FLOWER FLOWER 結成7年、深化したyuiとバンドが新作で見せる、“静と動”のインパクト 

写真提供 ソニー・ミュージックレーベルズ/ソニー・ミュージックレコーズ

FLOWER FLOWERの2年ぶりの3rdアルバム『ターゲット』は、バンド結成7年を迎えた凄腕ミュージシャン達が奏でる音と、デビュー15周年を迎えるソングライタ―yuiが紡ぐメロディ、言葉のひとつひとつとが、共鳴し合い、かつ、より自由になっている気がする。yui(Vo/G、mafumafu(B)、sacchan(Dr) mura☆jun(Key)にアルバムと、進化を続けるバンドについてインタビューした。

「前作『スポットライト』と同じように、照らす、狙いを定めるとか、聴いて下さる方に色々な意味で受け取ってもらるように『ターゲット』というタイトルにした」(yui)

3rdアルバム『ターゲット』(3月25日発売/通常盤)
3rdアルバム『ターゲット』(3月25日発売/通常盤)

結成7年で3枚目のオリジナルアルバム。様々なアーティストを支える百戦錬磨のミュージシャンと、デビュー15周年を迎えたシンガー・ソングライターが作り出した世界観は、非常に瑞々しく、かつバンドとして新たなフェーズに入ったことを感じさせてくれる、圧倒的なエネルギーを湛えている一枚だ。まずは『ターゲット』というアルバムタイトルに込めた意味から教えてもらった。

「前作の『スポットライト』は、歌詞や曲のタイトルに込めた意味を、色々角度から捉えられるようにという思いを込めて付けて、今回の『ターゲット』も『スポットライト』と同じような意味と考えていて、照らすというか、狙いを定めるとか、聴いて下さる方に色々な意味に受け取ってもらえるかなって思いました」(yui)。

ソングライターとしてのyuiの書く詞とメロディが、成熟と深化を伝えてくれる。特に言葉の部分では、アーティストとして、そして女性としてもキャリアを重ねた彼女の今、生活に根ざしてるというか、いい意味で生活を想像させてくれるような言葉が多くなった気がする。「歌詞は直前まで書かないようにしているので、搾りたてみたいなイメージではいます」と、まさに今のyuiの心の中を映しだした言葉から生まれるリズム、そしてメロディは今までとは違う温度感を感じるが、メンバーはどう感じているのだろうか。

「歌詞はすごく感じましたね。これまでいい意味での危うさ、刺を前面に出していたものが、柔らかい表現に変わったり、ストレートな表現もあるけど、面白おかしいところはとことん面白おかしいです(笑)。大人になってきている感じが、ちゃんと表れていると思います」(mura☆jun)。

「意味があるのかないのか、いい意味でこれはどういう意味を持たせているんだろうか、受け取り方次第で、色々捉えられること、yuiちゃんが他人に対して書いたという意味合いもあるかもしれないし、もしかしたらちょっと前の自分に対して向けて書いたのかもしれないし、そういうワードが今回のアルバムには多いと思う」。(mafumafu)。

アルバム制作の終盤、yuiがちゃぶ台をひっくり返して激怒!?

左からsacchan(Dr)、mura☆jun(Key)、yui(Vo/G)、mafumafu(B)
左からsacchan(Dr)、mura☆jun(Key)、yui(Vo/G)、mafumafu(B)

制作にあたって、これまでにはなかった“作業”が制作工程に加わったことで、アルバムがより豊潤なものになった。それはyuiが「あと2週間で全ての作業を終わらさなければいけないという時に、私がちゃぶ台をひっくり返して『こんなの出せない』、『もう解散してもいい!』て言ってしまいました(笑)」という緊急事態が起こったことが原因だった。一体何があったのだろうか。

「最後の作業で、音を足したり引いたりしている時に、yuiがそう言ってきて、みんな震え上がって(笑)。一旦立ち止まって、この音は本当に必要なのかとか、yuiが思い描いている世界観とズレているんじゃないかということになって」(mura☆jun)。

「完全に私の知識不足だったんですけど、みんな優しいので理解してくれて(笑)」(yui)。

「それで、歌詞の根底に流れているもの、イメージしている詳細がyuiから全員にメールがが送られてきて、でもそれを決して押し付けるのではなく、みんなで認識してそこから生まれるイメージを元に、もう一度その曲たちと向き合おうという作業を、ギリギリまでやりました。全員が言葉の意味も一緒に仕上げるというか、同じ方向を向けた感じはします」(mura☆jun)。

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あわや発売延期かという危機の中で、4人は着地点を模索し、最高のアルバムを作り上げた。

「あの音、私を怒らせようと思って入れたでしょって言ったんですよ(笑)。でもmura☆junはmura☆junなりにすごく練って、考えて作ったことで、時代は巡ったりするので昔のものを取り入れたりとか。私は最初はふざけているのかなって思って。でも話し合いができた事によって、逆に尊敬に変わりました」(yui)。

「逆にあのタイミングでよかった。でもみんなが不安を口にするのではなくて、4人で徹底的に話をして、yuiちゃんの中で疑問に感じていることが氷が溶けるようになくなっていって。でもそういう時間って、バンドにとっては次の作品作りの時に反映されると思うので、僕はあってよかった時間だなと思います」(mafumafu)。

「誰かが折れなくては収集がつかない状況だったのかもしれませんが、でも今回は誰も折れてなくて、誰かが責任を負うのではなく4人で背負う感じです。誰一人欠けても成り立たないというか、最後の最後でそういうエッセンスが入ってできた作品です。3枚目は鬼門だってどこかで聞いたことがありますけど、絶好調な3枚目になったと思います」(sacchan)。

初めてゲストボーカル・ミゾベリョウ(odol)を迎えて、ソロ時代も含めて初めてのデュエット。「いつかチェインスモーカーズのフィーチャリングもののような楽曲をやりたかった」(yui)

初めてゲストボーカルを迎えたことも、この作品の大きなトピックスだ。odolのボーカリスト・ミゾベリョウを迎えたコラボ曲が2曲。yuiはソロ時代も含めて初めてのデュエットだ。yuiとミゾベは、昨年11月に公開された相鉄線都心直通記念ムービーで、「ばらの花」(くるり)×「ネイティブダンサー」(サカナクション)を共に歌ったことをきっかけに、今回のコラボは実現した。

「洋楽、特にチェインスモーカ―ズのフィーチャリング曲が好きで、男性と女性の声の相性がすごくよくて、自分もいつかやってみたいと思っていたので、ひとつ夢が叶いました。『ふたりfeat.ミゾベリョウ』は、洋楽っぽいイメージで書いて、二人の声の重なりから生まれるものを意識しましたが、もっとミゾベさんの声を立てたいと思って、もう一曲の『熱いアイツfeat.ミゾベリョウ」を歌っていただきました。ミゾベさんの声は肌触りがすごく滑らかで、プリンだと、固くないとろけるプリンの方のイメージ。初めてボーカルディレクションをやらせていただきましたが、同じ福岡出身で、話しやすかったです(笑)」(yui)。

「一瞬バンドメンバーの誰か歌うという説も流れましたが…僕らは楽器で歌っているので(笑)」(mura☆jun)。

「初めてのゲストボーカルでしたが、ある意味自由なアルバムの象徴という感じだと思います。どんなボーカリストが来ても、楽曲がその人を呼んでいるなら納得がいくというか、全く違和感はなかったです」(mafumafu)。

「『浄化』は3人だけの音にyuiの強烈な歌が乗る、このバンドの真骨頂というべき曲」(mura☆jun)

そんな自由に音楽を楽しみ、また4人のありたっけの熱量を注ぎ込んだアルバム『ターゲット』の中でも、特に印象的な楽曲をそれぞれに挙げてもらった。

「『浄化』は最初はもっとゆったりした曲だったのに、極限までテンポアップして3分ちょっとの曲になって、その分メンバーのプレイヤビリティが炸裂している曲です」(yui)。

「3人だけの音で、それに強烈な歌が乗っているFLOWER FLOWERの真骨頂というべき曲」(mura☆jyun)。

「間奏でベースのソロが入りますが、ポップスではなかなかないと思うので、せっかくなのでやり切りました(笑)」(mafumafu)

「ライヴでいつも演奏する『神様』(2014年)と同じ位置になるような曲が欲しくて、強い言葉を持ってきて。仮タイトルは“ガンダム”で、アニメの戦闘シーンで流れているイメージです」(yui)。

「僕は『Sunday』が印象的で、タイトルと歌詞を読んでいるともっとポップで子供向けの曲かと思いきや、ピアノもわざと外れた音を入れて耳に残るし、歌詞の内容と歌と演奏とがギリギリアウトみたいな(笑)。展開もドラマティックで、怖いもの見たさ的なスリルがこの曲にはあると思う」(mafumafu)。

「実はFLOWER FLOWERとしては初の英語タイトル」(yui)。

「僕は『人魚』です。歌詞になんといえない孤独感を感じて、果てしなく好きです。カラッとした『砂浜』とは真逆のジメっとした感じが好きです。自分の性格でしょうか(笑)」(sacchan)。

「上京した時に、孤独を感じていた時期があって、その時に歩道橋から行き交う車を見るのがすごく好きでした。そういう若者に向けた歌詞というか。孤独を感じていたり、知らない土地にひとりで行くとか、そういう人達のことをイメージしているのかもしれないですね」(yui)。

「『ふたりfeat.ミゾベリョウ』もいいですね。どこかひんやりしているのに歌詞の内容は色っぽくて、そのバランスが好きです」(sacchan)。

「僕は…選べないですね。全体的にいい意味であまり頑張りすぎなかったというか。サウンド的には『ベン』の自由な感じが好きです」(mura☆jun)。

「この曲は仮タイトルがそのまま採用になりました。ベン・フォールズ・ファイヴのベンです。みんなもそうですけど、私も10代、20代の時レッチリとかベン・フォールズ・ファイヴ、WEEZERとかよく聴いていて、そういう青春の音楽っていいなと思って」(yui)。

「『夢』は聴いてくれた人たちがイイ!と選んでくれそうなので、ここでは敢えて挙げません(笑)」(mura☆jun)。

「若い人にも大人にも歌詞が刺さると思います。“ターゲット”が広いというか…」(mafumafu)。

「歌詞を書く時に、サラリーマンの人が実家に帰った時に、押し入れにある、昔お父さんとキャッチボールをした子供用のグローブと、野球帽を見て思いに耽る瞬間と現実の生活をイメージして、曲を書いていきました」(yui)。

「このバンドは“ホーム”。自分の表現をより主張できる場所」(mura☆jun)

「ドラマーとして、アーティストが歌いやすいことを考えて叩くのはもちろんだけど、ここはもう少し牙をむく、色々なことを試させてもらえる場所」(sacchan)

「大人の音楽実験室のような感じ。ひとつの音楽が完成しても“その先”を見たくなる、スリルを味わえる場所」(mafumafu)

誰にもある記憶や思い出と、そして今現在のyuiの生活感、生活のリズムが、メロディや言葉に滲み出ていて、「すごくリンクしている」(mura☆jun)曲達が詰まっている。それを腕利きのバンドメンバーが歌に寄り添いながら、自分達の音をしっかり主張し、それが絶妙なバンドアンサンブルとなっている。収録曲「旅の途中」は、FLOWER FLOWERというバンドのテーマソングとでもいうべき曲だが、yuiは常々「このメンバーを自慢したいからやっているバンド」と口にしているが、メンバーにとって、FLOWER FLOWERとは改めてどんな存在のバンドなのだろうか。

「ホームです。他のアーティストと仕事をする時は、ちょっと出かけてくれるね感はあります(笑)。アーティストと対峙するときは、その人をまず尊重して作品を作っていきますが、FLOWER FLOWERでは、もちろんみんなのことは尊重していますが、自分もこういう表現がしたいということを言える場所ではあります」(mura☆jun)。

「僕も同じで、わがままが言える場所です。ドラムということでいうと、他のアーティストさんだと歌いやすさとかをある程度考えながらやっていて、もちろんここでも考えていますが、それ以上にもう少し牙をむくところでもあります。まさにホームだし、色々なことを試させてもらったり、できる場所です」(sacchan)。

「yuiちゃんに音楽に対するストイックさがあって、僕たちに音のイメージを明確に伝えてくれるので、それによってどんな音楽が生まれるのか、その楽しみがあります。大人の実験室というか、及第点を超えたらそれでオッケーではなく、その先の例えば開けてはいけないパンドラの箱を見たいのかな、という感じです。怖いものみたさというか、崖から身を乗り出して、これ以上いったら落ちる、みたいな(笑)、そういうスリルを味わえる場所です」(mafumafu)。

「朝」に込めた意味、“入れなくちゃいけない”歌詞

シンプルながら、アルバムのラストで圧倒的な存在感を放つバラード「朝」は、yuiの母性が、飾らないストレートな言葉で綴られ、その深い歌が胸に響く。

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「アルバムの一番最後の、柔らかい曲なんですけど、<君が>死ぬなんて 君が死ぬなんて絶対許さないから>という。“入れなくちゃいけない”歌詞があるような気がして。私はいつも音楽に“本物”というか、“本当”を追い続けていていると思っていますが、意外とどこにもいないんですよね、本当のことを教えてくれる人って。本にも書いてないし、人に聞いても教えてくれない、音楽に教えてもらった気がする。だから私は私なりの方法で、これを書かなければいけない気がすると思いました。でも今思うと、昔、人から聞かせてもらったことの中に、本当のことってあったと思うし、見落としていたのだと思います。ただ、私みたいな見落としがちな人もいると思います。そういう人に向けて書いてるのかもしれないですね」(yui)。

「YUI時代だったら、“本当のことなんて誰も教えてくれない”って歌ってそうだよね」(mura☆jun)。

「そうかもね。大人としてのちゃんとした落としどころじゃないですけど、そういう意味ではこの曲が最後に来ることで、アルバム全体がしっくりくる感じがします」(yui)。

この作品の最後の仕上げ、マスタリングを施したのは、名手テッド・ジェンセン。自由かつエネルギッシュに奏でた音像がその輪郭をよりハッキリさせ、耳に“飛び込んで”きて、心を掴まれる。

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