに聴きたくなってしまう中毒性をはらんだポップソングだ。
言葉から生まれるメロディ
ポップなメロディに乗せ、届ける歌詞は今回も極上の切なさを連れてきてくれる。<だからもう夢に出なくていいんだよ>と言いながら、<たまに夢でと願う夜>と、誰もがそうであるように、行ったり来たりする思いを自由なメロディで表現し、それが切なさの大きな成分になっている。基本的に詞先で曲を書くaikoは、言葉からメロディが生まれ、だから言葉が持つ繊細さや深い意味がメロディに余すことなく昇華され、独特のコード、メロディになっているのではないだろうか。この「ねがう夜」の歌詞とメロディから湧きあがってくる切なさも“純度”が高い。
aikoにとっての「夜」
ファンにはおなじみの話だが、aikoは昔から夜中を楽しんでいる。遊ぶのも曲を創作するのも圧倒的に夜、それも深夜だ。「ねがう夜」もきっとそうだろう。「ねがう夜」の初解禁は最近の「青空」「ハニーメモリー」「磁石」「メロンソーダ」といった作品同様、地元・大阪のラジオステーションFM802だった。昔から夜にラジオを聴くことを楽しみにし、ラジオを愛し大切にしているaikoらしい音の届け方だと思う。
前述したように、その人のこと、自分のことに思いを巡らせるのは、夜一人になってからの時間、という人が多いのではないだろうか。aikoもそうだ。「夜」を思わせる曲が多いのはそのせいだろう。「すべての夜」(アルバム『暁のラブレター』に収録)、「夜の風邪」(シングル「ストロー」のカップリング)、「ビードロの夜」(アルバム『夢の中まっすぐな道』に収録)などタイトルに“夜”が入っているものもあれば、「花火」をはじめ、「アンドロメダ」や「天の川」「白い服黒い服」など、夜がモチーフになっている作品は多い。この「ねがう夜」も深夜の空気、音が見事にパッケージされていると思う。
アレンジはトウミヨウが手がける
この曲のアレンジはトオミヨウ。現在最も注目を集めるアレンジャーの一人だ。aikoが昨年3月に発売した、約2年9カ月ぶりオリジナルアルバム『どうしたって伝えられないから』では、「メロンソーダ」を始め6曲のアレンジを手がけている。トオミがこの曲についてTwitterで「すごい曲です!最初にデモを聴いて打ちのめされました。」と呟いているように、この曲が生まれた時のaikoの衝動や空気感を音にそのままパッケージしたかのように、歌詞とメロディとサウンドが三位一体、という言葉では足りない、その先にあるグルーヴ感を作り上げるのと同時に、歌を際立たせている。aikoのライヴを支えるバンドメンバーがレコーディングに参加しているのも大きい。佐野康夫の雄弁なドラムとベース須永和広が作るリズムと音色が、一本の太い芯となって、浜口高知のギターが彩りを与え、さらに歌を引き立てる。
“幻の初日公演”
4月27日には「ねがう夜」が42枚目のシングルとして発売される。カップリングには新録となる「友達になりたい」と「ゆあそん」を収録。また、初回限定仕様盤には『Love Like Pop vol.22 〜本当の初日 無観客ライブ〜』が収録されたBlu-rayが付いてくる。このライブは、昨年開催されたaikoの全国ホールツアー「Love Like Pop vol.22」より、本来ツアー初日公演として予定されていた2021年5月14日のJ:COMホール八王子公演が、緊急事態宣言発令に伴い公演延期となり、急遽無観客でのLIVE映像を収録した幻の初日公演になる。さらにTikTokでは過去のシングル表題曲の配信がスタートした。
歴史を紡ぎながら進化を続ける稀代のシンガー・ソングライター
ブランドというものは、その歴史を紡ぎながら更新、進化を続けている。aikoがまさにそうだ。確固たるaikoというブランドが存在しているが、シングル、アルバムのリリース毎に“更新”を続けている。「ねがう夜」は、そんな稀代のシンガー・ソングライターがまた新たな境地を迎えたといってもいい、25周年とその先も“視界良好”――そう思わせてくれる一曲だ。