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【気になる新人】WHITE LIE 3人の強者が引き寄せ合い、結成した“超新人”バンドの魅力

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/WHITE LIE

今年9月、“いい匂い”がする音を放つバンドに出会った――WHITE LIE(ホワイト・ライ)。3ピースの“新人”バンドだが、その歌とサウンドを聴いて、これは只者ものではないと感じたのは、9月17日に渋谷eggmanで行われた、クアイフとの2マンライヴだった。その太いリズムと、厚い音、そして圧倒的な強さと、繊細さを持ち合わせている歌に引きつけられた。メンバーは、ソロとして活動していたシンガー・ソングライター戸渡陽太、そして昨年末に解散したAqua TimezのベーシストOKP-STAR、ドラムはTHE YELLOW MONKEYのギタリスト、EMMAこと菊地英昭率いるbrainchild’sや、I love you Orchestra Swing Styleなどで活躍している岩中英明と、腕利きのミュージシャンと天才ボーカリスト/ギタリストが出会い、強力な新人バンドが誕生した。WHITE LIEとは?そしてWHITE LIEが奏でる音楽についてインタビューした。

戸渡は2014年にメジャーデビューし。基本はギター一本と歌だけで、その圧倒的な世界観を作り出す事ができ、聴き手は瞬時に引きつけられる。一体何が彼をバンドへと向かわせたのだろうか。

左から岩中英明(D)、戸渡陽太(Vo/G)、OKP-STAR(B)
左から岩中英明(D)、戸渡陽太(Vo/G)、OKP-STAR(B)

「実はずっとバンドをやりたいと思っていました。ソロでの活動も自分の中でやり切った感があり、そんな時にエイベックスとの契約も終わる事になりましたので、次のステージに行く時が来たのかなと心の何処かで思っていました。そんなタイミングでバンドを組みたいなって思えるメンバーと出会ったという感じです。必然のような偶然の不思議を感じてます。長年ソロで活動してきたので バンドを組んで面白いのが、昔は一人での演奏だったので足し算で音を構築していっていたけど、引き算を考えるようになったり。未完成なモノをメンバーと合わせる事によって自分一人では絶対に作れなかった音楽的化学反応が起こったり。これもバンドをやってる醍醐味だと思っています」(戸渡)。

OKP-STARは2000年に結成したAqua Timezで、2005年にメジャーデビュー。昨年11月18日横浜アリーナでのラストライヴで、その活動に終止符を打った。長い時間をAqua Timezで過ごし、すぐに“次”のバンドへと心が向かったのだろうか。

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「2月頃まではSNSで『俺一人でやっていく』ということを言っていて。バンドも考えましたが、Aqua Timezで20年近くやってきて、そう簡単に新しいバンドを組む事はできないだろうなって漠然と思っていました。そんな出会いがあるのだろうかと。もちろん音楽を辞める気はなかったので、それで一人でやっていくと宣言して、色々な人とセッションする日々を過ごしていた時、ヒデ(岩中)君から連絡をもらって『ある人とバンドをやろうと思っているんだけど、一緒にやりませんか?』と誘ってもらいました。それで陽(戸渡)ちゃんの事を教えてもらって、YouTubeを観たら、もう一発で気に入ってしまって合流しました」(OKP-STAR)

岩中はJake stone garage、BARBARSでの活動を経て、brainchild’sの“第7期”のメンバーとして活躍中で、インストバンド・I love you Orchestra Swing Styleにも参加している。

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「最初はサポートドラマーとして、色々なアーティストのバックでやらせていただいていたのですが、自分はサポートドラマーではなく、“バンドのドラマー”としてやっていきたいんじゃないかと思い始めて。この2人と音を出し始めて感じたのが、10伝えなければいけないことを1でわかってくれて、それを共有できて、もちろん10伝えなければいけない場面もあるんですけど、伝えたら20くらいになって返ってきて、そういうのがバンドってすごく面白いし、強さだなって。自分からは絶対出てこない、そういう音楽的な化学反応をすごく楽しみながらやっています」(岩中)。

20代~40代と、年齢差はあるが、初めて音を出した時から「これだ!」というものを3人が感じたという。

「まずは3人で1回スタジオ入ってみようって言って、陽(戸渡)ちゃんが持ってきたミドルテンポの曲をやってみたんです。その時の『これだ!』というあの感覚は、ちょっと忘れられないですね。いまだにもしかしたらこのバンドでこういうのを狙って作ろうっていうのは、見つけ切れてはいないんですけど、でもあの感覚があるので、なんか“説明できない正解”をやっているという感覚はあります」(OKP-STAR)。

「3人共難しく考えるのは性に合っていないと思います。ただいいと思った曲をやるっていうか。スタジオで音を出した時は俺も衝撃的で、それってたぶんみんな、こんなにいいと思ってなかったからだと思うんですよ。こういう感じになるんだろうなという予想はしていたと思うけど、でもそれを遥かに飛び越えて、K点を軽く超えてきた感じでした。今までそんなこと感じた事がなくて、それでお互いが、このバンドで出す音楽は、想像を超えるものができると感じたのだと思います」(岩中)。

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「もしかしたら今の時代は、流行を考えて、聴いて欲しい層にめがけて作る“狙う曲”というのが主流かもしれません。もちろん僕達もリスナーの事を何も考えていないわけではなくて、でも自分達がいいって思ったものにすごく自信があるというか、それがまとまりがないのかもしれないんですけど、でも今まで3人が培ってきた確かな演奏と、自分の声っていう、絶対にブレないものがあるので、芯は通っていると思う。だから最初はこのバンドの音楽を探していたけど、実はもう見つかっていて。言葉で説明するのが難しくて、こういうジャンルということは言えないけど、でもちゃんとWHITE LIEの音楽はできあがってきていると思います」(戸渡)。

最初にセッションした曲が「交差点」だ。バンドの“今”この瞬間の想いを音に変え、CDにパッケージし『SOUND SKETCH』と名付け、ライヴ会場限定で発売しているが、その「~Vol.1」に収録されているのが「交差点」だ。他には「Amogoi」「ローリング」の3曲が収録されているが、音楽性の幅広さを感じさせてくれる。「時間は常に流れているので、バンドも今日のバンドの感じと、明日のバンドの感じって絶対違うと思うんですよ。“今”しか出せない音、“今”しか作れない曲ってある思うので、それをデッサン、スケッチしておきたかった。だから音楽のバリエーションは幅広くなるのも、必然だと思う」(戸渡)。

「Amogoi」は、戸渡が弾くメロディアスなギターリフが印象的で、OKP-STARと岩中のリズム隊が弾き出すぶ厚い音と絡み、そこに戸渡のハイトーンボーカルが乗ると、強烈なグルーヴが生まれる。「交差点」はミディアムテンポの強いバラード。戸渡の表情豊かな妖艶な声が、切なさと心地よさを感じさせてくれる。「ローリング」は、OKP-STARの重いベースがうねる、キャッチーなメロディが印象的なロックナンバー。戸渡のざらついた声が、メッセージ性のある歌詞により説得力を纏わせる。型に囚われないスタイルの音楽を、3人の“職人”達が自由に楽しみながら奏で、そこから生まれるバンドアンサンブルは極上の気持ちよさだ。

『SOUND SKETCH Vol.2』は12月15日のワンマンライヴの会場(吉祥寺SHUFFLE)で発売される。すでにSNS上でそのトレーラーが公開されているが、「Llado(リャド)」「宇宙のピース」「Chocolate」という、それぞれ全く毛色の違う3曲だが「~Vol.1」と合わせて、このバンドの限りない可能性を感じさせてくれる。

「民族音楽をよく聴く」という共通点が戸渡とOKP-STARにはあり、OKP-STARはさらに「元々メタルが好きですが、Aqua Timezで求められていたことに、メタルは役に立ちませんでした(笑)。でもAquaでは本当に振り幅が広い音楽をやってきたので、鍛えられました。陽ちゃんが作る曲の振り幅も大きくて、色々な発見があり勉強になります」と、圧倒的な経験値に裏打ちされたテクニックと、感性を持っている。そこに様々なアーティストやバンドのサポートを重ね、「幅が広がった」という岩中のドラムが加わり、色彩豊かな音楽が生まれ、戸渡の歌がリスナーの心を打ち抜く。

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キャリアを積み、様々な経験を経て引き寄せ合った三人。「本当にバネはどこにもないような屈強さがあると思うし、すごく跳ねるものを持っているバンドだと思う」と戸渡が言うように、個性がいい意味で豊かで強すぎる三人が弾き出す音楽は、どこまでも自由だが、ひとつになると圧倒的な力になる。12月15日のワンマンライヴはもちろん、来年の動きが非常に楽しみだ。是非ライヴを体感して欲しいバンドだ。

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音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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