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注目の若手俳優・岡田健史が新ドラマ『いとしのニーナ』で手にした、“自然体”という強さ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/フジテレビ

岡田健史、堀田真由、望月歩、長見玲亜、笠松将等、注目の若手俳優の瑞々しく熱いエネルギーが交差する、ひと味違うラブストーリー

外山厚志(岡田健史)、青田新名(堀田真由)
外山厚志(岡田健史)、青田新名(堀田真由)

動画配信サービスFODで5月18日(月)0時から配信スタートする、いくえみ綾の同名の人気コミックをドラマ化した『いとしのニーナ』(毎週月曜0時最新話配信/全8話)が注目を集めている。原作が話題、ということに加え、岡田健史、堀田真由、望月歩、長見玲亜、笠松将という今をときめく注目若手俳優が集結しているからだ。ひと足先に全話を観たが、30分×8話、抜群のテンポ感で一気観してしまった。拉致という衝撃的な事件から幕が開くが、高校生・外山厚志(とやま・あつし/岡田)の不器用だけど純粋でまっすぐなラブストーリーで、登場人物それぞれが不安やコンプレックスを抱えながらも、前を向き進んでいこうともがくキャラクターに、誰もが共感できるはずだ。このドラマについて主演の岡田健史に話を聞かせてもらった。

「いい意味で原作に囚われすぎず、現場でキャストの皆さん、監督さんと一緒に学びながら、役を作っていった」

「原作を読んで最初に感じたのは、すごく面白いのですが、正直全てはわからないと思いました。深すぎてわかるはずがないんですけど、まず拉致とか性的被害に関して全く知識がないので、そこから勉強するというよりも、台本を読んで実際に現場に立ち、キャストの皆さん、監督さんと一緒に学びながら、ドラマを作っていけたらいいなと思いました。だからいい意味で原作に囚われることをやめようと思いました。とても考えさせられる作品だと思うし、そこをいかに演じる側の人間が肉付けをして、観ている人にきちんと伝えていくかが、この作品でひとつの目標だったので、そちらに僕は重点を置いてやらせていただきました」。

演じながら、このドラマの根底に流れるテーマや関わる登場人物の深い思いを、探りつつも的確にキャッチし、演技に昇華させていった。気になるストーリーは――

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ある日突然、幼なじみで親友のマサ(押川正行<望月歩>)から「青田新名を拉致った」と告げられた厚志。新名(通称ニーナ<堀田真由>)は、マサが通学中にひと目惚れした清流学園の女子生徒だった。にわかには信じ難い厚志がマサのアパートへ行くと、ニーナが拘束されていた。しかも間もなく学校一の不良・牛島(牛島清隆<笠松将>)がやって来ると言う。とっさに厚志はニーナを連れてアパートから逃げ出す。事件後、厚志はニーナに事件の主犯はマサではなく牛島だったことを伝えるが、ニーナは事件のトラウマで夜も寝られず、厚志に責任をとってボディーガードをしろと言い放つ――。

「厚志はヘタレだけど、実は強い人間だと思う。その素直さは憧れる部分」

岡田が演じる高校生・厚志はヘタレで不器用で、でもまっすぐで正義感が強い性格だ。

「目に入ってきたもの聞いたもの、匂い、味、感じたもの、触れたもの全てに反応するという素直さを、厚志に吹き込みたかったのですが、それが僕は羨ましいなと思いました。そこまで自分の欲とか心の叫びに素直になれる人間、厚志が僕は本当に素敵だなって思いました。そして自分の悪いところ、欠点、弱点をちゃんと見つめて、目を背けたい、見たくないはずなのに、そこにちゃんと目を向けて改善しようとする姿は、本当に強い人間だなと思いました。そういった意味で厚志はヘタレではないと勝手に思っています。そこを感じていただけたらすごく嬉しいです」。

青春の光と影を鮮やかに描き、友情や挫折を通して登場人物が成長していく姿を捉えた、甘いだけではない青春ラブストーリー

監禁、レイプ未遂、加害者、被害者という、なかなか重いキーワードが出てくるが、このドラマの本質は、友情や挫折を通して成長する青春ラブストーリーだ。さなりが歌う主題歌「Hero」も、ドラマに寄り添いながらも、インパクトを与えている。

「まっ先にニュースにあがるようなキーワードが並んでいますが、それに対してニーナやマサ、牛島はちゃんと対応しなければいけない立場、無責任にはなれない立場です。重いテーマが流れる中、厚志はそこにコミカルさやポップさを、差し色として加えることができる唯一のポジションだと思いました。だから色々吹っ切れたというか、さなりさんが歌う主題歌「Hero」の存在もそうですが、あのポップに入ってくる意味も含めて、厚志の役割が見えた瞬間がすごく楽しかったです」。

厚志を含め、登場人物全員がそれぞれの“今いる場所”から、“次の場所”へと一歩進むきっかけを掴んで成長していく姿、青春の光と影を鮮やかに描いている。瑞々しさが熱へと変わり、「熱さ」と「厚さ」を30分という時間の中に凝縮させている

厚志、牛島清隆
厚志、牛島清隆

「厚志が主役ですが、全員に光が当たっている素晴らしい原作、脚本だと思います。間違いなく周りのキャストの方に助けられ、厚志という役を演じることができました。むしろ役をどれだけ魅力的にするかということだけを考えてやっていたので、主役という自覚がなかったと思います。みんなのキャラクター、人間性、表現を含めて、ひとつの作品だと思います。本当に勉強になったし、自分の反省点、改善点もきちんと見えて、もの作りについてますます興味が出てきました。そこが成長できた部分だと思います」。

「これまでの作品は、彼の常に全力で生真面目な性格が演技にも出ていた。今回は逆に力を抜いて、より自然な演技の中で等身大の岡田健史を見せてくれ、理想の厚志ができあがった」(プロデューサー・鹿内植氏)

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このドラマのプロデューサー・鹿内植氏(フジテレビ 総合事業局コンテンツ事業センター コンテンツ事業室)は岡田について「これまでの出演作を観させていただいて、常に全力で生真面目なその性格が、演技にも出ていると感じました。彼のひとつの武器だと思いますが、今作では監督とも相談し、力を抜いて、より自然な演技の中で等身大の岡田君を見せて欲しいと思いました。共演者の芝居に対して自然と会話を返していく中で、どんどん力が抜けていって、理想としていた厚志ができあがりました。彼はコメディセンスもあると思いますし、これからも色々な役で、等身大の岡田健史を見せて欲しいです」と語ってくれた。

純粋でどこか朴訥さを感じさせてくれるダメ男・厚志を、生き生きと、そして等身大で演じた岡田に、全8話の中で、特に印象的だったシーンを聞いてみると―――

厚志、マサ)
厚志、マサ)

「ある出来事の後の、マサとの教室のシーンでマサに『俺もう降りるわ』って言われた瞬間の景色です。完全な芝居になっていたかかどうかわからないんですけど、体の重心の置き方とか、残念さとか、脱力感が刺さりました。“心友”に言って欲しくない言葉というか、僕も実際に感じたことがある感覚だったので、あまり考えずにできたのですが、その時の窓から差し込む日差しとかも含めて、画も本当に綺麗で、厚志の心情とマサの心情のギャップが見事に表現されて、惨めさが強調されていて、そのシーンをすごく覚えてます」。

ニーナのことをどこまでも“純粋に好き”な、厚志の感情に引き込まれる人も多いはずだ。傷ついたニーナから、ボディーガードを命じられる、最初は守る側と守られる側という関係から、お互いの心が揺れ動き、ラブストーリーとして紡がれていく。岡田はどう感じて演じていたのだろうか。

森岡麻美(長見怜亜)、ニーナ
森岡麻美(長見怜亜)、ニーナ

「厚志はすごいと思います。ボディガードとはいえ、ニーナと親友の麻美のカラオケに付き合わされ、そこの支払いまでさせられて、僕だったらその瞬間に冷めると思います(笑)。すごい人達だなって呆れると思います(笑)。堀田さんとは初めて共演させていただいて、女優としてすごいと思わせられるところがたくさんありました。美しい涙を流すシーンが何度もあって、僕には到底できないと思いました。自分という人間のことをよく理解していないと、登場人物の気持ちになっても、その瞬間に泣けないと思うので、そこはこれからもっと追求していかなければいけないと思いました」。

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今、コロナ禍の中でテレビ各局、ネットでもドラマの制作がストップしているところが多いが、このドラマは2月初旬に撮影を終え、予定通り5月18日から全話が放送される。

「新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がる前に、ギリギリ撮り終えることができました。この状況の中で、みなさんに発信できる準備が整ってることが嬉しいです。ひとつのエンタテイメントとして、このドラマで暇つぶしではないですが(笑)、いい時間を過ごしていただければ嬉しいです」。

「今はとにかく場数を踏んで、監督さん、プロデューサーさん、スタッフさん、キャストの皆さん、色々な方とセッションしたい」

岡田は2018年ドラマ『中学聖日記』に出演し一躍注目を浴び、今年も『弥生、三月-君を愛した30年-』で映画初出演を果たした。さらにドラマ『MIU404』(TBS系)では綾野剛、星野源等と共演し、話題を集めている。甲子園を目指し野球に全力投球していた少年は、役者の道へ入り3年目を迎え、今何を思い、役者という仕事をどう捉えているのだろうか。

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「役者という仕事をやっていて、改めて野球という集団スポーツをやっていてよかったと思いました。ひとつの目標に対して、全員で走り抜けることは、役者の世界も野球も間違いなく同じだと思います。ボクシングとか陸上競技とか、個人競技をやっていたら、また違った人生が待っていたかもしれません。だから野球をやらせてくれた両親、それまでずっと一緒に同じ時間を過ごしたチームのみんな、監督、コーチの方々みんなに感謝しています。これからはとにかく場数を踏みたいです。監督さん、プロデューサーさん、スタッフさんもそうですし、キャストの皆さん、色々な方たちとセッションしたいです。役は関係なく、色々な現場で、熱を感じたいです」。

このドラマの1話配信後の5月18日17時から、ミニ番組『キャスト総出演「いとしのニーナ」徹底分析SP』が、FODで無料配信される。

FOD『いとしのニーナ』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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