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森山良子 55周年の“今”届けたい歌を、3人のアレンジャーと「新しい気持ちで」一夜限りのセッション

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

“時を超えた、ここでしか聴くことができないサウンド”がコンセプトの音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)の5月15日(土)放送回は、歌手生活55年目に突入した森山良子が登場。コロナ禍、そして続く緊急事態宣言下での生活で、心身ともに疲労感に苛まれている今、その歌声は聴き手の心に寄り添い、温もりを感じさせてくれると共に、エネルギーを与えてくれる。

この日限りのアレンジで「涙そうそう」を切々と歌う

森山良子が3人のアレンジャーとスーパーバンドと共に“大切な歌”をセッション。1曲目はおなじみの「涙そうそう」(1998年)を坂本昌之のアレンジで披露。BEGINが手がけたゆったりとした柔らかなメロディに乗せ、森山は自身が書いた、亡くなった兄への思いを紡いだ歌詞をひと言ひと言丁寧に、思いを込め歌う。心が温かく、切なくなり、まさに涙がポロポロと零れ落ちそうになる。坂本のアレンジがせつなさをさらに深いものにしてくれる。この曲は森山のアルバム『TIME IS LONLY』(1998年)に収録され、その後多くのアーティストにカバーされ、歌い継がれ、幅広い世代から愛される国民的な歌になっている。

エネルギー溢れる歌とアレンジの「ユー・レイズ・ミー・アップ」

森山は2016年に50周年を迎えた。19歳の時「この広い野原いっぱい」でデビューし、以来ポップス、ジャズ、ミュージカル、クラシック、ジャンルを問わず“いい音楽”と“いい歌”を歌い続けてきた。その軌跡を辿る50周年記念アルバム『Touch me』(2006年)に収録されている、世界中のアーティストがカバーし、日本ではケルティック・ウーマンのカバーがヒットした『ユー・レイズ・ミー・アップ』(2002年)を、笹路正徳のアレンジで歌った。笹路は「良子さんの歌はエネルギーが凄いので、この曲は本来はストリングスが入る曲ですが、今回は管楽器を中心にエネルギー溢れるアレンジにしました」と語り、総勢18人のブラスセクションが厚く、熱いサウンドを作り上げる。森山は、これまで様々な歌を歌い、キャリアを重ねてきたからこその“説得力”のある歌で、<越えて行ける どんな苦しい 山も海も>と、山川啓介が訳した勇気を与えてくれる歌詞を届ける。森山は「こういう雰囲気のアレンジは初めて。すごくエネルギーをいただけました」と語っていた。

母・森山良子の歌手生活50周年の時、息子・森山直太朗が贈った「今」

ラストは、家族であり“音楽仲間”でもある森山直太朗(共作・御徒町凧)から50周年の時に「奪い取った(笑)」(森山)という「今」を、斎藤ネコのアレンジで圧巻のパフォーマンス。「ユー・レイズ・ミー・アップ」と共にテレビ初披露となった。この曲を母親が歌うのを聴いて、森山直太朗は改めて気づいたことがあるという。「当時、新しい曲なのにずっと前からそこにあったような感覚を覚えました。僕が作るメロディは、母が歌ってきた曲や作ってきた曲にかなり影響を受けています。そんな曲を母が歌っているのを聴いて、元々母にあったソウルや歌う時の“節”が、僕を通して、時を越えて母に帰っていく感じでした」。

そんな親子の絆、繋がりを強く感じさせてくれる「今」について森山良子は「レコーディングの時、思いのほか難しくて自分と一体化するのに時間がかかったけど、今は体の中で息づいています。この曲は年月が過ぎていくことの大切さを教えてくれました」と語っている。ストリングスがどこまでも美しい壮大なサウンドに乗せ、「支えてくれるような音で、ものすごく歌わせてくれました」と、“今”の思いを乗せ熱唱した。

「(森山良子は)10代から始めたことを純度高くやり続ける強み、凄みがある」(森山直太朗)

森山直太朗は、アーティスト森山良子の“強さ”について「すごく歌うことが好きなこと。10代から始めたことを純度高くやり続ける強み、すごみがある」と教えてくれる。

全てのパフォーマンスを終えた森山は「編曲者皆さまの曲の中にも新鮮なsomethingを吹きこもうという心意気を感じ、私も新しい気持ちで歌う事が出来ました。スタジオに心地よい音楽空間が漂って居たのはあの、若い頃憧れた同名の素敵なエンタテイメント番組の音楽の神様が見守って居る様な、、」と語り、さらに「これからもっと自分の違う世界を見せていきたい」と、歌を追求しながら楽しんでいくことをファンに約束した。

森山良子が登場する『Sound Inn S』(BS-TBS)は、5月15日(土)18時30分からオンエアされる。なお、番組放送終了と同時に「Paravi」で未公開映像と共に独占配信される。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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