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桜庭ななみ 主演ドラマ『13』で見せる新境地 「今までの経験を、全てこの役に注ぎ込んだ」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/東海テレビ

注目の“オトナの土ドラ”最新作は、英の大人気ドラマのリメイク「13(サーティーン)」。主演は桜庭ななみ

これまで数々の話題作を放ってきた“オトナの土ドラ”枠、その第28弾となる「13(サーティーン)」(毎週土曜23:40-24:35フジテレビ系)が、8月1日(土)からスタートする。この作品は英BBCの大人気サスペンスドラマ「サーティーン/13 誘拐事件ファイル」のリメイクで、13歳の時に行方不明となった少女・百合亜が、13年後に突如家族の元に戻ってきたことで、止まっていた歯車が動き出し人々の運命を変えていく――そんな物語の主役・百合亜を演じるのは桜庭ななみ。失った13年間によって、外見は26歳だが精神的には13歳で止まっているかのような、どこかとらえどころがない女性という難しい役どころにチャレンジしている。桜庭にこのドラマについて、そして百合亜という役とどう向き合ったのかを聞いた。

「13年間ずっと同じ部屋で監禁されていると思うと本当に恐ろしいし、考え方も変わると思う」

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「百合亜の状況は、普通に生活していく中で滅多に経験しないことなので、自分の感情の中でお芝居するっていうのは難しかったですけど、原作や色々な資料を読みながら理解していきました。私がお仕事を始めて13年で、13年間ずっと同じ部屋で監禁されているって思うと本当に恐ろしいし、考え方も変わると思います」。

前半はほとんどセリフがなく、微妙な表情の変化や動き、空気感で感情を伝える難しい演技が求められている。

「私は表情を変えたくないなと思っていたので、表情は変わらないけど、心の中で思っていることが、視聴者の方に伝わればいいなと思っています」。

相川百合亜(桜庭ななみ)と、刑事・田辺佐緒里(遊井亮子)、永井敏彦(青柳翔)
相川百合亜(桜庭ななみ)と、刑事・田辺佐緒里(遊井亮子)、永井敏彦(青柳翔)

脚本は浅野妙子。ストーリーは――百合亜は、13歳で誘拐され、13年後に生還するが、家族はバラバラでそこに彼女の居場所はない。当初は、監禁された被害者の美少女として注目されるも、犯人の男と顔見知りであった可能性が浮上すると一転、男を誘惑した小悪魔だと、世間から追及される。見た目は26歳、精神はまるで13から止まっているかのよう。そんなとらえどころのない百合亜の二転三転する証言に、捜査を進める担当刑事たちも疑問を抱く。そんな中、第二の事件が発生し…――。

「百合亜と犯人の関係に恋愛感情を漂わせていたり、家族の関係を丁寧に描いたり、原作とはひと味違う日本版の『13』を楽しんで欲しい」

原作同様サスペンス要素をベースに、家族それぞれのストーリー、そして人への愛情描写も丁寧に描きながらも、この枠では初の全4話という短いタームで完結することあり、速いテンポかつ一話一話が濃く、厚い内容で引き込まれる。

相川宗一(神保悟志)、相川麻美(板谷由夏)、相川千帆(石川瑠華)、相川麻美(板谷由夏)
相川宗一(神保悟志)、相川麻美(板谷由夏)、相川千帆(石川瑠華)、相川麻美(板谷由夏)

「浅野さんの脚本は、百合亜と犯人(藤森慎一)のちょっとしたト書きにも、ラブストーリーぽい要素があって、そこも含めてすごく面白かったです。目線のやり方ひとつにもすごく恋愛要素が入っていたので、それも楽しかったです。観て下さった方がどういう捉え方をしてくださるか楽しみです。百合亜が帰ってきたときの家族の反応や、家族の関係性がすごく丁寧に、魅力的に描かれています。家族もそれぞれ問題を抱えていて、ひとり一人の辛さが脚本からも痛いほど伝わってきました。自分に素直になれなかったり、本当に不器用な家族だと思います。その家族がどうなっていくのかも大きなポイントです」。

「撮影が一旦ストップしたことで、一回ピンと張っていた糸を緩めることができ、より百合亜と向き合うことができました」

撮影が始まってすぐに新型コロナウイルス感染拡大の影響で、撮影が2か月間ストップしてしまった。一旦自分の中に百合亜という難しい役を“入れて”、撮影再開までその間のモチベーションはどう対処していたのだろうか。

「撮影が始まった時は、ああしなきゃこうしなきゃって自分の中で結構バタバタしていました。ストップしていた2か月間も、もちろん自分の中から百合亜が離れることはなかったのですが、一回ピンと張っていた糸を緩めることができて、逆により百合亜に向き合うことができました。そこでもっとこうしたいということを冷静に考えることができたので、例えば監禁された時の恐怖の表情は、よりリアルなものになったと思います。今回は主役を務めさせていただいたということもあって、自分の中でも作品に対する思いが強かったので、監督にもこうしたらどうですか?とアイディアを出したり、ここはどういうことですか?って深く聞くことが多くて、そういう環境でお仕事をさせていただけたことを感謝していますし、嬉しかったです」。

犯人・黒川一樹(藤守慎吾)と百合亜の“関係”とは!?

百合亜と黒川一樹(藤森慎吾)
百合亜と黒川一樹(藤森慎吾)

百合亜が監禁されている場所は、原作では鉄格子のコンクリートの部屋だが、今回は日本家屋で、それが逆におどろおどろしい雰囲気を感じさせる。「すごく不気味だし、洗脳されてる感じが出ると思います」(桜庭)というように、やはり洗脳されて逃げ出せなかったのではないか、自作自演ではないか、また、犯人との間に恋愛感情が芽生えているのでは?と、様々な推測が飛び交う状況を作り出す。

犯人である黒川一樹役を演じる藤森慎吾の“怪演”にも注目だ。チャラ男というパブリックイメージは封印して、ひとりの女性への歪んだ“好き”という思いが戦慄となり、視聴者に嫌悪感や苛立ちを与え、ドラマを盛り上げる。そんな黒川に13年間監禁され、絶望の中それでも望みを捨てずに生き抜こうとし、生還する百合亜だが、彼女を支えたのはやはり周り人の愛だった。

「それは、家族の愛や当時好きだった人への気持ちや思い出、周りの人の友情が百合亜にとっての生きる支えになっているし、それがあきらめないという強い意志につながって、それは人生の中で誰にとっても大切なことだと思います。その思いを13年間持ち続けた百合亜は、ある意味すごく強い人間だと思うし、百合亜じゃなければ生還は無理だったと思います」。

「その時にしかできない役、等身大の役を大切にしていきたい」

これまで数多くのドラマ、映画で様々な役を演じてきた桜庭にとって、百合亜という役はどんな存在になっているのだろうか。そしてこれからどんな役者に進化していきたいのか、その展望を教えてもらった。

「百合亜という役は、自分の中でこれからも間違いなく深く残っていくと思うし、今までの経験を全部この役に注ぎ込んだと思えるほど、一生懸命演じさせていただきました。年齢も含めて、その時にしかできない役や、等身大の役というのはすごく大切にしたいです。必要以上に大人っぽい役にはあまり興味がないというか、それは将来できるし、今できる役をやりたいです。百合亜という女性も、今だからできる役だと思っています」。

桜庭は初の“オトナの土ドラ”枠への出演となる。「チャレンジなドラマが多いと思うし、ファンが多い枠だと思います。友人に新しいドラマに出演するという話をしたときに、どの枠?と聞かれ“オトナの土ドラ”枠だよって言ったら、その枠すごく好きだから見るね!って言ってくれて(笑)。今回は“ザ・オトナの土ドラ”っていう感じのドラマなので、この枠のファンの人はもちろん、より多くの人に楽しんでいただきたいです」

LiSAが初ドラマ主題歌。「ドキドキしています」

LiSA
LiSA
「愛錠」(8月17日配信・ストリーミングスタート)
「愛錠」(8月17日配信・ストリーミングスタート)

このドラマの主題歌にも大きな注目が集まっている。昨年リリースした TV アニメ「鬼滅の刃」オープニングテーマ「紅蓮華」が女性アーティスト作品としては、史上初のデジタルシングル100万DL突破となり、大ヒット&ロングヒット中のLiSAが、初めてのドラマタイアップ曲となる新曲「愛錠(あいじょう)」を歌う。作詞を手がけたLiSAはこの曲について「初めてのドラマの主題歌を担当させていただくことになり、とても嬉しいです。そしてすごくドキドキしています。様々な愛情が絡まるこの物語を読みながら、私の中で『愛錠』という言葉が出来上がりました。本編の気持ちからそのまま曲に入り込めるようなダークバラードに仕上げました。作品と共にお楽しみいただけますように」と力が入る。他人には100%理解されないであろう主人公・百合亜の心の奥底にある思い、叫びを、LiSAが言葉と歌にし、圧巻の表現力で聴く者全ての心に真っすぐ届ける。

「LiSA さんの力強い歌声と繊細な歌詞がドラマに切なさと華やかさを飾ってくださると思います」(桜庭)

桜庭はこの曲を聴いて「『13』の撮影を終えて 1ヶ月以上経ちましたが、LiSA さんの『愛錠』を聴いた瞬間、演じた百合亜の気持ちになり、百合亜にメッセージをもらった感覚になりました。『愛錠』はまさに悲しく繋がってしまった愛と繋がっていたいと信じた愛を描いたドラマ『13』に重なり、LiSA さんの力強い歌声と繊細な歌詞がドラマに切なさと華やかさを飾ってくださると思います」と、まさにドラマのキーワードともいえる「愛錠」という言葉をLiSAが導き出したことで、ドラマの世界観を深く伝えることができると絶賛している。

ドラマ「13(サーティーン)」オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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